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2018年11月23日金曜日

コングロマリット(国際複合企業)のゆくえ


ゴーン・ショックと言ったらオヤジ・ギャグめいた響きもありますが、なんと NHK World では
Nissan's Ghosn is gone
といった見出しで報じています!
歴史における礫岩のような政体をテーマとしてきたぼくとして、今回の conglomerate「日産・ルノー・三菱自」の事案、そしてこれからの展開には大いに想像力を刺激されます。
オクスフォード大学の博物館に展示されている礫岩の標本を『礫岩のようなヨーロッパ』(山川出版社、2016)のカバー表紙に用いましたが、これはポルトガルで採取された岩の断面でした。それで、「ポルトガルから独立したブラジルに生まれ、レバノンで育ったフランス人、カルロス・ゴーンが社長を務める国際複合企業「ルノー=日産」をみる場合にも、示唆的」なんて文をしたためています(p.16)。当時はまだ三菱自は加わっていませんでした。しかも、彼の学歴をみると、パリで Ecole Polytechnique (1974) についで Ecole des Mines de Paris (1978) を修了しているというのが、なんとも礫岩的でおもしろい。

報じられているところでは、
a.個人的な報酬や利権といった法律的な問題とならんで、b.ルノー・日産・三菱自の間の「アライアンス」(連携・関係)のありかたについて(こちらは法的には問題なし)、ルノーおよびフランス政府から現在よりも一体化した経営への転換が示唆されていたとのこと。概念図は、22日深夜の www.nikkei.com によります。 

だとすると、今回の事案は、
a.ただ経営者(会長)としての私利私欲や背任の問題にとどまらず、むしろ b.現在の同君連合的なコングロマリット(礫岩アライアンス)を、ルノーないしフランス政府主導の中央集権(一君万民の単一国家)へと転変させる動きにたいして、日産側から造反した、ということなのではないでしょうか。
b.のほうが日産にとっては、いったい良い日産車をつくって売る、利益を上げるのはフランス国庫およびフランス国民の為なのか、という気持的に重要な問題なのだが、しかしこの論法はグローバルな取締役会でも日本の司法においても、見解の相違(好き嫌いの問題)として片付けられてしまう。より法律的に責任追及しやすい a.を前面にたてて司法にタレコミ、(ゴーン、ケリ以外の2人のフランス人を含む)取締役会に解任を提議して通した、ということでしょう。

あたかも豊かで勤勉なカタルーニャ人が、なんで高慢ちきで口ばっかりのカスティーリャ人と同じ国で一緒にやってゆかねばならんのだ、と異議を申し立てているのと同じ問題ですね。礫岩のようなアライアンスで微妙なバランスをとってきた礫岩君主ゴーンが monarch (ただひとりの君主)として会長職を務めていること自体は、ことがうまく機能しているかぎりだれも問題にしません。しかし、a.ゴーン会長は、日産という企業が製品や品質管理上の瑕疵でマスコミの矢面に立たされているときに我関せずで家族レジャーにいそしんでいた;さらには b.フランス政府ないしルノー側の意向を体現してアライアンス(連邦主義)ならぬ一体化(中央集権)に向かっているようだとすると、これにはクーデタでも司法取引でも可能な手段で抵抗するしかないのですね。

日産はスペインにおけるカタルーニャ、連合王国におけるスコットランド(をいま少し強くした存在)、
ルノーはカスティーリャ、あるいはイングランドのような存在とたとえれば良いでしょうか(三菱自は北アイルランド?)。今秋から、そのルノーがあたかも imperial な意思(支配欲)を内々に表明した or そうした動きを日産の幹部が感知したことで、一挙に事態が動き出した‥‥。不十分な情報ながら、そう推測しました。

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