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2018年4月7日土曜日

ルイ14世の死


寒い年度末、暖かく、大谷翔平の活躍であけた新年度。日夜の経過がとても速い!
まだ引っ越しも完了せず、立正大学に段ボール箱が積み残しです。済みません!

そうしたなか、『図説 ルイ14世』(河出書房新社, 2018)の著者・佐々木真さんから映画「ルイ14世の死」の試写会招待をいただき、今日、ようやく日時を合わせることができ、京橋の試写会場に参りました。

アルベルト・セラ監督、ジャン=ピエール・レオ主演、2016年の作品。5月に全国公開とのことです。

1715年夏の終わり、ほんの3週間あまりの病床の「太陽王」を描きます。カメラは(冒頭以外は)寝室から出ることなく、「一般受けはしない」映画かもしれない。
しかし、フランス史ないし近世ヨーロッパに関心のある人、それから近親に長患いの人、老衰した人を抱えている場合、愛する人が日にちをかけて亡くなった場合には、この「陳腐な死」を2時間かけて描く作品は、ジンとくるかと思いました。
ゆったり進行し、マントノン夫人をはじめ、人々は静かに理性的で、謀略らしき臭いもなく、感情的に盛り上がるのは、最後に近く、モーツァルトの「ハ短調ミサ曲」が歌い上げる部分だけ。淡々と、外界の鳥のさえずりが強調された音響世界で、これは、かなり勇気のある作品だと思いました。
(ハリウッド/ボリウッドでは不可能!)

帰宅してあらためて、佐々木さんの『図説 ルイ14世』を見かえしました。
このシリーズ、絵がたっぷりですが、細部にも十分に心遣いした本になっています。
同時に、イギリス史にかかわる部分は、従来の概説・通史がそうだからなのですが、ちょっとだけ問題が残ります。ここでは1点だけ。

p.48 図版キャプションとしてチャールズ2世について
「王政復古後には親カトリック政策を採ったこともあり、ルイ14世とは良好な関係を保った。」
→ これは、むしろ逆です。「親カトリック政策を採った」からではなく、
そもそも「親フランス政策を採った」から親カトリックとなる場合もあったが、本質的にイングランド国教会の立場(via media)です。『イギリス史10講』pp.135-9.
国教会路線のことを親カトリックと攻撃するのは、17世紀ピューリタンから20世紀日本の無教会派プロテスタントまで継承された偏見で、こうした原理主義の史観は、害のみあって益はない。

いずれにしても、「偉大な世紀」の太陽王、「国家とは朕のことなり」のルイ14世はただのフランス王=ナヴァル王だっただけでなく、ヨーロッパ1の君主でした。イギリス王家にとって、(イトコである)彼と同盟していれば安心だが、1688-9年の名誉革命のように彼を敵にまわす選択は、ほとんど生死をわける決断でした。単独ではなく、フランスを追われたユグノー=ディアスポラ、そしてオランダ連邦との同盟関係があったから、(plus 神の加護があったから!)なんとか生き延びた。そして、議会主導の「軍事財政国家」として国債、イングランド銀行、政党政治でもって、延命の「第二次百年戦争」に突入するわけです。

1714-15年のジャコバイト危機について、こうした国際舞台でしっかり論じてみたいですね。ワイン、酒造もこの wine geese の文脈に入ってきます。

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