2009年6月30日火曜日

News from the RHS Bibliography

NEWS FROM THE Royal Historical Society Bibliography, Irish History Online AND London's Past Online
↑ のような email news が 本日 到来。

RHS の書誌情報は完璧ではないにしても、きわめて便宜なものとして利用していましたが、要するに、来年1月から、有料サーヴィスに転換するということですね。よく読むと、これまで予算を支えていた Leverhulme Trust, Andrew W. Mellon Foundation, United Kingdom Arts and Humanities Research Council が金を出し渋って、受益者負担とせざるを得ない、ということのようです。Fellow でも有料なの? ‥‥
以下、抜粋引用します。

The way in which the RHS Bibliography and London's Past Online are published will change from 1 January 2010. The new service, under a new name - Bibliography of British and Irish History (BBIH) - will be a partnership between the Royal Historical Society, the Institute of Historical Research and Brepols Publishers. The existing editorial team, with its close links to academic historians, will continue to be involved. Our aim is to maintain and to improve upon the standards and facilities of the current Bibliography, and of course to keep the Bibliography up-to-date by adding information about new publications, which currently entails adding well over 10,000 records each year.

As a result of these changes, the service will no longer be available free of charge, but the RHS and the IHR have concluded that this is the only way to secure the updating and improvement of the database in the long term, and thus to ensure the on-going usefulness of the work that has so far been funded by several charities (including the Leverhulme Trust and the Andrew W. Mellon Foundation), and by the United Kingdom Arts and Humanities Research Council. The RHS and IHR will be increasing their financial commitment to the Bibliography in order to keep subscriptions as low as possible.
BBIH will be available by institutional and individual subscriptions, and we hope that our existing users will be able to use it. You can help by telling your library about the changes and encouraging them to subscribe to BBIH.

BBIH will be available for institutional trials from October 2009 and will be launched on 1 January 2010, when the existing Bibliography website will close.
We have prepared answers to some of the questions that we think users are most likely to ask ( http://www.history.ac.uk/partners/rhs-bibliography/faq ).

2009年6月28日日曜日

本郷近影

 赤門の手前に このような建物が出現しました。フランス風というのか、オランダ様式というのか。黒い屋根に赤褐色の壁という構造が 緑に映えて、外観は悪くない。

 学士会分館とは 戦後すぐに、神保町・一橋の学士会館を占領軍(GHQ)が接収したので - 日本が1945年に一敗地にまみれて連合国に占領されたというのは、まさか常識でしょうね、学生諸君 - 、接収されてしまった立派な学士会館の代わりに、本郷の帝大構内に 急造りのモルタル2階建ての分館を建てたのが始まり。ここで学士たちの同窓会や集い、柴田先生の結婚披露宴とか、各種出版の企画会議とかが催され、さらには国大協の事務もおかれていたとは、今では常識ではないかもしれない。

 ぼくが委員だったころの史学会編集委員会は、常にここの2階の小部屋で開きました。 『深層のヨーロッパ』の原稿(皇太子の結婚式と都市暴動)を編集者に手渡したのも、1987年、この分館1階のラウンジでした。1992年の、記憶から「過ぎ去ろうとしない」日本西洋史学会大会の懇親会も、ここでやりました。

 その後、ナタリ・Z・デイヴィスはここを Faculty House と呼び、ゲオルク・イガース先生はここで軽食とともに懇談したけれど、本当は faculty ではなく、graduates の会員施設。だから 英語の本来の意味での club house ですね。 それよりむしろ、この建物の南の芝生で、毎夏 開店するビアホールで 無数の蚊と戦いつつ 安いビールを飲んだことを覚えている人は 少なくないでしょう。

 そのビアホールの芝生が立ち入り禁止になって、考古学的に発掘調査されたかと思うまもなく、写真のような中層のしゃれた建物になりました。まだ外装だけです。後方 【写真 右下】 の白っぽいモルタル造り2階建て分館は、築60年にして、すでに風前の灯火です。戦後アカデミズムの 一つのmemento. 機会があったら、写真でも撮ってやってください。

 それにしても 日本の街並みは電柱と電線に覆われていますね。それが 一歩大学構内に入ると、たいていの大学では電線が目立たない。 ということは、電信柱を地下に埋めるのは、その気になれば 特別に困難なわけではない、ということですね。

2009年6月26日金曜日

さらに新刊2つ














『中世の都市  史料の魅力、日本とヨーロッパ』(東京大学出版会)
 → 〈年報都市史研究〉の若手グループ8名が、史料の形状を見せつつ、日欧の史料論を展開。豊富な写真もふくめて議論は具体的。とても啓発的な出版だと思います。

『国民国家と市民  包摂と排除の諸相』(山川出版社)
 → こちらは東京外国語大学のグループ11名。何年か前には『国民国家と帝国 - ヨーロッパ諸国民の創造』を同じ出版社から出していましたね。

 市民といっても英語のタイトルでは citizenship. なるほど、と思いましたが、しかし副題をみると
 in- and exclusion in a civil society
とあり。この前半は「気どって」いて悪くないが、しかし a civil society というのが問題的。

∵1) a を付けたことによって、この共著がある一つの具体的な市民社会のケーススタディであるかのように示唆してしまう。ところが事実は「それぞれの現場からの諸問題を‥‥大胆に呈示することにした」という 諸 論文集。

2) civil society というからには、「共通理解となる概念規定」ないしそれに向けての明示的な議論はどこかで必要ですね。 あとがきは、その点、たいへん正直です。

2009年6月22日月曜日

新刊書 2つ


 『パリと江戸 - 伝統都市の比較史へ』(山川出版社)

→ この強烈なカバー絵は、それだけでも力強く迫ります。 もちろん 吉田伸之・高澤紀恵グループの論文集。

そして

 『近代イギリスと公共圏』(昭和堂)

→ こちらのカバーデザインは何を暗喩しているのか、よく分からない。p.12 の概念図と符合するのかどうか、しばらく考えこみます。 大野誠 編集の論文集。昭和堂の方針でしょうか、目次に各章の執筆者名が見えないので、じつは使いにくい。

 こちらは鮮烈な議論を呈示しているというより、ハーバマス と経験主義史学の問題の立てかたの違いをおのずから明らかにしています。 たとえば ジョアナ・イニス の「イギリス史研究における公共圏概念の登場」と取り組むことによって、読者はこの発想の違いとその意味を再考せざるを得ないでしょう。

 もしや、これはジョアナの論文の本邦初訳ということになりますか?

2009年6月20日土曜日

The Saatchi Gallery

 http://www.saatchi-gallery.co.uk/

 ↑ この Saatchi Online というのか The world's interactive art gallery というのか、ウェブページの最初に、3分弱にわたり、奇想天外、「美女の顔 尽くし」がつづきます。

 今年開設された The Saatchi Gallery には5月に早速行ってみました。 もと Duke of York's Headquarters と呼ばれたチェルシの軍施設でした。東京・六本木の自衛隊あとが、新国立美術館や政策大学院になってるのと似ている、と言えなくはないけれど、根本的にちがうのは、もとの建物を生かすか殺すか。

 ロンドンでは兵舎(しっかりした建物、高い天井、広い部屋)をそのまま生かし、東京ではすべて壊して新設計、ポストモダンの新建築にしてしまいました。Saatchi は民間で無料、新国立は有料というのも、可笑しな対照ですね。

 Sloane Square 駅から歩いてすぐ。次にロンドンにいらしたときには、皆さまもどうぞ。

2009年6月18日木曜日

Cambridge

 ブログのタイトル写真は、どこの何亭だ? との問い合わせあり。
 残念ながら我が屋敷にあらず、この5月初めに快適に過ごすことのできた
  Master's Lodge, Trinity Hall, Cambridge
を fellow's garden からふりかえって真東にカメラを構えて撮ったものです。

 この学寮長公邸には、1階にディナー室、多くのゲストを迎える応接室(というよりパーティ会場)があり、西の fellow's garden の芝を望むという向きです。2階にはゲストルームが2つ用意されていました。

 というより、ケインブリッジをご存じの皆さまには、カメラを構えた位置でそのまま身体を南西に120度回転すると、上のような馴染みの光景が撮れる、と説明したほうが分かりやすいでしょうか。
市の中心部から University Library に向かうときに Trinity College と Trinity Hall の間で必ず渡る Garret Hostel Bridge (ケインブリッジにしてはモダニズム的なコンクリート橋) がすぐ右=北西にあります。

 それにしても我が「西窓」とは、ちと違う光景なり。

2009年6月17日水曜日

ルーヴル17世紀展

 ルーヴルの17世紀展はもう終わってしまったけれど、たいへん良かった。
 <上の絵は、Claude Lorrain, c.1648>
 
 ぼくは見通しが甘く、最終の金曜(12日)に、会議を終えて 18:40くらいに国立西洋美術館に駆けつけてみたら、「待ち時間80分」との掲示あり、20:00に閉館なのにどうするんだ‥‥。
 でも慌てず騒がず‥‥いつだか東博の北斎展もそうでしたが、結局は、閉館30分前までに行列した人々を入れないわけには行かないのだから‥‥と割り切って、西洋美術館右隣のオープンカフェ的空間で、アイスクリームで血中糖を補いました。 上野公園も、昔よりはすこし、初夏の都市的空気を醸しだすようになってきました。 Stadtluft macht frei.
 19:05に戻ってみましたが、なお行列は短くなるどころか、さらに長くなってる様子。まだ明るいので、だれかの原稿を読みながら、長いとぐろを巻いた行列をとぼとぼ進みました。
 入館は20:05、‥‥最終的に閉館を告げられて売店から出たのは21:05.

 したがってちょうど一時間かけての観覧でした。もうすこしゆっくり見たいとは思ったけれど、展示のコンセプトは明らかで、17世紀オランダ・フランスの古典主義のインパクトが伝わる企画です。ルーヴルやナショナルギャラリに行けば、容易にもっとたくさんの作品に囲まれるけれど、17世紀という時代の精神を一度に味わうには、この程度が適切で必要十分なのかも。
 イタリア・フランス・オランダという国境をこえて西欧全般にひろまった civic humanism の美術的現れとして見ると、クロード・ロランもジョルジュ・ドラトゥールも、すばらしい時代の証人(witness of the age)です。
 そういえば、昔の談話室で、こんなやりとりがありました。
http://www.l.u-tokyo.ac.jp/~kondo/GalleryTalk.html

 (つづく)

西窓亭

 このサイトを〈西窓亭〉と改名しました。

 名の由来については、ずいぶん前にこんなことをしたためたことがあります。
http://www.l.u-tokyo.ac.jp/~kondo/seisomogo#西窓

 ご笑覧ください。

2009年6月14日日曜日

日本西洋史学会大会@専修大学

 主催校の皆さまのおかげで、有意義に過ごしました。
 土曜の城戸さん、油井さん、板垣さんの講演に刺激されて、もろもろのことを感じたり考えたりしました。日曜午後のセッションも共通して、歴史における violence や war をテーマとしていましたが、暴力なのか、強制力なのか、争いなのか。とりわけ集団的な強制力は、戦争や内戦という形ばかりでなく、一揆やリンチという形もとります。それらは例外的な事態というより、
   「争いごとにこそ、ふだんは隠れていた事実が浮上してくる」(スリニヴァス)。
ぼくも 『民のモラル』 の一巻をつかって、時代の文化として規範・価値観の強制と、違犯者への〈制裁の儀礼〉を論じました。民衆史か社会史か、といった次元をこえた歴史学として、今でも有効な観点だと信じます。

 なお、板垣さん、ホロコーストの記憶こそパレスチナの悲劇を隠す装置だとは、よくぞ言ってくれたと思います。歴史的なユダヤ人差別やナチスの暴虐ばかりを説いて、現在のユダヤ人の暴虐に言及しないのは、(一番ひかえめに言っても)アナクロニズムでしょう。ただし、板垣さんの万事イスラーム起源主義≒Eurocentrism批判は、いささか眉唾です。そして挑発主義は、議論の始まりとしてはおもしろいが、それで終わるわけにはゆかない。
 ぼくは油井さんと同じく、多文化主義(異文化との共存)に希望を託します。城戸さんのように「(若いときからずっと)挑発を続ける板垣さんに脱帽する」と言いつつ、ご自分の静かなスタンスを守るのも、大人の態度ですね。

2009年6月13日土曜日

日英歴史家会議(AJC)

 本日の西洋史学会大会(於 専修大学)にて、ある方から、AJCプログラムを見ることができない、まして abstractをや、とご叱責がありました。 どうか下のページからもう一度ためしてください。
http://www.l.u-tokyo.ac.jp/~ajc2009/AJC2009programme.htm
 9月16日~19日については、もろもろの日程が確定しています。

 これに加えて、CISH の公開講演会が9月12日(土)に本郷で、またAJCのマイナーリーグ?(正しくは master class)が13日(日)に予定されています。ふるってご参加ください。
 ほかにも、この好機に、大阪、京都、名古屋, etc. でいろいろな催しが続きます。

 詳細は AJC2009 のページ、お問い合わせは、そこに記されている委員あてにどうぞ。
 

2009年6月10日水曜日

ごあいさつ

 はじめまして。 近藤です。

 従来から
   ウェブサイト http://www.l.u-tokyo.ac.jp/~kondo/
   掲示板  http://kondo.board.coocan.jp/

を運用してきました。

後者については、やや使い勝手がわるく、
新規にこちらで、どんなぐあいか試してみよう、と考えました。
しばらくしたら、方針をはっきりさせます。

 ご助言など、どうかよろしく。