2019年9月13日金曜日
Brexit 取り扱い注意!
イギリス政府に「黄アオジ作戦」と称する「取り扱い注意」official sensitive の行政内部文書があることは8月に部分的なリークによりわかっていたのですが、きのう議会の議決により公開されました。EUから強行離脱した場合にはどうなるか、8月2日付けで各省庁が想定したことを集計した文書です。Reasonable Worst Case というのですが、「合理的に想定できる最悪のケース」です。Operation Yellowhammer というキーワードで検索すれば、どこからでもダウンロードできます。印刷設定によりますが、A4で5ぺージ。
驚くべき事態が想定されています。
EU 離脱の日に「UKは完全に「第三国」の地位に陥り」、2国間協定は加盟国のいずれとも結ばれていない。いま公衆も企業も、準備は低水準で、大企業は多少の contingency plans を準備してきたが、中小の企業は相対的に不十分。とりわけ離脱が秋冬なので、(従来もあったように)厳冬、洪水、インフルエンザなどがあると、事態はさらに悪化。
あまり報道されてこなかったことだと思われますが、国境を越える(cross-border)金融サーヴィスに支障が出るだけでなく、オンラインの個人データの流れも、治安情報のデータの流れも支障をきたすだろう(may ではなく will という単純未来の助動詞を使っています)。イギリス人が EU市民権を失うことにともない、現在享受している権益について、個別に交渉し保持する必要があるが、事態の認識は遅い。
アイルランドとの間の関税問題は報道されていますが、ジブラルタルについても、近海の漁業権についても問題がある。非合法の(ヤミ)経済の増大、被害をうける人々の「憤りとフラストレーション」が生じるだろう。抗議行動、対抗抗議行動が全国で生じ、かなりの警察力が費やされるかもしれない。秩序の紊乱やコミュニティの緊迫(public disorder and community tensions)もあるかもしれない(こちらの助動詞は may)。
低所得者は、食料と燃料の価格上昇により特段の悪影響を受ける(disproportionately affected)だろう。大人の社会保障については大きな変化はないだろう。大人の社会保障市場はすでに脆弱だから。‥‥
驚くべきは、ジョンスン政権が、こうした行政当局から上がってきた「取り扱い注意 行政文書」を読み理解しておりながら、なんの妙案もないまま、強行突破しようとしていることです。EUから抜ける、ということだけが自己目的で、国民生活も、近隣との良き関係も、歴史と未来への展望も考えていないようです。主権(sovereignty)の亡者? あるいは正気を失っている? ナチスが諸悪の根源をユダヤ人としたのと同じように、ジョンスン政権は諸悪の根源をEUだとして、国民とヨーロッパを奈落に落とし込めようとしている。
【ヒトラー首相が最後に愛人と愛犬とともに自殺したとおり、ジョンスン首相も最後に愛人と愛犬とともに同じ運命をたどるのでしょうか?】
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