2020年7月19日日曜日

Go to トラブル


 Travel も trouble も平板にカタカナで表記すると「トラブル」ですね。
 違いは最初の母音が強い[æ]か、日本語のアに近い[ʌ]かということで、あきらかです。Apple や cat の[æ]か、cut や love の[ʌ]か、です。Cat と cut の区別は間違えようもないでしょう。
後半の弱い音節が「ブル」か「ベル」か、とかろうじて区別するというのは、非実践的な(日本の教室でしか通用しない)まやかしです。-vel と綴っても弱母音なので、「ベル」どころか「ブル」とさえ聞こえず、むしろ「ボー」と聞こえるかもしれない。「アンビリーバボー」と同様です。
 英語はとにかく強勢のある音節で識別するので、この場合、最初の音節をきちんと発音しないかぎり、英米人に、というより英語の話者には伝わらないでしょう。
 残念ながら、この基礎力は、中学・高校の英語の先生が英語の分かった人だったか、非力をカタカナ英語でごまかしながら授業してる人だったかによって、(あるいは、ラジオ「百万人の英語」で五十嵐先生の音声学を聴いていたかどうかによって)決まってしまうのかもしれません。

 で、安倍内閣の(だれが言い出したのでしょう)「Go to トラベル」政策ですが、すでにトラブル続きです。
a)そもそも英語として、Go to travel ... という表現は自然でしょうか。むしろ、
Go out for a trip / go to the countryside / visit friends / come to town
といった言い回しのほうが普通でしょう。
b)憶測ですが、どこかの大臣室に出入りする役人か「有識者」で英語的センス無しの人の発案かもしれません。
Go という動詞はそもそもどこでもいいから(ここではないどこかへ)行ってしまう/姿を消すという意味合いで用いられます。
だからこそ、Gone with the wind で「風とともにレットは去ってしまった」わけだし、
ケンカ腰で Go! と言えば「失せろ」という意味、
曖昧な顔をして Where can I go? と聞けば「ハバカリはどちらですか」という意味です。
 「Go to トラブル」内閣のゆくえやいかに? あきらかに some trouble(もしや troubles)へと向かっているのでしょう。

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