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2021年11月21日日曜日

ジャコバンと共和政(12月11日)

 このかんのパンデミックのもたらした「副反応」、明らかな革新の一つは、Zoom Meeting をはじめとするオンライン会議や授業の普及です。こんなにも便利な会談やセミナーのツールを知ってしまうと、パンデミックが収まった後にもお払い箱どころか、利用する機会は維持されるでしょう。
逆に、この流れに乗りきれなかった方々は、こうした関係性から(意図せずも)排除されてしまうわけで、以前から云々されていた IT divide はますます進行するのでしょうか。
 昨日(土)午後は、12月に予定されている早稲田の WIAS 公開シンポジウム「ジャコバンと共和政」のための準備会があり、十分な緊迫感をともなう研究会となりました。 初めての方とお話する場合も、対面なら1メートル~ときには数メートル以上の距離を保っての会話ですが、ウェブ会議ですと数十センチのところに据えたスクリーンで向かいあうわけで、(自分の)髪やシワなども含めて、クロースアップのTVを見るような感覚です。 自室の文献などをただちに参照できるのも便利。
 ところで、「ジャコバンと共和政」というタイトルのシンポジウムに、よくも大きな顔をして出てこれるな、という声もあるかもしれません。
じつはぼくの指導教官は柴田三千雄さんですから、「ジャコバンとサンキュロット」という問題も「複合革命」という論点もしっかり刻まれています。Richard Cobb を読んでから E・P・トムスンに向かった、というのは日本人では(英米人でも?)珍しい経路でしょう。コッブの人柄については、柴田さんから60年代前半にパリでソブールのもと付き合った逸話など聞いていました。ずっと後年になって、オクスフォードの歴史学部の廊下で歴代教授の肖像として比較的小さなペン画に対面しました。 → その後任がコリン・ルーカスでした。
どこかでも申しましたとおり、1950年代のおわりに、コッブ、トムスン、そしてウェールズの Gwyn Williams の3人はフランス革命期の各地のサンキュロット(patriot radicals)を発掘する研究をそれぞれ出し揃えて比較するのもいいよね、と話合い、その一つの結果が『イングランド労働者階級の形成』という名の radical republican 形成史だったのです。

 もう一つの共和政/respublica 論については、成瀬治さんの国制史(そしてハーバマス!)を経路として、時間的にはやや遅れましたが、ナチュラルにぼくの中に入ってきました。

その12月11日の WIAS催しの案内はこちらです。↓
https://www.waseda.jp/inst/wias/news/2021/10/29/8504/ 
ポスターは https://bit.ly/3bHG3cr 
無料ですが、予約登録が必要です。 ただし、【グローバル・ヒストリー研究の新たな視角】とかいった謳い文句は、ぼくの与り知らぬものです。

2021年11月10日水曜日

海域史・華人史研究からみたFO 17 と『英国史10講』

§ 今日(10日)午後に、Gale(Cengage)の催したウェビナーで、村上衛さんのお話を視聴しました。
 https://www.gale.com/jp/webinar
イギリス外務省文書 FO 17, Foreign Office: General Correspondence から19世紀半ば=とくにアヘン戦争後=の海域史をみると、どんなことが浮き彫りにされるのか、この史料にどういった利点があるのか、たいへん具体的でよくわかるお話でした。
「中国史」の相対化はもちろん、海賊史、海難史、またイギリス帝国史も相対視されて、気持よいくらい。ウェビナーなので、該当する史料の例示もテキパキと行われて、白黒の紙媒体で行われていた20世紀の研究報告から、はるか別の環境へとやって来たのだなぁと感心。
海域における海賊行為とその取り締まりを実質的に(無料で)下請けしていたイギリス海軍のはたらき、その事実を清政府は看過したか黙認したか、といった微妙なことさえ考えさせられました。

§ そこで連想したのが、わが『イギリス史10講』の中国語版です。『英国史10講』というタイトル。今年の7月に、何睦さんの訳で中国工人出版社から出たということです(著者献本がつい先日到来したばかりです)。

残念ながらぼくは現代中国語は読めず、乏しい漢文的知識で辿るしかないのですが、各講の最初の年表も含めて忠実に訳してくださっているようです。巻頭の年表を見ても、
  2017年  脱離欧盟(EU)談判開始
という10刷(2018)の修正加筆が反映されています。 サッチャ、ブレア、チャーチル、ケインズなど固有名詞がどう表記されるのかも新鮮な印象。写真もすべてキャプション付きで掲載されて、全体的に良心的な翻訳かなと思います。

唯一、アヘン戦争に関係して1840年4月8日、議会におけるグラッドストンの反対演説をそのまま引用した箇所:
「たしかに中国人は愚かな大言壮語と高慢の癖があり、しかも、それは度をこしています。しかし、正義は中国人側にあるのです。異教徒で半文明的な野蛮人たる中国人側に正義があり、他方のわが啓蒙され文明的なクリスチャン側は、正義にも信仰にももとる目的を遂行しようとしているのであります。‥‥」【岩波 p.211;工人出版社 p.251】
この引用文はそっくり削除されて、地の文だけで「舶麦頓的 "非正義且不道徳的戦争"」へと叙述が続いています!(このブログでは現代中国の略字体は日本語活字で代用)
ぼくはグラッドストンの論法(上から目線)が独特で重要だと考えたからこそ、これを議会議事録(ハンサード)から引用したのですが、たしかに中国人読者にとっては不愉快な記述ですね。そうした配慮で削除されたのでしょうか?

しかしながら、同じ中国に関する記述でも、20世紀に入って:
「イギリスの中国権益は上海に集積していた。‥‥[このあと中略することなく逐語的に訳したうえ]イギリスは「条約を遵守させることが非常に困難」な中国よりは、日本に宥和政策をとることによって権益を保持しようとした。法の支配、私有財産、自由貿易といった基本について大きく隔たる中国側にイギリスが接近するのは、1931-32年(満州事変、上海事変)以後である。」【岩波 p.266;工人出版社 p.314】
といった中国人の読者にとって愉快ではないだろう段落も、「正如后藤春美所言‥‥」と忠実に訳してくれているようです。ただし最後の満州事変、上海事変は「九一八事変、八一三事変」と表現されていますが、これは中国の読者のためには自然な言い換えでしょう。
というわけで、上のグラッドストン演説の件については不明なところが残りますが、翻訳の話が浮上してから、順調に翻訳出版が実現したことには感謝しています。
これまで『イギリス史10講』をはじめとして、書いたり発言したりするときに近隣諸国にたいして特別の遠慮をすることも、自制することもなかったのですが、このような中国語訳をみて、あらためて自分の文章を客観視できました。Sachlich であることの合理性にも思い至りました。

2021年11月8日月曜日

史学会大会 11月13-14日

 『史学雑誌』9号に挟みこまれた横長の「ご案内」では
東京大学(本郷)‥‥法文2号館一番大教室 にて
公開シンポジウム「世界主義の諸様相 - コスモポリタニズム・アジア主義・国際主義

と予告されていました。13日(土)1時から勝田俊輔さんの司会・趣旨説明につづき、
  川出良枝「普遍君主政の超克-18世紀ヨーロッパ」
  中島岳志「アジア主義‥‥」
  長縄宣博「静かなラディカリズム-20世紀ロシア」
  後藤春美「‥‥国際連盟」
翌14日の部会については法文1号館113教室。 というわけで、久しぶりに本郷へと、期待していました。 ただしちょっとだけ心配で、念のためとウェブぺージを見て、びっくり ↓
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 http://www.shigakukai.or.jp/annual_meeting/schedule/
 開催方法は、ウェブ会議システム(Zoom)によるオンライン参加のみの実施となりました。事前登録が必要となりますので、こちらより参加申し込み・参加費のお支払いをお願いいたします。締め切りは11月4日(木)です。 PEATIXの利用方法はこちらをご参照ください。本システムでのお申し込みができない場合は、shigakukai.taikai■gmail.com(■を@に変えてください)へご連絡ください。
 昨年度は臨時的措置として参加費を無料といたしましたが、本年度は例年通り参加費(2日間共通)をいただきます。一般1,000円、学生500円。会員・非会員の別はございません。
 お申し込み・お支払いいただいた方には、大会前にプログラムを郵送いたします。また報告レジュメ、ZoomのURLは11月11日(木)頃ご連絡いたします。
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 Zoom開催で、しかもすでに締め切りを過ぎている!
だれもが史学会のウェブぺージをいつも見ているわけではないでしょう!
それでも、とにかく13日のシンポジウムだけでも視聴したいので、Peatixなるぺージへ初めて入って手続を進めてみたら、締め切りは超過しているはずなのに、予約完了。その確認メールまで到来しました。

 この事態は放置しておいてはいけないのでは、と考えて、司会・趣旨説明者と史学会事務にメールで連絡してみました。 すみやかに反応があり、
≪‥‥混乱をまねきましたことをお詫び申し上げます。
他に期限後の申し込み希望の方もいらっしゃいましたので、サイトからの申し込みは 11日(木)17時までということを明記いたしました。≫
ということです。[ただし、どこに明記されたのかは不詳。]
→  http://www.shigakukai.or.jp/
ご関心の皆様も、どうぞご覧になってください。