2024年1月29日月曜日

イスラエル=パレスティナ問題(2)

(元日、2日と大きな災害、大事件がつづき、圧倒されてしまいました。ガザへの報復(!)行為も凄惨をきわめ、理性的に思考を整えるのがむずかしく、日々がむなしく過ぎました。ただ、このところNHKのクロースアップ現代(桑子キャスター)、NHKスペシャル(鴨志田デスク)と力の入った報道がつづき、The Guardian の記事なども参照しつつ、とりあえず、次のように考えます。)
イスラエル国家の主張、その政治について批判したり疑問をもったりすると、即、反ユダヤ主義(anti-Semitism)であるとする言説、ユダヤ人を殲滅しようとしたナチスのホロコースト(ショア)と同罪であるとして許さない立場が、PC(politically correct)な世界で、ずっと勢いをもっていました。現イスラエル政権、それを中核で支えているユダヤ民族主義、それと伴走するキリスト教原理主義を批判しようとすると、公言をはばかる心理的抑制がはたらくのです。
今夕のNHK「クロースアップ現代」では、このことがイスラエル国民のトラウマ、教育と関連づけて議論されましたが、問題はより根深いと思います。アメリカ人も、日本の教養人も、英仏列強の偽善、イスラエル国家の正当性(正統性?)を前提に議論してきました。
現イスラエル政府を批判したり、さらには民族主義国家イスラエルの正当性に疑問を呈したりしたからといって、けっして反ユダヤ主義でもナチスと同罪なのでもありません。むしろ、リベラルで民主的な立場からの意見/疑念の表明として受けとめてほしいのです。
ほんの一瞬でも、「ナチスは良いこともした」とかいう含みはありません。ナチスは人類にたいする犯罪であり、それ以前からのポグロムも、反文明的なしわざでした。くりかえし糾弾すべきです。
ぼくが知っているユダヤ人のインテリは全員、知的でエネルギッシュで(ときにきわめて情熱的で)、個人として彼らに否定的な感情は抱いていません。しかし、現政府に対してはちがいます。イスラエル国のナタニヤフ首相は政権不安定の極にあったところ、10月7日のハマスの直接行動にしてやられ、にわかに挙国一致の反撃、ハマス根絶やし作戦を打ち出して、政権を維持しています。しかもそれをアメリカ合衆国がただちに支持しました。
ハマスはテロリストなのか? たとえば隣に軍事的に圧倒的な強者がいて「ジャイアン」のように横暴をきわめ、わが政治的存在を認めない場合には、どうしますか。
「弱者の武器」(James Scott のいう 'weapon of the weak')、サボタージュやゲリラ戦によって、その横暴に抗議する、ときに奇襲の反撃をする、といったことは歴史の場面で(常にではないが)ときどき行われてきました。たとえば産業革命中のラッダイト、幕末の攘夷志士、帝政ロシアのテロリスト、インドのガンディ、南アメリカのチェ・ゲバラ、ベトナム戦争における解放戦線、‥‥。
彼らが負けた場合は、歴史の進歩にさからう愚かな抵抗とみなされ、ガンディやベトナムのように勝った場合は、微妙に評価される。今回のハマスの場合も、負ければ、愚かで卑劣な/絶望的な集団とされたままでしょう。
イスラエル占領地へのユダヤ人植民たちが襲撃され人質として拉致された、というのは悲劇です。暴力は否認されねばならない。けれども、イスラエル政府のパレスティナ地区への植民政策/戦略じたいが国際法違反であり、パレスティナ人をガザに幽閉することもまた人道にもとる行為だとすると、- 前提が変わってきて - 安直な判断はできなくなります。
ましてや強者の奢りへの抗議をゲリラ的奇襲で表現したハマスにたいして、奢り/威信を保持するための報復ハマスを根絶するための戦闘に乗り出した現イスラエル政権にたいして、そのまま支持などできるはずもありません。

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