2017年2月18日土曜日

大学もチャリティ

 「チャリティとは慈善か」とは、前から言い続けている問題ですが、今回、大学院への推薦状を書いていて、ほら、このとおり、と言いたいくらいの見事な例に出くわしました。
 The University of Edinburgh is a charitable body, registered in Scotland, with registration number SC005336.

 金澤周作さんや伊東剛史さんのお仕事にもよく現れているとおり、海難救援団体も動物園も博物館も子どものためのNPOも、チャリティなのです。慈愛にみちた救貧法人もそうだし、エリートの学校法人も「コミュニティの益となる目的」のために設立・運用されている基金や社団であれば、チャリティです。慈愛にみちているかどうかよりも、信託法のもとにあるファンドにもとづく任意活動であることこそ、要件です。ファンドを賢明に運用して、事業資金を黒字で確保することも、理事会の責務として想定されています。日本でいえば、サントリー文化財団ばかりでなく、日本学術振興会(JSPS)も、国家公務員共済(KKR)も、英米法の範疇ではチャリティと定義されるでしょう。cf.『イギリス史10講』p.220 

 最初に書いたことにもどれば、エディンバラ大学がチャリティ団体だ(日本の「国立大学法人」ですかね?)という点だけでなく、もう1点、イングランドとスコットランドは別の法体系で動いている、という連合王国の事実もここで確認されます。「無君・一法・万民」のフランス共和国とちがって、「一君・二法・三国民」のイギリス連合王国です。
 EU(ヨーロッパ連合)のメンバーであることと、連邦主義とがあいまって、現代のイギリスの経済と大学ビジネスを繁栄させてきたわけですが、さて、EUから抜けてしまうと、どうなるか。

2017年2月13日月曜日

しながわネットTV

品川区公式チャンネル 「しながわネットTV」というサイトに、すでに今月初めから搭載されて、インターネット配信されているとのことです。
こちらからアクセスしてください ↓ ↓
http://www.city.shinagawa.tokyo.jp/hp/menu000030400/hpg000030327.htm
近藤和彦:「インテリ王子ハムレット」と「学者王ジェイムズ」

これと同じコンテンツが youtube でも見られるということです。
前半 → (56分)

後半 → (42分)


なお、近藤の顔と声を見聞きしたくない方には、文章化したテクストだけを読めるようになっています。PDFで前半9ページ、後半7ページ。ダウンロードもできるはずですが、ただし、こちらには写真など図像は載っていません。

前編 pdf
後編 pdf

前から申しておりますとおり、これを学問的に再構成して根拠も明記した論文としては
「『悲劇のような史劇ハムレットを読む」を『文学部論叢』のために書きましたので、こちらをご覧ください(3・4月に公刊)。

2017年2月11日土曜日

『みすず』656号

今晩、寒天に満月が冴え渡っていることにお気づきでしょうか?

どの大学でも一番慌ただしい時候で、空に月のあることさえ忘れるくらいでしょう。ぼくのほうも、暮れから正月にアタフタしながら2つの論文原稿を出し、学年末のあいつぐ校務と学外公務を凌いできました。今日、大学院入試を終えました。
ひとの原稿や書類を読み、コメントしたり、評点を付けたりする仕事については、女学校か短大くらいまでしか想像できない老母には、何度説明しても分かってもらえません。授業や試験が終わったなら、「すこしは暇じゃろう」と、毎年同じように繰りかえす会話ですが、授業や試験が終わってからこそが大事な季節なのですよ!

そうした間隙を縫ってしたため送った短文の一つを、『みすず』656号(1・2月合併号)に載せてもらっています。例の「2016年読書アンケート」です。2016年がシェイクスピア没後400年でもあり、ぼくの場合は、昔とった杵柄で、年の後半にいくつも読みました。今年挙げた本は、以下のとおりです(ここではごく簡略表記します)。

1 高橋康也・河合祥一郎編注『ハムレット』大修館シェイクスピア双書
(関連して、むかしの研究社詳注シェイクスピア双書、そして河合祥一郎訳『ハムレット』にも)
2 W.J.Craig (ed.), The Complete Works of William Shakespeare
3 Thompson & Taylor (eds), Hamlet: The Arden Shakespeare Third Series
4 Taylor, et al. (eds), The New Oxford Shakespeare: The Complete Works - Modern Critical Edition
5 草光俊雄『歴史の工房』

内容は、そちらを見てね。というより、これは拙稿「『悲劇のような史劇ハムレット』を読む」の個人的書誌エピソードのようなものです。拙稿のほうは、インタネットの認証制限サイトもフルに活用させてもらって仕上げました。

「読書アンケート」の寄稿者の大半は60歳以上とみえますが、ほんの少しながら、若い寄稿者も増えているんですね。