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2024年1月31日水曜日

『イギリス史10講』ハングル版

『イギリス史10講』(岩波新書)の初版は2013年12月20日に出ましたので、まる10年を越えたところです。さいわい今も増刷を重ねて、去年春には第16刷が刊行されています。第2刷から以後、ごく微少ながら訂正・改良を重ねてきました。
2021年に中国語版が中国工人出版社から刊行され、そのことについては、こちらにもしたためました。
今年の2月中旬にハングル版が出るとのことで、そのカバーデザインが呈示されています。ご覧のとおり、出版社はAKコミュニケーションズ、書名タイトルは『イギリス史講義』とのことです。
  ブリテン諸島のうち海峡諸島やオークニ、シェトランドは消えて、若きエリザベス2世のイメージの中抜きでユニオンジャックが現れる、というのはいささかproblematicではあります。とはいえ、訳書を出してくださるということ自体に深謝しております。
そもそもは初版、第1講の終わり(p.16)に、
「イギリス史はけっしてブリテン諸島だけで完結することなく、広い世界との関係において展開する。‥‥海の向こうからくる力強く新しい要素と、これを迎える諸島人の抵抗と受容、そして文化変容。これこそ先史時代から現代まで、何度となくくりかえすパターンであった。こうしたことをくりかえすうちに、やがてイギリス人が外の世界へ進出し、他を支配し従属させようとする。その摩擦と収穫をはじめとして、さまざまの経験を重ねつつ、競合し共存し、それぞれに学びあい、新しい秩序が形成される。」
と記しましたとおり、そうしたことを具体的にるる述べた本です。
他に例のみられる、王と妃のゴシップを書き連ねたものとも、議会制民主主義の手本となる「国史」の道筋をかたったものとも違います。とくに「現代史」の知的な群像については、『「歴史とは何か」の人びと』であらためて表現してみようと目論んでいます。

2019年9月17日火曜日

後ろを見つめながら未来へ


暑さをなんとか凌いだところで、ちょっと振り返りますが、

・5月19日(静岡大学)の西洋史学会大会・小シンポジウムは、ぼくにとっては3月18日のブダペシュトのつづきで、フランス革命におけるジャコバン独裁の研究、他国のジャコバン現象の研究、共和政と民主主義の歴史といったことを考えることができて良かったのですが、文章にしないとなかなか定着しませんね。パーマの『民主革命の時代』の学問的な前提にあった両大戦間の corporatist の研究からなにを学ぶかという点で、二宮史学を相対化できたのも、思わぬ成果でした。

・5月26日(立教大学)の歴史学研究会大会・合同部会は、主権国家再考 Par 2 ということで、昨年(Part 1、早稲田大学)のつづきでした。すでに『歴史学研究』976号(2018)に昨年の合同部会における研究発表・コメントと討論要旨が載っていて、「‥‥公共的で批判的な学問/科学の要件」『イギリス史10講』p.165 が満たされています! 今年の大会増刊号のために「主権なる概念の歴史性について」という小文を書いて、すでに初校ゲラも戻しました。秋の終わり頃には公になっているでしょう。それにしてもぼくは、皆川卓氏と岡本隆司氏の引き立て役にすぎません。
この間、合衆国のトランプ、連合王国のジョンスンばかりではない、中華人民共和国の習近平、大韓民国のムンジェイン、日本国の安倍晋三、等々の政治家たちはみな「主権の亡者」のごとく、マスコミもまた国家主権の強迫観念を客観視できないようです。

・今秋の11月9日(東京大学)ですが、史学会大会シンポジウムでは〈天皇像の歴史〉という共通論題で日本史3名の研究報告があり、なぜかコメンテータは近藤です。
すでに準備会などで討論していますが、ぼくとしては第1に、君主の位の正当性根拠(3つの要件)*といったことから、「万世一系」を正当性のなによりの根拠としているらしい日本の天皇という制度の独自性を際立たせたいと思います。第2には、江戸時代から明治時代への転換において、いかにして欧語 emperor の指す権力が征夷大将軍(imperator)から天皇(総帥権をもつ皇帝)へと変わるのか、維新の政治家たちの判断(決断)理由を問います。エンペラーという語がカッコイイというのもあったでしょう。19世紀半ばという時代性を際立たせたいと思います。
なお大日本帝国憲法について、その絶対性ばかり指摘されがちですが、じつはその第4条に「天皇ハ国ノ元首ニシテ統治権ヲ総攬し、此ノ憲法ノ条規ニヨリ之ヲ行フ」とあるように、モンテスキュにならって、君主制は即、法の支配の下にあると明記していました。だから美濃部「天皇機関説」こそ正しい解釈だったのですね。
それをファシストたちが崩していったときから日本帝国は法治国家でなくなり、いわゆる「天皇制絶対主義」という解釈の余地が生じてきます。安丸良夫、丸山眞男の見識を再評価したいと思います。他方で、講座派およびその優等生・大塚久雄は、ここの転換のデリカシーを受け容れない、硬い解釈を採っています。

* 君主位の正当性の3要件とは、『イギリス史10講』を貫く理屈のひとつの柱でした。p.33 から p.274まで。

2013年5月13日月曜日

小シンポジウム3 & 林志弦


¶ 昨12日(日)は五月晴れで、百周年時計台記念館の学会よりは北山・東山へと出かけてしまった方々も少なくなかったのではないでしょうか。

 ぼくはというと、午前中、A3で2枚×200部のレジュメ・複写に手間取りました。街中のコンビニは、コピーを数枚とるには便利至極ですが、うけつけるのは最大限99枚まで。お金も千円札1枚かぎり。したがってちょうど200部+自分用1部をコピーするためには、どんなに工夫しても、3回の設定、それを2度繰りかえす、という羽目に。途中で、トナー交換、用紙の補充。コンビニの不慣れな店員より、ぼくにやらせてくれたら、もっとすみやかにできるのに‥‥と思いながら待ちました。こういうことは大学で済ませなくちゃいけないんだな。

 というわけで、他のメンバーをやきもきさせながらも、昼食をかっ込んで、定刻に開始することはできました。お一人からの深夜のメールを無断部分引用しますと、
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「「礫岩」という共通のテーマが多面的に、かつ凝集力をもって報告され、問題提起も
含めて5本の報告が、惑星系のようにそれぞれ響き合っていましたが、この種のシンポジウムとしては希有なことではないでしょうか。」
「‥‥私が刺激を受けたのは、「礫岩(状態)」が静態的なものではなく、政治的主体間の多様な「交渉の結果として」「可塑的」に成立しながら、一つの秩序をなしている、という論点でした。それぞれの事例研究は、その様態を非常に説得的に提示していたと思います。」
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 ありがとうございます。当然ながら、登壇した者だけでなく、科研メンバー全員、そして他の研究会と合同でやりとりを繰りかえした成果であり、皆さんとの共鳴関係のお陰だと思います。

 フランス史、ドイツ史の方々との討論も、これからの課題となるでしょう。それより前に、東欧も北欧もイベリア半島もブリテン諸島も、「ヨーロッパ周縁世界」として位置づけられ、かつそこに注目することがヨーロッパ(近世)の本質を見やすくする、ということが本科研グループの呈示する vantage point として、会衆のみなさんにアピールできたかと思います。

 ひとまず3年間の共同研究としては成功したと見てよいのではないでしょうか。ここまでの中間報告として共著の公刊、さらなる新研究への発展、‥‥と楽しいアイディアが次々に湧いてきます。

¶ それから、11日の林志弦(Lim JieHyun)の講演は盛り沢山でおもしろかった。彼の有能さと自負も感得されました。

 なお、ぼくが『現代の世界史』および『世界の歴史』(世界史A)の共編著者だとは、ご認識がなかったようで、山川出版社の担当編集者とともに挨拶しておきました。

2010年11月20日土曜日

KJC@熊本


 隔年の会合ですでに3度ご一緒し、もはや haiku を交わす旧友という関係になりました。
【一斉写真を撮れなかったので、2次会の -見通しの悪い- スナップですが】
 Thomas Spence の土地構想を論じた『史学雑誌』研究ノート(松塚俊三)を発見して勇気が出たという趙先生の学生時代。青山・越智(編)『イギリス史研究入門』を持って勉強していた1980年前後の韓国の院生たちは、いま初老の大学教授。わたしたちは日本語で仕事していても、ガラパゴスではなかった‥‥!
 いま新しい『イギリス史研究入門』を手にする日韓の院生たちは30年後にどうしているでしょう? 後景に見える方々にも注目。
 Robert Bartlett って熊本で初めて意識しましたが、良い先生ですね。ずっと前にロンドンの AJC(2000年)でコメンテータをつとめられた Clanchy 先生も、2003年にいらした Harry Dickinson 先生もそうですが、理想的な「先生」。こういった師に学べるひとは幸せです。

2010年7月2日金曜日

韓日英国史学会(KJC)


 組織委員会(高田さん、鶴島さん、秋田さん‥‥)の奮闘によって、11月12日~14日、熊本における KJC の具体相が明らかになりつつあります。ありがとうございます。

 趙承来(Cho Seung-Rae)さん、李永石(Lee Young-Suk)さん、金仲洛(Kim Joong-Lak)さんのような常連に加えて、さらに Miles Taylor も来るんですか。前回(2008年)の写真から、想い出すよすがに2枚ほどクロースアップで。


 そのときは、こんな記事も書きました。