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2016年11月10日木曜日
ケンカを知っているトランプ
ふだんの業務に加えて、「新しい入試制度」で大学のプレゼンスをどう高めるかとか、「UKとEU」といった文章、あるいは手を抜けない「推薦書」 etc.で寸秒を争うような毎日なのに、アメリカ大統領選挙は、沈黙を許さぬ結果です。NHK-BSでの藤原帰一先生の表情も硬かったけれど、トランプはハッタリだけだろう、といった甘い態度でいると、たいへんな世の中、万人の万人にたいする戦いの世になるのかもしれませんぞ。
『朝日新聞』が「権力への怒り」といったタイトルで解説しようとしているのは、不用意で誤解をまねく。嫌悪感さえ覚えます。
トランプを駆り立てているのは「権力への渇望」「力への妄信」であって、怒りではない。むしろ人民(とくに poor white)の不定形の不安と不満を「外来のもの」に向けてあおる衆愚政治です。ユダヤ人への差別的な言説、ナチス的な要素に対してきわめて敏感なアメリカのメディアは、イスラムやラテン系に対するヘイトスピーチについては野放図でした。日本車や日米安保への無知な発言を放っておくというのも、3・40年ほど昔の大衆レヴェルです。なにか「問題を分析し理解して取り組む」といった姿勢じたいを軽蔑しているようなところがある。
ケンカの仕方を知っているトランプの最後の切り札(trump)は、州権的な大統領選挙のシステムを熟知したうえで、激戦州、決定的な州 - Florida, Ohio, Pennsylvania - にキャンペーンを傾注して、選挙人団(electoral college: すなわち選挙社団! という近世的編成ですね。)を獲得することでした。これがみごと効を奏したわけで、戦略的な勝利です。いくらマサチューセッツ州やカリフォーニア州でたくさん票を得ても、選挙人の数が定数より割り増しされるわけではないのだから。
トランプはバカではない。計算高く、権力欲は強烈。プーチンでも金正恩でも交渉次第で握手するでしょう。こうしたクレヴァーな「ジャイアン」にたいして、安倍政権は賢明に対処できるでしょうか。たくましく、現代の「万人の万人にたいする戦い」を乗り切る人材と裁量をもっているかな?
近世の states system (諸国家システム)が今日的に再現し、グロティウスの「戦争と平和の法」が書かれる前夜のような弱肉強食の情況です。こういったときに「信仰によってのみ義とされる」とか、悪魔(Antichrist)を呪うとかいう立場に、未来はありません。ひたすら「公共善」をとなえる politique派(アンリ4世!)、あるいは中道(via media)のエリザベス女王を憧憬します!
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