2016年2月14日日曜日

『新しく学ぶ 西洋の歴史』

新しく学ぶ 西洋の歴史 - アジアから考える』(ミネルヴァ書房)が到来。
 執筆者を見て驚きました。計100名を越えています。
「モンゴル時代」より後、日本・アジアから展望した同時代の世界史ということで、村井章介さんも、松井洋子さんも、三谷博さんもいます!
そして皆々さんの執筆分担は各章の「序論」であれ、「総論」であれ、節であれ、ただの2ページ(表裏1枚)。なんだい、と思いながらそれぞれの部分を読んでみると、しかし、各トピックが簡単明瞭に浮き彫りにされて、案外に悪くない。

 問題は、それぞれの部分をどなたが執筆したのか、ただちには分からないことです。執筆分担者を知りたいんなら、巻末の細かい字の執筆者紹介から該当の章節を捜しあてればよい、という方式らしいが、これはいささか難行です。
 むしろ目次や各部分タイトルの下部に執筆者名を挿入するという方式なら、テクニカルに簡単なはずです。しばしば教科書的出版物には章節執筆者名をないがしろにする傾向がありますが、これはそもそも執筆者を軽視しているし、学生にたいする教育上も良くない。
 E・H・カーも『歴史とは何か』で言っているでしょう。「歴史を研究する前に、歴史家を研究すべきなのです。」「事実とは‥‥広大な大洋を泳ぎ回っている魚のようなもので、歴史家がなにを捕らえるかは‥‥海のどの辺で漁をするのか、どんな漁具を使うのか、どんな魚を捕まえようとしているのかによるのです。」(岩波新書 pp.27-29)

 というわけで、「責任編集者」は版元にたいして一踏ん張り、「責任」を果たすべきでしたね。(南塚さん、どうお考えですか?)

2016年2月1日月曜日

『みすず』645号

 「読書アンケート特集」が、到着。
 いまや年中行事です。暮から正月の忙しい折に書くのも大変なのだが、しかし2月に入るとただちに皆さんの文章を読めるのが楽しく、有益。「面白くて、為になる」という昔の講談社みたいな企画です。まだの人は、ぜひ!
 ぼくのがビリに近いところ(pp.96-97)にあるのは、おそらく原稿の到着順、追い込みでページを制作しているからでしょう。そのぼくより後に、阪上孝さん、キャロル・グラックさん、斉藤修さん、野谷文昭さん、沼野充義さん、鎌田慧さん、といった面々が続いているということは、つまりぼくよりさらに遅かったの? 豪傑揃いです。
 いや、とにかく丸山眞男の父、幹治の「人柄」(p.11)とか、「京城学派」(p.13)、「偉大なる韓民族」の「精気」(p.49)とか、初めて知りました。そしてキャロル・グラック(pp.100-102)、いつもながら冴えている!
 今年のぼくは、
 ・パスカル『パンセ』
 ・ヴェーバー『宗教社会学論選』
 ・村上淳一『<法>の歴史』
 ・Kagan & Parker (ed.), Spain, Europe and the Atlantic World; Andrade & Reger (ed.), The Limits of Empire
 ・岡本隆司(編)『宗主権の世界史』
を挙げてコメントしました。
【なお昨年度の拙文は、右上の FEATURES: 『みすず』No.634 にアプロードしました。ご笑覧ください。】
 新刊でなくとも、2015年に読んで感銘を受けた本であれば古典でも、日本語に限定することなく、という編集部の方針が、執筆者には自由をあたえ、読者には多様な本の世界を広げて見せてくれて、うれしい。それから、原稿の到着順だからと想像されますが、最初の30名(?)ほどは、律儀でまた時間に余裕のあるらしい方々が多い。まだまだ元気ですよ、すくなくとも短文を書き、想い出をしたためる力は残っていますよ、という近況報告集のような役割も、この企画は担っているのかな。