2020年4月19日日曜日

対数グラフの不吉な動き


前から言っていますように、大きく動く数値について、少しでも長期の傾向、瞬間的な方向(あたかも放物線に現れるような変化のヴェクトル)を見通しながら比較するには、なんといっても対数グラフです。
日本の新聞でもテレビでもグラフとして示されるのはナイーヴな(小学生向け)グラフで、右端がぐっと急上昇して、「みんなで破局に向かう」みたいな印象主義です。
そうしたなかで『日経』はこれまで米ジョンズホプキンズ大学の成果を紹介するときだけ、対数グラフをそのまま見せていました。そんなに難しいことではなく、高校2年の数学、および遅塚忠躬先生の経済史の授業を受けた人なら馴染みがあるはず。
ほぼ日々更新されていますが、みなさんもどうぞ。
4月18日(日本時間)時点のチャートから一つだけ引用します。感染者数についてはテストの少ない日本の数値は少なめに現れているかもしれませんので、ここでは広汎なテストがあってもなくても fact として現れる感染死者数のグラフを見ます。「累計死者数の増加ペース」という対数グラフで、一般に新聞テレビで見なれたものとちがう印象を与えるのではないでしょうか。
死者数が全国で10名をこえてから何日たつと、どのように増加しているか。示されているのは主要国だけで、右側のめもりが 10, 100, 1000, 10000と上がっているように、各グラフ線の傾き増加のペースが一致します。薄く「2日で倍増」「3日で倍増」「1週間で倍増」と補助線が添えられています。紫のスペインや緑のイタリア、青いアメリカのような死者が万をこえて動くスケールと、下方の死者が何百のレベルで動く日本や韓国のスケールとは絶対数で比べれば、それこそ桁違いです。
でも、対数グラフは桁が違っても増減の動向(倍々ゲームの動き)を比較できるのが利点。スペインやイタリアのように死者が万をこえている国でも、じつは最近その伸びが鈍化していること;中国および韓国は増加ペースが水平に近づいて、それぞれ押さえ込みの効果を上げつつあることがクリアにわかります。
警戒すべきはアメリカ合衆国と日本です。アメリカの青い線は最近「3日で倍増」の補助線から離れて死者増が鈍化しているかもしれないが、しかしスペイン、イタリアとは違って、水平に向かうのではなく、上方へ首をもたげています。つまりトランプ大統領のハッタリとは異なる動きを示しています。
日本のオレンジ線はまだ「1週間で倍増」の補助線より下にあります。でも、空色の韓国とは違って、その線は水平に向かうのではなく上方へ首をもたげ、まもなく韓国の死者数を抜くことはほとんど明らかです。

この対数グラフの出典は → https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-chart-list/ 他にもたくさん図示されています。

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