2016年3月30日水曜日

Orbis

 驚きました。美白化粧品の広告ですが、従来の Orbis(地球、世界、範囲)に満足せず、
「大人の美白は、もっと欲張りでいい」と。


 礫岩のようなヨーロッパの秩序を統治すべき普遍君主のレトリック, Orbis non sufficit,「地球は満たされず」「世界は不足なり」「もっとほしい」を知ってのキャッチ・コピーでしょうか? 当方は不明にして ORBIS というブランドがあることも知らなかった!
インスピレーションは近世君主のフェリーペ2世か、ジェイムズ1世か、ジョージ1世か、それとも現代の 007 の The world is not enough?
駅のエスカレータを上りつつ、この知的な?広告に惹きつけられ、階段をまた下りて撮影しました。

 編著『礫岩のようなヨーロッパ』(山川出版社)の刊行は、いよいよあと2カ月ほどです。

2016年3月28日月曜日

大学の先生

 老いたる母の質問によれば、「大学の授業も入試も終わって、春休みなら十分に時間があるじゃろうに」。いえ、じつは大学の先生は今ごろ一番忙しくしているのです。
 年度末の会議や決算や送別会は当然としても、じつは大学の中だけで仕事しているわけではないので、学外の仕事にかかわる会議や決算や催しもあります。さらに何ヶ月も前から他大学の先生方との研究会や(海外から招いた)特別な研究者を囲むセミナーが設定されていて、しかもその間を縫って、期限オーバーの原稿を執筆したり、校正刷りを真っ赤にしたり、ひとの原稿を読んで意見を言ったりします。直近の仕事ばかりでなく中長期の計画や着想を練るといったことに頭脳が向かっていると、‥‥お墓参りも親孝行も滞りがちです。
 済みません、母上!

 かく言うぼくたちも、学生のころ、自分の先生が(授業以外の場面で)どんな毎日・毎週を営んでいたのか、さっぱり知らなかった。別世界でした。
 もしや今日の議員たち、役人たちにとっても、大学の先生の知的生活は、未知との遭遇なのかな。 議員も役人も、大卒とはいえ、在学中はせいぜいゼミやコンパで先生と言葉を交わしただけだったりして。
 大学の先生って、高校の先生より休みが多くて、わがまま;要するに贅沢な怠け者;だから Faculty Development などで絞りあげる必要がある、とでも議員も役人も思いこんでいるんでしょうか。絞れば、たしかに、優秀な先生方はすみやかに授業も論文も報告書もこなしますが、しかし長期的には疲弊して、役人(あるいは独立行政法人)むけの報告書しか書けなくなりますよ。「すみやかに報告する」だけでなく、「調べて、考えて、書く」ことこそ学問の大前提です。
 日本の学問を枯渇させるには、大学の先生を忙しくさせる(考える時間を無くさせる)のが一番! 文系も理系もおなじです。

2016年3月18日金曜日

映画とイギリス史 1


『日本歯科医師会雑誌』という歯医者さん専門の月刊雑誌があって、その巻頭のコラムに連載を始めました。
第1回、3月号(pp.4-5)は「マーガレット・サッチャー:鉄の女の涙」、これは日本での映画公開名。メリル・ストリープ主演の原題は The Iron Lady, 2011年でした。
http://www.imdb.com/title/tt1007029/
 だれもが知るかつての公人の晩年に仮託した、認知障害・アルツハイマーの患者をテーマとする映画ですが、これは、歴史と証言(そして映像資料)といった問題がシャープに表現された作品としても優れたものだと考えています。

 今日の歴史学もまた現代的な学問ですが、連載では、歴史学ではどのようなことが問題にされ、歴史学者はどのような議論をしているのか。とくにイギリス史に取材した映画をとりあげて、知る人ぞ知る歴史的な人物や事件がどう扱われているか、すこし理屈っぽい話をしたいと予定しています。
 拙著『イギリス史10講』では、ブリテン諸島に生きた人びとのアイデンティティと秩序のありかたを中心に述べてみました。その際にいくつもの文芸作品や映画に言及しましたが、それは(一部に誤解があるようですが)一般読者へのサービスでも遊びでもなく、むしろ今日の歴史研究における史料と表象といった方法論にかかわると考えたからです。それがどういうことか、これから連載で述べてゆきます。

2016年3月16日水曜日

Interview with Sir Keith Thomas

このたび日本学士院の招待でサー・キース・トマス(元 British Academy会長)が来日し、
19日(土)に日本学士院で公開講演をなさるという予定については、すでに記しました。
http://www.japan-acad.go.jp/japanese/news/2016/012001.html

 これとは別に小規模で、もうすこし率直な対話のできる会合を計画しました。
 21日(祝)2:30開場、3:00~5:30、そのあと交歓のためのドリンク
 東京大学文学部・教授会談話室(法文2号館のアーケードから入って大きな階段を中2階へ)にて、
 近藤の司会によるインタヴュー集会とします【残念ながら通訳はありません】。

 ご自分(1933年生まれ)の知的生涯と、歴史学・文化諸学・マルクス主義・修正主義・現今の人文学へのかかわりについて、お話していただきます。
今も元気な学者で、歴史学界、そしてOUPをはじめとする出版界に大きな影響を及ぼしてきた人です。
Past & Present 誌の編集委員会に長くおられ、またPeter Burke を育てた先生でもあります!

2016年3月8日火曜日

Sir Keith Thomas

サー・キース・トマス(元British Academy会長) が
3月17日に東京到着、23日に京都へ移動、その間に
19日(土)に日本学士院@上野で公開講演という予定でいらっしゃいます。
学士院では What did it mean in early modern England to be 'civilized'?
という講演です。
http://www.japan-acad.go.jp/japanese/news/2016/012001.html
無料ですが、事前予約が必要です。