ほんの2週間前のことです。ロンドン・コペンハーゲンから帰ってただちに、中学の同期会に参りました。
40歳のときの会は覚えていますが(『朝日新聞』名古屋版にも書かせてもらいました)、そのあとはずっと会ってないのだろうか? 記憶が曖昧になりました。この中学から同じ高校へ50名以上が進学したので、そしてそのまま同じ大学へ20名ほどが進学したので、なんだかいろんなことが重なって記憶が厳密ではないのです(高校の同期会は60歳で参加して、たいへんなインパクトがありました)。
なにより不安だったのは、何人の顔がわかるだろうか、それよりいったいぼくが誰だと認識してもらえるだろうか、ということでした。
同期の一番の有名どころはオペラ歌手、秋葉京子でしょうか。東大理学部をへて広島市長をやった秋葉兄さんの妹さんです。集まったのは同期127名のうち41名で、大学教授も病院長も、昔の色男、今のつるっパゲ、今もきれいな専業主婦もいましたが、誰より15歳年長(すなわち82歳)の斉藤先生がお元気なのには圧倒されました。
案ずるより易く、幹事さんたちのお陰で、きわめてすんなりと受けとめていただき、高石公平には『大学院紀要』の抜刷りを渡しながら、中学1年の冬に英和辞典を見ながら「Pig, hog, swine . . .」と暗唱しながら大笑いしたことを覚えているか尋ねたら、しっかり覚えていた! 1年C組で「近ちゃんはアメリカの50州全部を暗唱したり、円周率を何十桁も覚えたり‥‥」という高石は、鉄棒の大車輪でみんなを感服させる「ケネディー」だったのだ。
たった一つの嫌な記憶は、他にも何人かが共有していたので救われた気持ですが、それ以外は、秋葉さんの先導で歌った校歌、戦後民主教育そのものでした。校長は飯田朝という憲法学者でした。
空には若葉 かがやきて
胸にはもゆる 自由の火
亥鼻台に まなびやの
歴史をほこる わが一中
個性と自重 つねにあれ
真理をもとめ もろともに
不断の努力 たゆみなく
文化の日本 うちたつる
その先がけの わが母校
平和と秩序 つねにあれ
中学生のころは、歴史の教師になるとは夢にも思わなかった。それにしてもわが『10講』を貫く、心柱のようなテーマは「個性と自重」のありかた、「平和と秩序」のありかたの議論だったなぁと、あらためて感じ入ったことでした。