(元日、2日と大きな災害、大事件がつづき、圧倒されてしまいました。ガザへの報復(!)行為も凄惨をきわめ、理性的に思考を整えるのがむずかしく、日々がむなしく過ぎました。ただ、このところNHKのクロースアップ現代(桑子キャスター)、NHKスペシャル(鴨志田デスク)と力の入った報道がつづき、The Guardian の記事なども参照しつつ、とりあえず、次のように考えます。)
イスラエル国家の主張、その政治について批判したり疑問をもったりすると、即、反ユダヤ主義(anti-Semitism)であるとする言説、ユダヤ人を殲滅しようとしたナチスのホロコースト(ショア)と同罪であるとして許さない立場が、PC(politically correct)な世界で、ずっと勢いをもっていました。現イスラエル政権、それを中核で支えているユダヤ民族主義、それと伴走するキリスト教原理主義を批判しようとすると、公言をはばかる心理的抑制がはたらくのです。
今夕のNHK「クロースアップ現代」では、このことがイスラエル国民のトラウマ、教育と関連づけて議論されましたが、問題はより根深いと思います。アメリカ人も、日本の教養人も、英仏列強の偽善、イスラエル国家の正当性(正統性?)を前提に議論してきました。
現イスラエル政府を批判したり、さらには民族主義国家イスラエルの正当性に疑問を呈したりしたからといって、けっして反ユダヤ主義でもナチスと同罪なのでもありません。むしろ、リベラルで民主的な立場からの意見/疑念の表明として受けとめてほしいのです。
ほんの一瞬でも、「ナチスは良いこともした」とかいう含みはありません。ナチスは人類にたいする犯罪であり、それ以前からのポグロムも、反文明的なしわざでした。くりかえし糾弾すべきです。
ぼくが知っているユダヤ人のインテリは全員、知的でエネルギッシュで(ときにきわめて情熱的で)、個人として彼らに否定的な感情は抱いていません。しかし、現政府に対してはちがいます。イスラエル国のナタニヤフ首相は政権不安定の極にあったところ、10月7日のハマスの直接行動にしてやられ、にわかに挙国一致の反撃、ハマス根絶やし作戦を打ち出して、政権を維持しています。しかもそれをアメリカ合衆国がただちに支持しました。
ハマスはテロリストなのか? たとえば隣に軍事的に圧倒的な強者がいて「ジャイアン」のように横暴をきわめ、わが政治的存在を認めない場合には、どうしますか。
「弱者の武器」(James Scott のいう 'weapon of the weak')、サボタージュやゲリラ戦によって、その横暴に抗議する、ときに奇襲の反撃をする、といったことは歴史の場面で(常にではないが)ときどき行われてきました。たとえば産業革命中のラッダイト、幕末の攘夷志士、帝政ロシアのテロリスト、インドのガンディ、南アメリカのチェ・ゲバラ、ベトナム戦争における解放戦線、‥‥。
彼らが負けた場合は、歴史の進歩にさからう愚かな抵抗とみなされ、ガンディやベトナムのように勝った場合は、微妙に評価される。今回のハマスの場合も、負ければ、愚かで卑劣な/絶望的な集団とされたままでしょう。
イスラエル占領地へのユダヤ人植民たちが襲撃され人質として拉致された、というのは悲劇です。暴力は否認されねばならない。けれども、イスラエル政府のパレスティナ地区への植民政策/戦略じたいが国際法違反であり、パレスティナ人をガザに幽閉することもまた人道にもとる行為だとすると、- 前提が変わってきて - 安直な判断はできなくなります。
ましてや強者の奢りへの抗議をゲリラ的奇襲で表現したハマスにたいして、奢り/威信を保持するための報復、ハマスを根絶するための戦闘に乗り出した現イスラエル政権にたいして、そのまま支持などできるはずもありません。
2024年1月29日月曜日
2019年9月28日土曜日
アイルランド・チームは国境を越えて
日本 v. アイルランド は19 対 12という結果でした。ぼくも思わずリアルタイムで観戦してしまいました。
BBC (www.bbc.com/sport/rugby-union)によれば、
Hosts Japan pulled off one of the biggest upsets in Rugby World Cup history as they beat world number two-ranked Ireland 19-12 in Shizuoka.
This was not a result borne of Irish indiscipline or stage fright, but of a truly stunning Japanese performance in front of a cacophonous crowd that lifted their side with a stunning noise that greeted every metre gained, tackle made and turnover won.
It is a result that will, regardless of what happens in the next six weeks of rugby, leave a legacy for generations to come, and will send rugby into a new stratosphere of popularity within the country.
¶ というわけで、ここまではスポーツナショナリズムに圧倒されそうな夜ですが、冷静に受けとめるべきひとつの事実があります。アイルランド・チームは、最初の anthem にも表象されていたとおり、Ireland's Call を歌い、「アイルランド共和国」+「北アイルランド」=アイルランド島 を代表している、つまり国境(政治)を越えたチームだということです。
Irish Rugby Football Union (IRFU)が1875年に結成されたときには、北も南もなかった、島内全域のラグビ・ユニオンだったから、その後の愚かな政治・歴史には左右されない、という単純明快な理由ですね。ラグビ・ワールドカップだけでなく、Six Nations (En, Sc, Wa, Ir, Fr, It) など国際試合での枠組です。
この点、しかしサッカーの場合は Irish Football Association (IFA)が結成されたのは1882年で、その点で事情は同じだったはずなのに、そしてアイルランド国が独立してからも1950年までは国際試合では(努力のうえ)単一チームを編成していたのに、1950年以後は北アイルランドとアイルランド共和国で別チームを編成せざるをえなくなった(政治に負けた)という事実があります。
サッカーに比べてラグビは、より紳士的でエリートの卵向きのスポーツだから、ということでしょうか? どなたか反論してください!
日本チームもまた選手31名中、海外生まれが15名という事実もあり、diversity という点では奮闘しているのですが、それを「君が代」や「さむらい」でまとめるというのが、残念ですね。Nation が政治と歴史によって形成されてきたのなら、このナショナル・チームにふさわしい、現代的な anthem で唱和できれば、much better なのにね。
BBC (www.bbc.com/sport/rugby-union)によれば、
Hosts Japan pulled off one of the biggest upsets in Rugby World Cup history as they beat world number two-ranked Ireland 19-12 in Shizuoka.
This was not a result borne of Irish indiscipline or stage fright, but of a truly stunning Japanese performance in front of a cacophonous crowd that lifted their side with a stunning noise that greeted every metre gained, tackle made and turnover won.
It is a result that will, regardless of what happens in the next six weeks of rugby, leave a legacy for generations to come, and will send rugby into a new stratosphere of popularity within the country.
¶ というわけで、ここまではスポーツナショナリズムに圧倒されそうな夜ですが、冷静に受けとめるべきひとつの事実があります。アイルランド・チームは、最初の anthem にも表象されていたとおり、Ireland's Call を歌い、「アイルランド共和国」+「北アイルランド」=アイルランド島 を代表している、つまり国境(政治)を越えたチームだということです。
Irish Rugby Football Union (IRFU)が1875年に結成されたときには、北も南もなかった、島内全域のラグビ・ユニオンだったから、その後の愚かな政治・歴史には左右されない、という単純明快な理由ですね。ラグビ・ワールドカップだけでなく、Six Nations (En, Sc, Wa, Ir, Fr, It) など国際試合での枠組です。
この点、しかしサッカーの場合は Irish Football Association (IFA)が結成されたのは1882年で、その点で事情は同じだったはずなのに、そしてアイルランド国が独立してからも1950年までは国際試合では(努力のうえ)単一チームを編成していたのに、1950年以後は北アイルランドとアイルランド共和国で別チームを編成せざるをえなくなった(政治に負けた)という事実があります。
サッカーに比べてラグビは、より紳士的でエリートの卵向きのスポーツだから、ということでしょうか? どなたか反論してください!
日本チームもまた選手31名中、海外生まれが15名という事実もあり、diversity という点では奮闘しているのですが、それを「君が代」や「さむらい」でまとめるというのが、残念ですね。Nation が政治と歴史によって形成されてきたのなら、このナショナル・チームにふさわしい、現代的な anthem で唱和できれば、much better なのにね。
2019年4月6日土曜日
境界 すなわち交流圏
ブダペシュト、そしてブラティスラヴァを訪れたのは科研(向こう岸のジャコバン)の企画ででした。帰国して直ちに対馬に赴いたのは科研(主権概念の再構築)の一環です。
対馬については、また後日ふれるとして、Border すなわち国境(線)ではなく境界(地帯)であり、交流のあらわになる圏域だなという認識を強くしたのは、ドナウ川、ローマ帝国の辺境、そしてオスマン帝国と神聖ローマ帝国のせめぎあい(また20世紀には東西冷戦)の現場に立ってのことです。
ドナウ川を南に見下ろすブラティスラヴァ城(現スロヴァキア)で撮った写真2葉をご覧に入れます。快晴ですが、遠くはすこし霞がかっています。
左手=東にはハンガリーの工場の煙突群が遠望され(ブダペシュトまで200キロ)、
右手=西にはオーストリアの風力発電群が遠望されます(50キロ余り先はウィーン)。
手前・川向こうの中高層は労働者の集合住宅です。国境の最前線に労働者街のコンクリート建築というのは、かつて東ベルリンでも見た風景ですね。
ドナウ川は西から東にかなりの水量≒速さで流れています。1838年3月の(雪解け)大洪水の水没線が、ブラティスラヴァでもブダペシュトでも記録・表示されているのが印象的でした。
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