2016年5月17日火曜日

日産ゴーンと 礫岩のような複合企業

 今朝の『日本経済新聞』電子版によると、
「日産、1000万台クラブへ。仏ルノーやロシアのアフトワズなどとアライアンス(提携)を駆使し、競争力を高めてきたゴーン氏。三菱自動車を事実上、傘下に組み入れ、提携戦略は新たな局面に入る。ゴーン流 連 邦 経 営 に死角はないのか。」
http://mx4.nikkei.com/?4_--_48696_--_962477_--_2
 合同や吸収合併でなく、アライアンスとか連邦経営といった語がふだんから国際企業の経営について使われているのか。知りませんでしたが、しかし、今回の三菱自動車の不正事件から急転直下、ゴーン日産の積極的な出資と提携によって、コングロマリット (conglomerate: 国際複合企業)であることをさらに推進するという戦略は、さらに鮮明になりました。
 6月に刊行される編著『礫岩のようなヨーロッパ』(山川出版社、2016)はあくまでヨーロッパ近世史の共著です。
〈近世ヨーロッパの「国のかたち」が歴史学を動かす〉
というキャッチの論文集で、公共善と秩序を、絶対主義と帝国を問題にしますが、その序章「礫岩のような近世ヨーロッパの秩序問題」p.16では、Oxford University Museum におけるポルトガル出自の礫岩標本 =カラー写真をカバーに用います= を掲げたうえで、こう書きました。
図1の標本は「‥‥1580年前後のイベリア半島の礫岩状態を考える場合にも、あるいはポルトガルから独立したブラジルに生まれ、レバノンで育ったフランス人、カルロス・ゴーンが社長を務める国際複合企業「ルノー=日産」を見る場合にも示唆的」だと。
 J. H. エリオットにならって、ぼくだけでなく本書の共著者はみんな、法的に対等な合同(連邦)と従属的な合同(併合)という2つの型、を区別して討論しています。もし連邦経営という語が、今日の経営学でふつうに用いられる語なのだとしたら、それにも言及すべきだったかな。
 上の引用文を書いた12月には、三菱自動車がこんなことになって、それに乗じて日産がアグレッシヴに Unus non sufficit orbis という世界戦略を鮮明にするとは予想もしていなかったのですが。かくして礫岩、コングロマリット、国際複合企業は現代的なキーワードでもあります。山川出版社さん、初版部数について、定価について、(ゴーンに倣えとまでは申しませんが)いま少し積極的に出ても良いんじゃないでしょうか?

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