7月下旬とはいえ、今の大学では授業や校務が続きます。
そうしたなかに涼風がさわやかに吹きわたるように
古谷大輔・近藤和彦(編)『礫岩のようなヨーロッパ』(山川出版社)が公刊されました。本体価格 3,800円
写真と目次は → こちら
出版社は、刊行前からの評判におどろき、急ぎ増刷りしたとのこと。一般書店配本は週末の模様です。
じつは、残念ながらすでに誤植を発見!
p.129 下から3行目の見出し
礫岩のような近代国家の集塊性(誤) → 礫岩のような近世国家の集塊性(正)
p.131 上から13行目
三者は,信教国家化的な状況‥‥(誤) → 三者は,非信教国家化的な状況‥‥(正)
校正ゲラが行き交うなかで事故が起こってしまったようです。さっそく訂正スリップを挿入して対応します。
このことはさておき、全体はすばらしい出来上がりです!
内容の充実度にくらべて、案外に厚くない。横組でエレガントな仕上がり。
註と索引のポイントが小さいので、v + 223 pp. に内実がコンパクトにぎゅっと収まっている感じ。
あらためて仕上がりを手にして、この本の価値は3つあるなと思います。
第1に、第Ⅰ部として、1章(ケーニヒスバーガ)・2章(エリオット)・3章(グスタフソン)の翻訳章が本体の半分近くを占めて、なにより重要な3論文の良心的な邦訳(訳註もふくむ)を提供することに、この出版の意義があると明示しているかのごとくです。
第2に、第Ⅱ部として5人の日本人の研究論文が呼応するように続き、近世ヨーロッパ史の前線がよく見えます。
第3に、第Ⅰ部と第Ⅱ部をはさむように、序章と索引が、それぞれ本の始まりと終わりから各部分の有機的なつながりと構成を示し、担保しています。
ちなみに索引の最初には、こう記しました(p.210)。
「本書はまえがきにも記されたとおり数年にわたる共同研究の所産であり、表記と用語についても討論と調整を重ねてきたが、礫岩のような政体をあつかう彩りゆたかな議論にたいして形式的な統一を強いて無理が生じるのは避けたい。文脈により「同君連合」や「複合君主政」や「礫岩」が、そして「主権」と「絶対主義」が共存しているのには、それなりの理由がある。
索引は悉皆性よりも有用性を優先して作成した。そのさいの留意点は次のとおりである。[中略]複合君主は煩瑣になりすぎない範囲で明示した。また「王による支配/統治」「議会」「君主」「君主政」「国民国家」「従属的な合同」「神聖ローマ帝国」「政治共同体と王による支配/統治」「政治的」「対等な合同」「帝国」「ハプスブルク(家/朝)」「複合国家」「モナルキア」「礫岩」等々といった重要キーワードについては、その語義や用法を述べたページを斜体(イタリック)で示した。」
各部分のそれぞれの価値は言うまでもなく、それと同時に、論文集としての全体的なまとまりとダイナミクスは、自画自賛ながら、数年間におよぶ古谷科研の全員の協力の賜物であり、研究会などで叱咤激励し協力してくださった関係者の皆さまのおかげです。
なおまた3月に山川出版社を退社なさった山岸美智子さんの全面的な支援(介護?)によって、これだけエレガントな本になったという事実は特記しておきたいことです。
(校務の洪水のあいまに)取り急ぎ、感想を申し述べました。
今日配本の『礫岩のようなヨーロッパ』ですが、数日前には予約可能だったAmazonでは既に在庫上限に達したようで「この本は現在お取り扱いできません」となっています。一部の方から連絡を頂き驚きました。確かにAmazonは便利ですが、出版社からの納品に時間がかかるとも言われています。そうした方には山川出版社へ直接注文するのが確実ですと伝えました。
返信削除近藤です。
返信削除Amazonなど通販業者にも、丸善や紀伊国屋など大規模書店にも割り当て配本数が契約で決まっていて(20部とか50部とか)、注文がそれをオーバーしたら、とたんに残部なし、しかも版元には残部僅少、という事態になるのでしょう。やはり山川出版社に注文するのがよいだろうと思います。