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礫岩国家と普遍君主

              日本西洋史学会大会@京都大学

     2013年5月12日(日)13:30~17:00、京都大学・時計台記念館 2階にて


小シンポジウム3
問題提起 - 礫岩(れきがん)国家と普遍君主            近藤和彦

 近世を近代への前史/移行期としてとらえる進歩史観が批判されて久しい。ヨーロッパの16~18世紀は宗教戦争、王位継承をめぐる係争、同君連合、主権国家、公共善、そして啓蒙の時代であったが、また各地で人文主義の政体・秩序論を継承しながら、それぞれの課題をめぐって議論が展開していた。信仰と世俗、そしてナショナルな要素とコスモポリタンな要素が同時進行していた近世を、どうとらえるか。 注目されるのは「絶対王政の社団的編成」「信教国家」とともに、「複合君主制 composite monarchy」「集塊 agglomeration」「礫岩国家 conglomerate state」、そしてこれらに君臨する「普遍君主 universal monarch」といった概念である。

 本シンポジウムでは、こういった方法概念の研究史的な意義を再確認し、この間の H. ケーニヒスバーガ、J. エリオット、J. ポーコック、J. モリル、二宮宏之などに領導されたヨーロッパ各地域の(またそれを越える)政治社会や思想の研究をふまえて、現時点のパースペクティヴを呈示したい。15世紀のJ. フォーテスキュによる dominium politicum et regale (王と政治社会による統治) という概念も、また「さざれ石のイワオとなりて ‥‥」 といった古歌も、再評価されるだろう。 近世はまたヨーロッパが非ヨーロッパと交渉し、学ぶ時代でもある。広く世界史的な適用の手がかりも得られるだろうか。

 The world is not enough というフェリペ2世(1580年)から 007(1999年)にいたるモットーは、歴史的含蓄に満ちている。古谷代表による科研プロジェクトの成果として、スウェーデン、グレートブリテン、ハプスブルク帝国、スペインからの具体的な分析にもとづく4報告、そして科研グループ外から2つのコメントが続く。

 本シンポジウムにご期待ください。

【個人的な論点として、すでに「礫岩政体と普遍君主:覚書」を『立正史学』113号[2013年5月] pp.25-41 にしたためました。二宮史学の未完の課題をひきつぎ、前へ進もうとするための覚書に過ぎませんが。】

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