最近の岩波新書、おもしろい本が続きますが、とくに冴えてるのは
斎藤美奈子『文庫解説ワンダーランド』です。
これは月刊の『図書』に連載中から、楽しみにしていました。他に読む記事がなくても、これだけは間違いなくおもしろかった。川端康成の「処女の主題」なるものをむやみに難解に述べる三島由紀夫への批判・皮肉からはじまって、「エッセイ風味で逃げ切っている」池内紀とか、如才なくかわす村上春樹とか、さらにもっとボケボケで「タルい評論」、「解説者は作品を(真剣に)読んだのか」といった疑問を誘発するような解説文までとりあげ、たたき、痛快。
今回あらためて新書で読みなおして、軽快な口調をつらぬく invention of tradition 的な方法も見えてきます。斎藤さんは、国語的・教訓垂範的な感想文よりも、「社会科系の解説」「地理歴史的背景」を述べて「読み方のヒントを与える」のを優れた解説としています。ちょっと我々に近いのかな?
ダメなのをやっつけるだけでなく、「読者の視野を広げる」すぐれた解説(者)にも言及して、なぜかを考えています。池澤夏樹、島田雅彦、高橋源一郎、原田範行、リービ英雄‥‥。そしてしっかり書誌を追い、テクスト・クリティークをやっている研究者も(今川英子、駒尺喜美、川上春雄)。
「優秀なレファレンスは、独善的な解説をときに凌駕する」(p.163)とまで述べて、まるで 西川正雄 が甦ったかと、思いましたよ。
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