2010年3月28日日曜日

アポロンさんに答えて、知の戦略

 アポロン(太陽神=美青年)さん、日曜のコメントありがとう。
 オンライン学術情報に限られることなく、知の戦略という問題だと考え、独立のスレッドとします。

 取り組み、支援‥‥について、それぞれの場でできることをするしかないと思います。とはいえ、ルートのないまま、個人で財務省や文科省や国家戦略担当相に意見書を送っても、また『朝日新聞』に投書してみても、ほとんど無駄でしょう。【万一にも担当課長や、政権ブレーンに知り合いがいたら、是非とも個人的信頼関係を築いて、実態を訴えてほしいですが。∴科学官さんは、重大なお仕事、頑張ってください!】
 ただちに考えられるのは、
1) その筋、すなわち学士院や学術会議、そして史学会や歴史学研究会などが、熟慮した決議と議論を根気よく提起すること。

2) そして、世論作りではないでしょうか。NIIも、政治家も、世論のバックなしには何もできません。

 1, 2 のうち、とくに 2 については若者・院生にもできることは一杯あると思います。
 1, 2 いずれについても「学問・人文科学・古典教育は、大切だ。尊重されたい‥‥」なんていう星菫派の論理ではなく、もっと今日の(非英語国)ドイツ連邦や大韓民国における具体例を挙げつつ、日本の知の戦略を積極的に議論する必要があるでしょう。だからといって、そのさいにぼくは単純な「グローバル主義」や「ハードアカデミズム」論は採りませんが。【星菫派とは加藤周一さんの語ですが、『文明の表象 英国』も見てください。】

 そう、簡単で効果的な方法が、もう一つありました。
3) 何より「世界一でなくちゃいけないの?」「無駄をなくそう」って議員は落選させることです。ケインズ経済学でも新古典派経済学でも、産業連関を考えない政権が続くなら、国は滅びます。

 じつはぼくの新年度、ケインブリッジでのテーマは、マンドヴィルの「私悪は公益」論の積極的な受けとめ and/or E・P・トムスンのモラル・エコノミ論の再審、おそらくは乗り越えです。18世紀前半のイギリスで、公共性と moral philosophy がめざましく展開したのは、ご存じのとおり。ハーバマスの市民的公共性は、まさしく私人が欲得づくで担ったものですし、ブルーアは『スキャンダルと公共圏』で、問題のありかをカラフルに描きました。

 今の日本国の第1の悲劇は、いかなる経済学的基盤も理解ももたぬ populist, amateur 政権が総選挙の結果として造られてしまったことでしょう。第2の悲劇は、学問の世界の基盤や水準もまた、怪しげになってきていることではないでしょうか。

 近刊の『イギリス史研究入門』も『イギリス史10講』も、広くアピールしたい著作です。

2010年3月26日金曜日

The Making of the Modern World

懸案の電子アーカイヴ
"The Making of the Modern World"
(元来は Goldsmith &Kress Libraries のディジタル版です)
この購入がようやく東大の図書行政商議会でも承認されました。

朗報です。
経理上の問題もクリアできて、良かった良かった。
グーテンベルク(Caxton)以降、1850年以前を研究している方々、みんなへの恩恵。
おおいに活用しましょう。

2010年3月7日日曜日

Carmen Blacker



 横山俊夫さんから伺うまで知りませんでした。昨年夏に亡くなったのですね。

 因縁は、すこし長くなりますが、1980-1年にニュージーランドの Duneden からケインブリッジのエルトン先生(Clare College)の所にサバティカルで来ていた Alistar Fox というトマス=モア学者がいて、7歳のお嬢さんが小学校でぼくの娘と同級という縁で、行き来が始まりました。澤田昭夫先生を当然のようにご存じでした。
 その Alistarに招待されて、Clare Hall のディナーに行き、そこでカルメンのように座の中心にいたのが、美しく赤いドレスを召した Carmen でした。福沢諭吉も、恐山の巫女も、南方熊楠も論じることのできる日本学者。

 それから23年もたって、オクスフォードは Somerville のランチに呼ばれていったとき、Colin Lucas 総長とともに、小柄なお婆ちゃんがいるな、と思ったら、なんとジョアナのお友だちでした、Carmen Blacker!

 この週はオクスフォードに滞在なさっていたのです。名のっていただかなかったら、あのカルメンとは分からなかった! 好々爺という語はあるが、「好々婆」という表現はあるのでしょうか。
 SCR で「あしたはサマヴィルのセミナーで話をする」とおっしゃるので、それではと妻も誘ってサマヴィルに行ったのですが、‥‥転倒して歩けなくなった、とのことでセミナーは cancelled.

 これが最後になりました。ときに想い出して、どうなさっているかと心配していましたが、2009年に亡くなって、秋にお別れの会をしたのでした。
 人生で、ときをへだてて、ただ2日 お話をしただけの方ですが‥‥ご冥福をお祈りします。
写真は(c)南方熊楠顕彰館

2010年3月6日土曜日

高橋 進 さん

 昨日の夕刊を読んでいなかったので(その暇さえなく)、今日になって知りました。亡くなるとは、驚き愕然とします。ぼくの1歳下。去年の 並木さん につづいて‥‥。
 法学部の政治史教授、東大の博物館長、COEリーダーといった重責もありましたが、個人的には1990年代から15年ほど 東京書籍の企画でずっとご一緒しましたので、そちらの場面のことを想い出します。

 近世ヨーロッパの「人口動態イモムシ」あるいは「人口稠密回廊」【『歴史と地理』no.554 (2002)】に関連して、もうずいぶん前ですが、全然別の現代政治学の観点から「マンチェスタ・ライン枢軸」(ライン・マンチェスタ枢軸)というコンセプトで議論なさっているのを知って、おぉ、と思ったものでした。
近世史の人口動態が、はたして20世紀の西欧型社会民主主義の場を説明しうるのかどうか、いまだ確信はありませんが、しかし、もっと調べるべき価値のある宿題をいただいたと考えています。

 2月の下旬、つまり先週でしたが、本郷の銀杏並木でお姿を見かけました。お疲れだな、と思って(こちらも元気がでないし)、声をかけそびれました。
 ‥‥ご冥福をお祈りします。

2010年2月14日日曜日

『イギリス史研究入門』(山川出版社)



 『イギリス史研究入門』の編集作業は、いまタケナワ。山川出版社、2010年5月刊です。外見は、先を越されてしまった『アメリカ史研究入門』に似ていますが。
 内容的には、第I部と第II部にわけて、第I部第1章が総説。以下は時代とテーマによって11の章にわけ、それぞれ専門家が執筆しています。11名の共著です。
 第II部は、文献・リソースを列挙し、参照すべき文献、そして鉱脈を探りあてるための手がかりを示します。
 内容には自信がありますが、技術的にはウェブサイトや digital archives をどう表記するか、など、煩雑でなく簡にして要をえた表現(スマートな本)をもとめて、もう初校というのに、まだ改良のための模索は続きます。
 乞うご期待。
 なお、従来から用いていた掲示板coocan
   → http://kondo.board.coocan.jp/
については、掲示板という性格を生かして『イギリス史研究入門』のための Q&A サイトとして再生利用しようと思います。どうぞ、よろしく!
【2月7日(日)にしたためたブログですが、14日に悪意のコメントがありました。いったん削除し対策をほどこしたうえ、あらためて登載します。】

2010年2月6日土曜日

『みすず』読書アンケート


 『みすず』1・2月合併号(no. 579)到来。待ってました! 恒例の前年の読書アンケート。 去年の2月(http://kondo.board.coocan.jp/)と同じことを書きますが‥‥

 書く側としては、師走の多事多端のときに、それなりに意味のあることを書き記すために、慌ただしいけれど、それなりの勢いのある文となる。
 読む側としては、とくに大学関係者だと2月は最高に忙しいが、しかし旧知あるいは未知の物書きがなにをどう書いてるのか、楽しみではある。一種、寒中見舞いを交わすようなところがあります。【ちょうど西川純子さんから『歴史学の醍醐味』(日本経済評論社)をいただいたので、今日、お礼状にこの『みすず』の記事を添えて送りました。】
 みすず書房に感謝。 各人が1年間に読んだ物についてしたためる(旧刊書もよし)、という編集方針は合理的です。
 夏の『週刊読書人』〈上半期の収穫〉とともに、ぼくの定点観測的な意味をもつ短評として、この年中行事を位置づけています。

 ちなみに、今回ぼくが取りあげたのは、
 1 勝田俊輔『真夜中の立法者 キャプテン・ロック』(山川出版社、2009)
 2 高橋慎一朗・千葉敏之編『中世の都市』(東京大学出版会、2009)
 3 西川正雄編『ドイツ史研究入門』(東京大学出版会、1984)
 4 Craig Horner, ed., The diary of Edmund Harrold, wigmaker of Manchester 1712-15(Ashgate, 2008)
 5 Charles Beddington, Canaletto in England (Yale U. P., 2006)

 『みすず』の今月号は → www.msz.co.jp/book/magazine/

 去年は、
 1. 金澤周作『チャリティとイギリス近代』
 2.『丸山真男書簡集』全5巻
 3. 加藤周一『日本文学史序説』上下
 4. 西川正雄『社会主義インターナショナルの群像 1914-1923』
 5. Douglas Farnie, The English cotton industry and the world market 1815-1896
 でした。

2010年1月15日金曜日

Fingringhoe & Print Museum




 ‥‥っというわけで、James および出席者の皆さんの協力のお陰で、14日、15日の会は、大成功。とても thrilling (すなわち、その瞬間はどうなるかと気が気でなく)、かつ結果的には heartwarming (生きてて良かった!)、という一週間でした。大石さん、吉田さん、樺山さん、ありがとう。
 1981年、すなわち29年前からの old friendship にも客観的な根拠と支援がありました。

 今日、話題の Fingringhoe というジェイムズのカントリハウスのある村が『資本論』に出てくるという話、にわかには信じられないでしょう。でも、今晩お話ししましたとおり、Das Kapital 第一巻の索引から探しあててください。 彼は今や、そこの名望家でもあるわけです。

2010年1月11日月曜日

James Raven 1月14日、15日



ジェイムズ・レイヴンはケインブリッジで同期でした。といっても
Introduction to London-based historical documents
という IHR 主催の4泊5日の集中セミナー(1981年)ではじめて知り合ったのでした。
同じ18世紀でもあり、出版、ビブリオといったことで関心が一致し、以後ながくお付き合い をいただいています。
Constable の田園風景そのままのエセクス州、サフォーク州の境界あたりに生まれ育ち、
今ではカントリ・ハウスをお持ちなだけでなく、
バリスタである奥さんの勤務のためもあってテムズ河岸のドックランドにフラットをお持ちです。
なぜか学生時代から不動産に目を付けるのが速かった!

何度も来日予定がありながら、これまではもろもろの支障があって実現せず、今回ようやくの初来日。

東京では下記のとおりのセミナーを催します。
授業は始まっていますし、15日は遅い時間設定にしてみました。

14日(木)午後3:00~ 東大文学部 317教室
Fleet Street, Dr Johnson and the book trade
  この主催は都市史研究センターです。『江戸とロンドン』の企画のとき以来のもちこしで、
  吉田伸之さん、伊藤毅さん、浅野秀剛さんとの比較論議を期待しています。
   → Cambridge Project for the Book

15日(金)午後5:00~ 東大文学部 315教室
Chance and containment: the popular and the official history of
lotteries
  こちらは昨9月のAJCの後始末!

どちらも画像の多いセミナーとなります。夜は懇親会です。

お誘いあわせて、いらしてください。

2010年1月5日火曜日

トライアル利用

 旧臘31日は、じつは夜まで大学に居て、未練がましくも、試用期間の終わるディジタル・アーカイヴを検索し続けていました。とくに The Making of the Modern World(ゴールドスミス=クレス文庫)および RHS Bibliography です。一つのかなりおもしろい(と信じる)着想=仮説のもとに、18世紀研究、E・P・トムスン批判(と再評価)を兼ねる分析がおこなえそうなのです。

(これは12月7日にも、もっと以前にも、書いた件です。大晦日=千秋楽じゃなく、もっと前にやるべき仕事じゃないか、と言われましょうが、じつは30日は * 先生のお見舞い、29日は『* 研究入門』の表記 & 用字用語の方針決定、28日は学内の校務、27日は親類関係のいろいろと『岩波 * 辞典』の項目問題、26日は『* 研究入門』のための交渉, etc. というわけで、ほとんど無限にさまざまの仕事が輻輳していたのです。正月は、もう3日から!)

 着想・アイデアについて、ここで具体的には言えませんが、それにしても MMW の場合、キーワード検索で、18世紀について英語・フランス語ばかりでなく、ドイツ語・スペイン語の出版がたいへん多くヒットし、これぞ啓蒙のコスモポリタン性の証、といった観があります。
 とにかく泣いても笑っても「紅白」だか「行く年来る年」だかとともに、アクセス権は消えてしまいました。

 さて、東大図書館は、新年に賢明な決定をするでしょうか? MMW は1000万円と1500万円の間。
 予算が限られていればこそ、cost/performance良き、賢明な選択をするべきです。
 刮目して朗報を待っています。

2010年1月2日土曜日

東京スカイツリー



「東京スカイツリー」という名には今でも違和感を覚えます。そもそも、ツリーというカタカナ音の響きがガラパゴス的。原案「大江戸タワー」のほうが、下町にふさわしく、よほど良かった。とはいえ、東武鉄道の線路跡地にちゃくちゃくと建設はつづき、高さはすでに250mを越えています。やがて634mになるそうです。
 もより駅は、東武線「業平橋」、半蔵門線・都営/京成線「押上」(むかしの都電の終着でした)。

 わが集合住宅からは、ほぼ北の方角。何キロも離れていて、近傍の高層ビルにくらべると特別の仰角があるわけではなく、「すごい」といった印象はまだないけれど、遠さを考慮すると、それなりの存在感はあります。デザインも悪くないかもしれない。(わが家から現「東京タワー」は近傍のビル群に邪魔されて見えないので、スカイツリーの成長は楽しみではあります。)

 高層ビル群は錦糸町付近、その右(北北東)、はるかに遠望される山影は、筑波山です。

2010年1月1日金曜日

元日


 新年のご挨拶を申しあげます
 
 関東平野は快晴。気持のいいお正月です。2010年をいかがお迎えでしょうか。

 皆さまに励まされ、家族に支えられ、なんとかやっています。4月から半年間「特別研究期間」をいただき、積年の課題のいくつかにケリをつけたいと目論み中。

 ご健勝にお過ごしください。
 なお写真は、初日の出ならぬ初月の出。スカイツリーなる建造物もどんどん背を伸ばしています。

 2010年正月    近藤 和彦

2009年12月25日金曜日

A merry Christmas!



 このところ毎年末、医学部本館の正面に illumination が演出されて、予期せず出くわした人々を驚かせるのですが、今年は事業仕分けで中止かな、と思っていたら、23日から一挙にこんな夜が出現。
 (じつは終電まぎわには消灯してしまうようで、だからぼく一人が気付かなかっただけのこと?
 昨日・今日と、夜9時・10時には部屋を出て、したがって早めに医学部前を通過しました。)
 とにかく、クリスマス後にもしばらくは楽しめるのではないでしょうか。皆さんも、どうぞ!

2009年12月23日水曜日

こんな本



 東大出版会のつけた副題は〈日本語のアカデミック・ライティング〉。
 『留学生と日本人学生のための レポート・論文表現ハンドブック』という主題では、ちょっと縁がないかな、と思いながら手にしました。まず目に飛びこんでくるのは、あらゆる漢字にふられた総ルビ。キー表現には英語が添えてあって、これと、ちょっと見にはミスマッチではないかと思われた。‥‥
 しかし、この200ページ余のハンドブックの半ばから後半には、驚きとサプライズが埋め込まれていて、ビックリ!(といった tautology はいけません)目が覚めました。

 では、と落ち着いて、留学生ならぬ、日本の高校を出て大学に入学したフツーの学生、そして彼らに毎週接しているフツーの教員たちは、この本をどう利用するだろうか、という観点で見なおしました。
 第Ⅰ部は、大学に入りたての1年生向けレポートの手法案内。
→ 知的な高校2年生の「主題学習」にも応用できるかもしれない。とはいえ、東大の3年生で、ここに記されている基本さえ分かっていない者もいるんです。

 第Ⅱ部は「レポート・論文の表現」というタイトルで、日本語教育の観点から、かなり具体的に示すテクニカルな文体指導。例文もたっぷり。
→ これって、しかし、大学の『紀要』の執筆要項としても有益です。つまり、大学の先生がたの日本語も、じつはこの水準で、問題なのかもしれない。FD のテキストにしては、いかが?

 第Ⅲ部「レポート・論文の接続表現」は、その効果の重要性ゆえに、第Ⅱ部から分離独立したかと思わせる。
 とくに、並列、選択、焦点化、累加、換言、例示、補足、反対陳述、対比、結果提示、帰結、解説、 etc. にわけて「語句や文の論理的な関係を明確に示す」ためのスタイルを、たくさんの実例とともにデモンストレーション。
→ 英語の Connective expressions, if appropriately used, ... という条件句が生きています。
 日本語でできた文章が複雑だったり、dull だったり、混濁しそうな場合は、英語でどう言うか、と再考すると、good idea が浮かぶこともある(ない場合は、‥‥諦めるかな)。
 自分の文体について、常にここまで意識して構築していたわけではないので、反省しきり。

 本体価格2,500円。

 結論。本書のタイトルは「留学生と日本人学生のための」という部分は不要で、単純に『レポート・論文表現ハンドブック』とするか、あるいは、いっそ『日本語アカデミック・ライティング』というのがいいかもしれない。
 学生も、教員も、とくにⅡ部、Ⅲ部を読んで、みずからの文章を自己点検しましょう。

 欧語文献の表示法、註の付けかた、についてもっと詳しければ、文句なしに西洋史の院生にも薦めます。しかし、学問分野によって文献の表示法、註の付けかたはさまざま多様なのだから、「分野の違いに関係なくそれぞれの目的に合わせて利用」することをうたっているこの本では、それは望蜀というものでしょう。
(歴史学でも、古代史と近代史、また英・独・仏・米で違うのはまだしも、Oxford 方式と Cambridge 方式でも異なるんだから、困ってしまう! 今やっている『イギリス史研究入門』でも、じつはこうしたことで難儀しています。)

2009年12月19日土曜日

風邪です

 この1週間ほどのあいだにメールや電話で「ついに新型インフルエンザに罹った」「風邪です」といった来信があって、でもこちらは不思議に「なんでもないなぁ」と思っていたら、ついに直撃されました。光ファイバや電話線でも伝染するんですね!
 熱も症状も非常にひどくはないので、ふつうの cold でしょう。1日だけ休んで、他は出勤して積もりにつもった仕事を片づけよう、という殊勝な心がけですが、あまり効果はないようです。
(あの Max Weber が56歳で亡くなったのは、1920年、いわゆる「スペイン風邪」pandemic の尻がりでした。)
 関係者の皆みな様、すみません!

2009年12月7日月曜日

18世紀データベース、いくつも

 いま、似たようなデータベースがトライアル利用中で、どれがどうだったか、錯乱しそうです。どれもそれぞれ有益。以下に整理してみましょう。

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1. ECCO I & II
 これは、ご存じ ECCO の元来(I)の15万点には落ちていた、遺漏分データ(II)を追補すべき5万点です。
合計してどれほどの包括性があるか、使い込んでみないとまだよく分かりません。全文検索データベース充実の長い道程の途上でしょう。

 Cengage Learning Japan/雄松堂あつかい
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2. The Making of the Modern World
 よく知られている Goldsmiths-Kress Library of Economic Literature 1450-1850
すなわち30年くらい前に(?)マイクロフィルム化されて、経済学部(経済学史)の強い拠点大学の多くにすでに入っている ロンドン大学・ハーヴァド大学(+α)の稀覯本コレクション。
 でも経済学史だけじゃありません。ぼくの 『民のモラル』pp.14-15 で、女房売りの文脈で用いた『女性‥‥にかんする法律書』という1777年刊の大冊子は、東大経済の Goldsmiths マイクロで読みました。法学、社会文化史、ジェンダー史のいずれにとっても、宝庫です。

 ところが、東大の図書商議会は、昨年度、このデータベースについて「マイクロがすでに入っているなら緊急性はないだろう」といった、賢明ならざる決定をしました。‥‥大いに問題あり。
一々の稀覯本を読むというより、なによりデータベースとして分析的に使うと、すごい威力! 使いでがあります。ぜひ院生を含む、学際的な利用者の多さを考慮にいれて、あらためて判断してくださいな。

* 17th and 18th Century Burney Collection Newspapers
* 19th Century British Library Newspapers
* The Making of the Modern World 
トライアルではこれらが一緒に利用できます。

Access URL: http://infotrac.galegroup.com/itweb/ken_demo
Password: 「パスワードは tiger になります。
有効期限は新たに12月31日までに設定させていただきました」とのことです。大いに使って、「すばらしいデータベースだ」という学内世論を高めましょう。

 Cengage Learning Japan/雄松堂あつかい

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3. Eighteenth Century Journals Portal

 こちらは Bodleian (Oxford), University of Texas (Austin), British Library & Cambridge UL が所蔵する18世紀の種々様々の定期刊行物データベースを合体したポータル。
取次店は丸善です。
www.18thcjournals.amdigital.co.uk
期間は1月末まで。
東大図書館のサイトにも公示。
http://www.lib.u-tokyo.ac.jp/

¶ さっそく試用、キーワード検索してみました。
 検索は自由自在だけれど、ダウンロードは許さないように設定されていますね。検索結果をテクストで一定範囲、コピー&ペイストすることは可能です。

2009年11月20日金曜日

RHS Bibliography の改編



今夕、こんなメールが来ました。いよいよ1月には有料化するのですね。
『イギリス史研究入門』のリソース表示も修正しないと‥‥
なお、IHRのイーアン・アーチャさんは、オクスフォードの近世史イーアン・アーチャさんとは別人です。念のため。

NEWS FROM THE Royal Historical Society Bibliography

A message from the Academic Editor about free trails of the new Bibliography of British and Irish History

You will doubtless be aware of the impending withdrawal of the free service provided by the RHS Bibliography of British History, and its rebranding as the Bibliography of British and Irish History (BBIH), the result of a partnership between the Royal Historical Society, the Institute of Historical Research, and Brepols Publishers. The switch over will occur on 1 January 2010.

We are delighted to announce that individual free trials of BBIH are available from now until 31 December. Please go to [a:http://apps.brepolis.net/LTool/Entrance.aspx?w=19&h=pwd] and use the following login and password :

Your login: BBIH06

Your password: BBIH06

Institutional trails by IP address range are also available; please contact [a:mailto:brepolis@brepols.net] for more information.

We entered into the partnership with Brepols, after considerable deliberation, with the aim of securing the long term future of the Bibliography, as well as significantly enhancing the quality of the resource. Brepols was chosen by the RHS and IHR because of its long-standing expertise in producing high-quality databases....
Among the enhancements offered by the new BBIH are significantly faster searching, an auto-complete function, an auto-record count per search field, and extended export possibilities. A detailed brochure describing BBIH can be downloaded [a:http://www.brepols.net/publishers/pdf/Brepolis_BBIH_EN.pdf] here. You can also view the slides from my [a:http://weblearn.ox.ac.uk/site/human/modhist/personnel/785598/research/Presentation%20on%20Bibliography%20of%20British%20and%20Irish%20History%20at%20NACBS,%206%20November%202009.ppt]

You may wish to take up the issue of subscription with your librarians who should contact [a:mailto:brepolis@brepols.net]brepolis@brepols.net for information on pricing (institutional subscriptions in the US are based on the Carnegie classification of institutions, those in the UK on JISC banding. Individual subscriptions are also available.) It's possible that the RHS Bibliography (as a free resource) has not been very visible to librarians, so you may need to engage in some local lobbying!! <以下、中略>

Ian Archer
Academic Editor, BBIH

2009年11月14日土曜日

Eighteenth Century Journals Portal

丸善および図書館からの連絡で
Bodleian, University of Texas (Austin), BL & Cambridge
に所蔵の18世紀定期刊行物データベースについて、トライアル設定をしてくれるとのことです。
まもなく東大図書館のサイトに公示されるでしょう。すこしお待ちください。
http://www.lib.u-tokyo.ac.jp/
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”Eighteenth Century Journals Portal” のトライアル設定が
完了いたしましたのでご報告申し上げます。
www.18thcjournals.amdigital.co.uk
期間は1月末までです。
なお、
図書館に相談のうえ、可能であればIP認証にさせていただければと思っております。
経過につきましては、改めてご報告させていただきます。
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みなさん、10月24日付けの Cengage トライアル ↓ もまだ生きていますので、お忘れなく!
(ただしpwが修正されました。11月28日)

2009年11月1日日曜日

秀丸メール



 ぼくが使っている mailer は「秀丸メール」というシェアウェアです。簡単明瞭、軽快でスパムなどの仕分けもしっかりやってくれて気に入っています。多言語・テキストでメールをやりとりする合理主義者だったら、手放せないでしょう。
 1990年代終わりに東大文学部でデフォルト供給されていたのは AL mail でした。簡単明瞭、軽快ではあったが、
1) 迷惑メールが増えるにつれ、文サーヴァを通りぬけてきちゃった迷惑メールを仕分けできず、かつまた
2) 正常のメールでも相手の設定次第で文字化けするケースも少なくない。
というわけで、PCを変えたのを機会に、模索したあげく、エディタ「秀丸」の仲間である「秀丸メール」にたどりついた、というわけです。
http://hide.maruo.co.jp/software/tk.html

 これにしてから1年あまり、文字化けのケースもほとんどなくなり(相手がハングルや繁字体で書いていても OK )、スパムの仕分けもしっかりやってくれます。

 ただし、注意力散漫のまま「簡単振り分け設定」を設定すると、たいへんなことになる。
たとえば今日のようにブラジル発(.br)か中国発(.cn)かよく分からないメールが
From: Krystina <kondoアットl.u-tokyo.ac.jp>
Subject: Your tutor's information
と粉飾して来信したとすると、 → あまり考えずに、特定の発信者からのメールをはじくために
From: <kondoアットl.u-tokyo.ac.jp>
はすべて「着信を知らせることなく」
+「自動的にゴミ箱へ」
と「簡単設定」してしまうと、大変。自分の発したメールはすべて受け取れないことになってしまう! 

 万が一にも、皆さんのところに
From: Krystina <kondoアットl.u-tokyo.ac.jp>
Subject: Your tutor's information
という粉飾スパムが着信してしまったとしても、「特定発信者」としてはじかないでくださいね!
 ちなみに、このメールの来歴などを調べるために本文中に指示されるウェブサイト(www. *** .cn)を慎重にクリックしてみたら → クスリのサイトに自動転送されました。

2009年10月24日土曜日

科研費の季節に

 <17日の記事には誤解をまねく記述もありましたので、つつしんで訂正いたします。>

 16日(金)には、午後の授業を終えて、東洋文化研究所の黒田先生の組織なさった貨幣史のセミナーに呼ばれて Craig Muldrew (of Queens, Cambridge) の話を聞きに行きました。経済史とは文化史なり。将来を担うべき研究者だが、残念ながら口頭報告は上手じゃないね。その後直ちに出版社へ移動して、むずかしい企画編集案の会議。

 夜は、うまい鰻を食って帰ってみると、研究支援チームより下記のメール到来。

 文科大臣は、あるいは現政権は賢明に政策遂行しているか? 文教予算を渋ることは国家百年の計をあやまつことになります。
 庶民でなく statesman であればこそ、「もったいない」とか「(すぐに)役にたつか」とかで歳出をやたらに削減しないでください。また、公明党や国民新党みたいにほとんど衆愚政治的な「ばらまき」でもなく、しっかりと産業連関、傾斜配分といった、戦後日本の政府がかろうじて保持してきた長期的視点を堅持してくださいね。
 刮目して見守りましょう。
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関係部局科研費担当係 御中

本日、文部科学省及び日本学術振興会より、平成22年度科学研究費補助金の
公募について、平成22年度「概算要求の見直し」に伴い、下記課題の新規募
集課題を停止する旨の通知がありましたのでとり急ぎお知らせします。

【新規募集を停止する種目】
 ・若手研究(S)
 ・新学術領域研究(研究課題提案型)

つきましては、貴部局の研究者に広く周知するとともに、既に上記種目の
研究計画調書を作成中の研究者に、個別にご連絡いただけますようお願い
いたします。

文科省該当ページ
http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/hojyo/1285813.htm

学振該当ページ
http://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/06_jsps_info/g_091016_2/index.html

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Newspapers Collection トライアル



以下のとおり Cengage の厚意で
17世紀、18世紀、19世紀の新聞コレクションにアクセスして利用することができます。
東大に限定されることなく、どこからでも利用できる、はずです。
金曜午後の講義で言及していたオンライン・データベース(商品)の試用期間です。

積極的に活用し、意見や要望がある場合は、フィードバックしましょう。
ご所属大学での正規導入をお考えの場合は、下記の Cengage に交渉してみて下さい。
(近藤のブログで見たと言ってくださって結構です。)

近藤 和彦
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ご要望いただきましたデータベースの設定が完了しました。

設定概要:
*17th and 18th Century Burney Collection Newspapers
*19th Century British Library Newspapers
*Making of Modern World

Access URL: http://infotrac.galegroup.com/itweb/ken_demo
Password: sunshine
→ 修正します。「パスワードは tiger になります。
有効期限は新たに12月31日までに設定させていただきました
。」11月28日修正


Cengage Learning Japan
センゲージラーニング株式会社
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