<承前> わが序章「主権という概念の歴史性」の書き出しについては、何度も書き改めて(合衆国の大統領選挙が進行中で、カマラ・ハリス優勢かもという報道に甘い期待を抱いたりしていました)、結局、現状分析の項目記事ではないと割り切って、第2段落で、短かくこうしたためて了としました。
「今日、主権は争点としてきわだつ。ロシア連邦(プーチン大統領)、イスラエル国(ネタニヤフ首相)、そして中華人民共和国(習国家主席)のそれぞれ隣接地域にたいする侵攻と住民への暴虐については言葉を失うが、こうした事態を批判すると、当該政権から強い糾弾が返ってくる。その地のいわゆる「犯罪者」「叛乱分子」「テロリスト」を容認すること自体が、国家主権の侵害にあたるという「強者の論理」である。さらに今、トランプ第二期政権は歴史も国際法もなきがごとく、独特の「主権」を主張して世界を驚愕させている。」
2月17日に再校を戻す時点では、時間切れでもあり、おとなしくこれで済ませたのですが、その後の事態は、驚愕どころか、わたしたちの歴史観・世界観・ものの考えかたの根本的な更新を迫っているかもしれない。トランプ政権は経済学も、国際信頼関係もなきがごとく、Make America Great Again のスローガンのみ。MAGA、すなわち短期的(せいぜい4年の)スパンでしかことを考えないマネーゲーム人と有権者大衆との損得勘定の合算で、突っ走っています。
損得勘定といっても、19世紀的(あるいは重商主義的?)な農工業偏重・貿易黒字主義で、自分/わが国さえよければ他はどうにでもなれ!という短慮だけです。たとえ自国のGDP≒国民経済ファースト、と考えたとしても、複合的な産業連関があるので、じつは関税障壁で国境を守れば OK というのはアホの知恵です。21世紀の大統領がそう本気で考えているとしたら、ブレインたちの怠慢でしょう。
これにプラスして、民主党=バイデン政権を責める論法と、薬物規制がうまく行かないのを他国のせいにする議論が加わります。昨日の施政方針演説は、なんだか少年のケンカみたいで - 文字どおりのジャイアン - 、聞いていられない。大統領閣下=最高司令官がこのレベルで「論破」を続けると、全国民的に emotionalな対立があおられ、空気(political climate)が悪くなります。いずれ凶事が誘発されるのではないか、心配です。
リベラル・デモクラシーが機能するには、有権者の大多数が知的で、落ち着いて、判断するということが大前提でした。合衆国でも、兵庫県でも、大前提が違ってきているのではないでしょうか。
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