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2015年11月24日火曜日
フランス革命とパリの民衆
松浦義弘『フランス革命とパリの民衆:「世論」から「革命政府」を問い直す』 (山川出版社)を落手。
A.ソブールを実証的に批判しようとする立派な分析の書と受けとめました。とはいえ、マイナーながら2つ不満があります。
1) ソブール批判といっても、その実、柴田三千雄、遅塚忠躬の歴史学のもっとも枢要な部分への疑問/批判なのだということを、どこかで、とくに註18の前後にあたる本文(p.11)で明言すべきでした。でないと、日本語で出版することの意味が半減してしまいます。
2) よほどの理由がないかぎり本のタイトルに「 」を用いることにぼくは反対です。タイトルに使う語はほとんどすべてキーワードであり、概念であり、その内実を議論するために本を/論文を公にするのです。そのことを読者に喚起するのに「 」が必要というなら、「フランス革命」も「民衆」もそうでしょう。pp.6-8で「サン=キュロット」と表記されているように。もしや「ソブール」も?
これはナンセンスで、昔の東大本郷のだれかが『週刊新潮』かなにかに影響されて始めた悪弊で、野暮を通りこしています。どうしても必要な『「パンセ」を読む』といった場合以外はカッコなど付けなくても、しっかり論じられるはずです。書物における品格も考えたい。
近藤の名も言及していただきましたが、念のため、ぼくは1976年「民衆運動・生活・意識」から E. P. トムスンのモラル・エコノミー用語には疑問をもっており、その旨『民のモラル』初版【山川版 巻末 p.16】でも指摘しておりました。昨年〈ちくま学芸文庫〉から新版を出せたので、あらためて誤解の余地のないように修文しました【p.342】。柴田三千雄、山根徹也とは違いますので、お検めください。
なおまたこの機会に、フランスとイギリスの関係【両革命の異同 pp.134-5;競争的交流 p.169;2つの近代のわたりあい p.205, etc.;ワイン pp.14, 63, 172, 180, 184, 232 ... 】について『イギリス史10講』でも繰りかえし述べましたので、ご笑覧ください。さいわい増刷が続き、細かいながら改良を重ねています。
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