なんだこの変な本、と思って開いたら、案外でした。編者藤川さんの「あとがき」の大阪弁ムードとは全然ちがって、しっかり真面目に書かれています。しかも、おもしろい!
大学教師風の不満を述べるなら、唯一、たとえば「ド・ラ・ラメー」とか「ウイーダ」とかいっても、(章末註でもいいですが)原綴りを示してほしい。でないと、ODNB も Oxford companion to English literature も引けません!
de la Ramée (1839-1908), ペンネーム Ouida ですね。
彼女のイギリス人旅行者的な眼の軽薄さも、第2章「フランダースの犬」の隠れたテーマなのかな?『フランダースの犬』が1872年刊、翌73年にはヴェルヌの『80日間世界一周』が刊行されることを考えると、やはりこちらはリサーチという点でも、歴史感覚および想像力という点でも劣る。
「ネロはルーベンスになれるか」、そしてベルギーの現代的問題についてもしっかり論及してあり、これは学生の必読文献でしょう。「同僚との会話のネタができる」どころか、もっと知的な本ですよ。
時代を19世紀から20世紀前半に絞ったのは、聡明な編集方針と思われます。
阪大西洋史の実力と、山川出版社のセンスが合わさってこそ、実現した出版。
【山川出版社、2011年9月刊、1500円】
0 件のコメント:
コメントを投稿