2013年5月30日木曜日

わからないことはドンドン聞く ?

 公私ともに多事多端のさなかに、帰宅したらこんなメールが来ていました。

 ≪私は私立**高等学校に通う三年生の**と申す者です。今私は学習課題で自分の興味のある人物や事件についての論文を書いております。私はエリザベス一世を題材として選びました。今までエリザベス一世についての洋書、和書、参考資料をいくつか読んできましたが、まだ理解出来てない部分がいくつかあります。
 今回メールさせて頂いたのは、西洋史を専門とする先生の培われた知識を教えて頂きたく送らせて頂いた次第に御座います。御多忙の身だとは十分承知しておりますが、以下の質問に出来るだけ返答して頂けたら幸いです。

 こういう文章は先生が雛形をつくって、生徒が言葉を填めこんで制作しているのだろうか?高校生らしくない文体(「送らせて頂いた次第に御座います」)‥‥もうこれだけで不愉快になる。もっと清楚な日本語を使ってね。

 それはさておき、知的な質問のしかたのマナーを、この生徒も先生も知らないようだ。

「洋書、和書、参考資料をいくつか読んできましたが、まだ理解出来てない部分がいくつかあります」というからには、どんな文献を読んだのか、固有名詞を示してほしい。洋書とはいかなるもの? 高校3年なら、著者・研究者名を意識して質問してほしいな。百科事典もおおいに結構です。項目執筆者を意識してね。

 1990年代のはじめに東大西洋史で3年生が、「本で読んだんですけど‥‥」と質問してきたので、著者名を尋ねたら答えられなかったので、こっちが驚いたことがある。いまの高校では、著者も書名もなく、「わからないことはドンドン人に聞く」という教育をしているのか。一見積極的に見えても、自分で調べる、読んで考えるということをしないかぎり、結局は伸びませんよ。

 以下5か条にわたる質問事項は、「洋書、和書、参考資料をいくつか読んできました」という人の質問としては、お粗末。言ってしまえば高校世界史定番の質問で、ちょっとした書物を読めばすぐわかるはず。あなたは、現役の研究者の知的関心をそそらないことばかり、質問しています。「御多忙の身だとは十分承知しております」というからには、こちらが乗り気になるような good question を書いてきてね。

 というわけで、あなたの質問にはお答えできません。
 かわりに、近藤(編)『イギリス史研究入門』(山川出版社)という良書があります。近世については小泉徹さんという方が担当しています。同じ小泉さんは『世界歴史大系 イギリス史』第2巻(山川出版社)でも該当部分を担当されています。あなたの学校の図書館には入っていますか? 信頼に足る答えは、この2冊で十分でしょう。万一図書館にない場合は、希望して入れてもらってくださいね。

 【じつは、もう一つぼくを慎重にさせた事情もあります。メール発信人名と質問者名が異なるのです。苗字も違うし、受信メール一覧にみえる From: の氏名がやや色っぽい‥‥。考えすぎだとしたら、ご免なさい。】

2013年5月13日月曜日

小シンポジウム3 & 林志弦


¶ 昨12日(日)は五月晴れで、百周年時計台記念館の学会よりは北山・東山へと出かけてしまった方々も少なくなかったのではないでしょうか。

 ぼくはというと、午前中、A3で2枚×200部のレジュメ・複写に手間取りました。街中のコンビニは、コピーを数枚とるには便利至極ですが、うけつけるのは最大限99枚まで。お金も千円札1枚かぎり。したがってちょうど200部+自分用1部をコピーするためには、どんなに工夫しても、3回の設定、それを2度繰りかえす、という羽目に。途中で、トナー交換、用紙の補充。コンビニの不慣れな店員より、ぼくにやらせてくれたら、もっとすみやかにできるのに‥‥と思いながら待ちました。こういうことは大学で済ませなくちゃいけないんだな。

 というわけで、他のメンバーをやきもきさせながらも、昼食をかっ込んで、定刻に開始することはできました。お一人からの深夜のメールを無断部分引用しますと、
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「「礫岩」という共通のテーマが多面的に、かつ凝集力をもって報告され、問題提起も
含めて5本の報告が、惑星系のようにそれぞれ響き合っていましたが、この種のシンポジウムとしては希有なことではないでしょうか。」
「‥‥私が刺激を受けたのは、「礫岩(状態)」が静態的なものではなく、政治的主体間の多様な「交渉の結果として」「可塑的」に成立しながら、一つの秩序をなしている、という論点でした。それぞれの事例研究は、その様態を非常に説得的に提示していたと思います。」
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 ありがとうございます。当然ながら、登壇した者だけでなく、科研メンバー全員、そして他の研究会と合同でやりとりを繰りかえした成果であり、皆さんとの共鳴関係のお陰だと思います。

 フランス史、ドイツ史の方々との討論も、これからの課題となるでしょう。それより前に、東欧も北欧もイベリア半島もブリテン諸島も、「ヨーロッパ周縁世界」として位置づけられ、かつそこに注目することがヨーロッパ(近世)の本質を見やすくする、ということが本科研グループの呈示する vantage point として、会衆のみなさんにアピールできたかと思います。

 ひとまず3年間の共同研究としては成功したと見てよいのではないでしょうか。ここまでの中間報告として共著の公刊、さらなる新研究への発展、‥‥と楽しいアイディアが次々に湧いてきます。

¶ それから、11日の林志弦(Lim JieHyun)の講演は盛り沢山でおもしろかった。彼の有能さと自負も感得されました。

 なお、ぼくが『現代の世界史』および『世界の歴史』(世界史A)の共編著者だとは、ご認識がなかったようで、山川出版社の担当編集者とともに挨拶しておきました。

2013年5月7日火曜日

富士山の県の知事



 今夜、久しぶりにお話をしました。富士山をかたどった襟の記章、空色に富士山とお茶のネクタイ。いつもながら明るく周囲を盛りたてる方です。

 なんと一期目のおわりが迫り、6月16日の投票日は間近なのに東京で学問的な会合と二次会に出席。選挙運動はしない、勝手連が運動するのは拒まない、という方針。現職の彼は一期目は民主党推薦でした。今回は無所属。売られたケンカは買わない。しかし自然エネルギー、健康日本一の県をほこり、大地震・大津波への対策は怠らず、製薬でも打って出る、新幹線の駅の数が一番多い県。

 実績からいえば安泰か、とよそ者は考えるけれど、しかし対抗馬は自民党で県人。安部政権は必死で戦うでしょう。彼はといえば、京都生まれ、早稲田大学卒、オクスフォード大学博士。(ぼくと彼との共通点といえば、マンチェスタでファーニ先生のお世話になったことくらい‥‥)

 今夜、彼を囲んだ5・6名のうち、有権者は一人もいないが、勝手連を‥‥という声は高まりました。

 *県立大学の先生、いかがお考えですか? こんなときに共産党推薦候補に投票するなんて、ナイーヴ+阿呆ですよ。

2013年5月6日月曜日

西洋史学会大会@京都大学


 まだまだ先と思っていたら、すでに次の日曜(12日)午後です!

 古谷代表による科研組織の研究プロジェクトにもとづく小シンポジウムですが、ぼくもその一端をになって「問題提起 - 礫岩国家と普遍君主」をやります。右肩の FEATURES をクリックしてください。その趣旨というか、前口上というか、こんなことです、とあらかじめお知らせします。礫岩(れきがん)=conglomerate とは、こんなにカラフルな堆積岩(さざれ石のイワオとなりて‥‥)です。
OUM

 ヨーロッパ近世史からの発言ですが、すこし広い意味合いもねらっています。

 この小シンポジウム全体は、いうまでもなく京都大学の準備委員会と古谷科研のおかげで実現するものですが、この feature ページの文責は近藤にあります。