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2016年8月5日金曜日

校正おそるべし

 『礫岩のようなヨーロッパ』(山川出版社)につき、ただちに何人もの方々が感想や印象を書き送ってくださっているところです。有り難うございます。8月17~18日には、ケインブリッジにて、ちょっとしたワークショップを催し、ヨーロッパ・英国側の方々と討論してみます。

 本の仕上がりについて厳しい目を注いでくださる読者には感謝しつつ、「校正おそるべし」との感を深くしています。
同時に、日本エディタースクールの代表、吉田公彦さんのことを想い起こしました。
 1970年代に『社会運動史』という同人誌を編集刊行していましたが、
その4号までの仕上がりをみて(フランス現代史家吉田八重子さんの夫君として)座視していられないという御気持になったのでしょう。
吉田さんは、ぼくと相良匡俊さんを含む数人のシロート院生・助手をある日曜に呼んで、エディタースクール(市ヶ谷のお堀を望む古い建物にありました)の2階の教室で、校正、版面制作について、みっちり教えてくださいました。
要は『校正必携』(日本エディタースクール出版部)の考え方、心構えの基本でした。

・植字工(オペレータ)は著者の秘書ではないのだから、こちらの癖も専門も知らない。だれにも分かる明快な指示をしなくてはいけない。
・たくさん訂正、指示を出してもよい。ただし、訂正や、(打ち消し線、)は正確にドコからドコまでか、( )や ’、’を含むのか含まないのか、欧字の場合はTなのかtなのか、曖昧さを残してはいけない。
・誤解の余地が少しでもあるなら、赤字とは別に、余白に黒鉛筆で(このようにと)しあがり例を記す。横文字・アクサン・ルビの場合は必須。
・校正記号は、『校正必携』の規則に従う。

【・版面の作り方、透明な定規でタテヨコ0.1mmまで計測する、といったことまで教えていただいたので、後々、出版社のプロの方々とは、話が通じやすかった! そのころまともな出版社の編集者は、日本エディタースクールの夜間講座などに通って修了証を取得していました。】

 この半日トレーニング(速習コース)のお陰で、以後ぼくの校正は(3色くらいを使用したうえ)鉛筆の指示も加えて、明快なので、シロート眼には「多様性」「複合性」がめだつかもしれませんが、どの出版社・担当者からも、不評だったことはありません。
 いまやオペレータがコンピュータ制作する時代には、大昔の話かもしれません。

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