2009年12月25日金曜日

A merry Christmas!



 このところ毎年末、医学部本館の正面に illumination が演出されて、予期せず出くわした人々を驚かせるのですが、今年は事業仕分けで中止かな、と思っていたら、23日から一挙にこんな夜が出現。
 (じつは終電まぎわには消灯してしまうようで、だからぼく一人が気付かなかっただけのこと?
 昨日・今日と、夜9時・10時には部屋を出て、したがって早めに医学部前を通過しました。)
 とにかく、クリスマス後にもしばらくは楽しめるのではないでしょうか。皆さんも、どうぞ!

2009年12月23日水曜日

こんな本



 東大出版会のつけた副題は〈日本語のアカデミック・ライティング〉。
 『留学生と日本人学生のための レポート・論文表現ハンドブック』という主題では、ちょっと縁がないかな、と思いながら手にしました。まず目に飛びこんでくるのは、あらゆる漢字にふられた総ルビ。キー表現には英語が添えてあって、これと、ちょっと見にはミスマッチではないかと思われた。‥‥
 しかし、この200ページ余のハンドブックの半ばから後半には、驚きとサプライズが埋め込まれていて、ビックリ!(といった tautology はいけません)目が覚めました。

 では、と落ち着いて、留学生ならぬ、日本の高校を出て大学に入学したフツーの学生、そして彼らに毎週接しているフツーの教員たちは、この本をどう利用するだろうか、という観点で見なおしました。
 第Ⅰ部は、大学に入りたての1年生向けレポートの手法案内。
→ 知的な高校2年生の「主題学習」にも応用できるかもしれない。とはいえ、東大の3年生で、ここに記されている基本さえ分かっていない者もいるんです。

 第Ⅱ部は「レポート・論文の表現」というタイトルで、日本語教育の観点から、かなり具体的に示すテクニカルな文体指導。例文もたっぷり。
→ これって、しかし、大学の『紀要』の執筆要項としても有益です。つまり、大学の先生がたの日本語も、じつはこの水準で、問題なのかもしれない。FD のテキストにしては、いかが?

 第Ⅲ部「レポート・論文の接続表現」は、その効果の重要性ゆえに、第Ⅱ部から分離独立したかと思わせる。
 とくに、並列、選択、焦点化、累加、換言、例示、補足、反対陳述、対比、結果提示、帰結、解説、 etc. にわけて「語句や文の論理的な関係を明確に示す」ためのスタイルを、たくさんの実例とともにデモンストレーション。
→ 英語の Connective expressions, if appropriately used, ... という条件句が生きています。
 日本語でできた文章が複雑だったり、dull だったり、混濁しそうな場合は、英語でどう言うか、と再考すると、good idea が浮かぶこともある(ない場合は、‥‥諦めるかな)。
 自分の文体について、常にここまで意識して構築していたわけではないので、反省しきり。

 本体価格2,500円。

 結論。本書のタイトルは「留学生と日本人学生のための」という部分は不要で、単純に『レポート・論文表現ハンドブック』とするか、あるいは、いっそ『日本語アカデミック・ライティング』というのがいいかもしれない。
 学生も、教員も、とくにⅡ部、Ⅲ部を読んで、みずからの文章を自己点検しましょう。

 欧語文献の表示法、註の付けかた、についてもっと詳しければ、文句なしに西洋史の院生にも薦めます。しかし、学問分野によって文献の表示法、註の付けかたはさまざま多様なのだから、「分野の違いに関係なくそれぞれの目的に合わせて利用」することをうたっているこの本では、それは望蜀というものでしょう。
(歴史学でも、古代史と近代史、また英・独・仏・米で違うのはまだしも、Oxford 方式と Cambridge 方式でも異なるんだから、困ってしまう! 今やっている『イギリス史研究入門』でも、じつはこうしたことで難儀しています。)

2009年12月19日土曜日

風邪です

 この1週間ほどのあいだにメールや電話で「ついに新型インフルエンザに罹った」「風邪です」といった来信があって、でもこちらは不思議に「なんでもないなぁ」と思っていたら、ついに直撃されました。光ファイバや電話線でも伝染するんですね!
 熱も症状も非常にひどくはないので、ふつうの cold でしょう。1日だけ休んで、他は出勤して積もりにつもった仕事を片づけよう、という殊勝な心がけですが、あまり効果はないようです。
(あの Max Weber が56歳で亡くなったのは、1920年、いわゆる「スペイン風邪」pandemic の尻がりでした。)
 関係者の皆みな様、すみません!

2009年12月7日月曜日

18世紀データベース、いくつも

 いま、似たようなデータベースがトライアル利用中で、どれがどうだったか、錯乱しそうです。どれもそれぞれ有益。以下に整理してみましょう。

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1. ECCO I & II
 これは、ご存じ ECCO の元来(I)の15万点には落ちていた、遺漏分データ(II)を追補すべき5万点です。
合計してどれほどの包括性があるか、使い込んでみないとまだよく分かりません。全文検索データベース充実の長い道程の途上でしょう。

 Cengage Learning Japan/雄松堂あつかい
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2. The Making of the Modern World
 よく知られている Goldsmiths-Kress Library of Economic Literature 1450-1850
すなわち30年くらい前に(?)マイクロフィルム化されて、経済学部(経済学史)の強い拠点大学の多くにすでに入っている ロンドン大学・ハーヴァド大学(+α)の稀覯本コレクション。
 でも経済学史だけじゃありません。ぼくの 『民のモラル』pp.14-15 で、女房売りの文脈で用いた『女性‥‥にかんする法律書』という1777年刊の大冊子は、東大経済の Goldsmiths マイクロで読みました。法学、社会文化史、ジェンダー史のいずれにとっても、宝庫です。

 ところが、東大の図書商議会は、昨年度、このデータベースについて「マイクロがすでに入っているなら緊急性はないだろう」といった、賢明ならざる決定をしました。‥‥大いに問題あり。
一々の稀覯本を読むというより、なによりデータベースとして分析的に使うと、すごい威力! 使いでがあります。ぜひ院生を含む、学際的な利用者の多さを考慮にいれて、あらためて判断してくださいな。

* 17th and 18th Century Burney Collection Newspapers
* 19th Century British Library Newspapers
* The Making of the Modern World 
トライアルではこれらが一緒に利用できます。

Access URL: http://infotrac.galegroup.com/itweb/ken_demo
Password: 「パスワードは tiger になります。
有効期限は新たに12月31日までに設定させていただきました」とのことです。大いに使って、「すばらしいデータベースだ」という学内世論を高めましょう。

 Cengage Learning Japan/雄松堂あつかい

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3. Eighteenth Century Journals Portal

 こちらは Bodleian (Oxford), University of Texas (Austin), British Library & Cambridge UL が所蔵する18世紀の種々様々の定期刊行物データベースを合体したポータル。
取次店は丸善です。
www.18thcjournals.amdigital.co.uk
期間は1月末まで。
東大図書館のサイトにも公示。
http://www.lib.u-tokyo.ac.jp/

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