いま22日の閣議決定をへて国会に上程されようとしている「特別措置法改正案」のなかの用語ですが、時短要請について知事が命令したことに違反した場合に「50万円以下の過料」; 「感染症法改正案」の場合は、感染者の入院拒否や病院からの逃亡にたいして「懲役1年以下または100万円以下の罰金」; という規定があります。
現在のあくまで個人主義的な自発性にもとづく自粛、行政側からすれば「協力のお願い」では効果がうすい、というので、現政権はおそるおそる罰則規定を加えるわけです。それにしても「過料」と「罰金」はどうちがうんだ? それに「過料」って「科料」のまちがいでは? というので辞書を引き、ウェブで調べてみました。
「罰金」は刑法に定められているとおり、犯罪の処罰のうち死刑、懲役、禁固などの下位にある制裁の一つ。1万円以上。裁判所の判決できまるわけで、有罪になればもちろん「前科」として記録にのこる。その後の人生で、原則、公務員にはなれない。
「科料」も刑法で定められた刑罰だけれど「軽微な犯罪に科する財産刑」で1万円未満。「とがりょう」とも読むらしい。
「過料」は刑法上の刑罰ではないとのこと。「江戸時代から過失の償いに出させた金銭」に由来するもので、現行法でも軽い禁止に違反した場合にしはらう「秩序罰」、「あやまちりょう」とも読むらしい。
つまり、感染者が病院への入院を拒んだり、勝手に逃亡したりした場合は刑事罰として罰金/懲役を科される。休業や営業短縮などの命令に反した場合は、秩序罰として過料(罰金より軽い、あやまちりょう)にとどめる‥‥という差をつけるのですね。
ところでぼくは今のようなパンデミックの情況下には、強制力をともなう非常措置をとることに反対ではありません。ただし、せいぜい秩序罰だし、期限を明示し、始まりも終了も国会で決める、という条件で。
歴史的にローマの共和政でも、フランス革命の革命政府でも非常事態には dictator(独裁者)の執政が有期で(6ヵ月/1ヵ月)定められました。元老院や国民公会など議会が承認し決定することが条件です。カエサルが元老院で殺されたのは、有期のはずの独裁者なのに、彼の場合は「終身の独裁者」となったからでした。<小池和子『カエサル』(岩波新書、2020)
ロベスピエールたち山岳派の革命独裁(dictature)の場合は個人独裁ではありませんが、やはり(はじめは)期限をいちいち更新していました。なんといっても「徳と恐怖」の革命政府(非憲法体制)ですから、いささか疑問や異論を唱えただけで「反革命」と認定されればギロチン(断頭台)に上るわけです。1794年の3月からは、あのダントンさえ逮捕、処刑され、いつまで続くかわからぬ大恐怖のさなか、疑心暗鬼になった革命家たちが7月にクーデタを企て、ロベスピエールやサンジュストを国民公会で逮捕し革命独裁を終わらせました。
いずれの場合も、元老院や国民公会が舞台になったこと、議会主権が肝要です。
ところで、平和な日本ではギロチンでも暗殺でもなく、せいぜい「100万円以下の罰金」か「過料」でことは済みそうですが、それにしても 「罰金は、罪状や金額に関わらず、原則として現金一括払いで、納付した罰金は確定申告の控除対象とはなりません。」とのことです。 ご注意を! <https://www.keijihiroba.com/punishment/labor-seekers.html