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2020年8月28日金曜日

『歴史学研究』1000号


          http://rekiken.jp/journal/2020.html
創刊1933年の『歴史学研究』が、戦後歴史学の中核をになった期間をへて、今も生き延び、この9月号で1000号を迎えたということです。創刊1000号記念の特集は「進むデジタル化と問われる歴史学」。なんと近藤も寄稿しています!

正直、昨秋に編集部から依頼を受けたとき、一瞬は迷いました。歴史学研究会とは「因縁」というものがあって、それは何十年たったら解消する、といった簡単なものではありませんので。ところが2・3年前から「研究部長」さんが変わって、歴研内部の討論のトーンも変わったような気がします。「主権国家再考」の討議にも参加しました。はばかりながら学問的な再考・修正・革新には、学生時代から積極的にかかわってきたという自負はありますので、2019年には「主権なる概念の歴史性について」という大会コメントを『歴史学研究』989号に寄せました。【西川正雄さんがお元気なら、大いに喜んでくださったでしょう。彼との関係修復(2007年7月、於ソウル・駒場)はあまりにも遅かった!】

今回はそれより長く、1000号記念特集で、ディジタル化/これからの歴史学に関係するなら、いかようにも自由に、という特段の依頼だったので、それなら、自分のためにも人のためにも、整理して記録しておこうとその気になりました。現今のディジタル化とグローバル化について短期的な(他の人にも書ける)エッセイをしたためるのでなく、1980年前後から顕著になっていた世界的な知の転換と同期してきたITの展開という文脈、そのなかに90年代以降の(≒ Windows 95 以降の)ディジタル史料(リソース)、オンライン学問の発達・展開を位置づけて論述してみたいと思いました。ぼく自身も同時代人としてそのただなかで生きてきたのです。
OUP や Proquest や Gale-Cengage といった特定企業名も出てきますが、それぞれ競合しつつ、2000年(OED オンライン供用)~2004年(ODNB)あたりから学界も個々の研究者も気持・志向・文化が転換したような気がします。社会経済史学会では、大会でも部会でも、Query をどのように立てて検索し、結果をどう処理するか、といったことを熱心に議論していました。
ぼく自身も、2004年7月には「オクスフォードの新DNB」について『丸善Announcement』に書かせていただいたし、12月には(Keith Thomas の代わりに)Martin Dauntonを招待して、丸善 OAZO にて ODNBシンポジウムを開催していただきました。

しかし同時に、現ディジタル世界のありようはあまりにも問題が多く - 今日のアメリカ政治にも、日本社会にも如実に現れているとおり -、賢明で積極的な対応が不可欠です。好き嫌いや利便性よりも、反証可能性をおもてに出した、クリアでシンプルな文章とすべきだと考えました。
従来の歴史学からの連続性、民主的アクセスが保証された知の営為、といったことも隠れたモチーフです。また他方ではイングランド・アイルランド・スコットランドの間の「歴史問題」をおもてに出した連携のような関係が、日本・韓国・中国・台湾などの間でいつになったら構築されるのだろう、という憂慮もあります。
後半はいささか整理不足で、あれもこれもとなってしまいました。

2017年4月4日火曜日

痛みと感情のイギリス史

前々から予告されていた6人の共著『痛みと感情のイギリス史』(東京外国語大学出版会、2017年3月)を手にしました。
まずは第一印象を。
目次を見ても、期待感をそそられますが、さらにカバーを取り去り、本体を見て驚きました。瀟洒です。紙なのに、しっかりして柔らかく、手になじむ上品な装幀。
http://www.tufs.ac.jp/blog/tufspub/

しかし、この装幀、ぼくも知っているぞ、と記憶をたどりつつ書棚から引き出したのは
英国をみる: 歴史と社会』(リブロポート、1991年)です。
この共著は慶応ボーイの企画にぼくが紛れこんだ異文化遭遇の本でしたが、元筑摩書房のリブロ編集者(現・書籍工房早山の社長)が入れ込んでやってくれたのですが、
「ちょっといい物にしました」と控えめに自慢していました。

とはいえ、ちょうど手になじむ大きさ、版面の美しさ、赤いしおり付き!
今回の『痛みと感情』には負けます。しかも、2600円! どうして可能なんでしょう?
これだけ読者に物としての感触的喜びをもたらす本は、あまりありません。

もう一言つけ加えます。
英語のタイトル Pain and Emotions in British History については、
Pain and Emotion . . . あるいは Pains and Emotions . . . というのがありうるけれど、
Pain だけが単数形で抽象化された概念、
Emotion は複数の具体的な、さまざまの喜怒哀楽・快不快、
というのは、どうでしょう。明快な説明が必要です。
たしかベンサムの場合は pleasure and pain ないしは all sorts of pleasures and pains でした。

2016年9月4日日曜日

PRC って?


 すでに3週間前のことですが、北ウェールズ・(ス)ランディドノーの宿にあった小さなシャンプーをいただきました。ロンドンの安宿での浴室備え付けは兼用ボディシャンプーだったので、そちらを使用しました。
 ウェールズなのに Falkirk Scotland の企業の製品なんだ、などと感心していたのだが、小さな文字のどこかに Chine とか見えたような気がして、改めてしっかり読むと(全体で高さ5センチあるかないか。じつに目を凝らさないと読めない)下から4行目右に Fabriqué en Chine とあるではないか!えっ? でも英語でそうとは記されてない。英仏2語表記だが、その左には Made in the PRC とあり。
 PRC = People's Republic of China のことと判明するまで、眼をパチパチしました。オリンピックでも国連でも、こんな表記をしていますかね?
 こういう微妙な使い分け(ダブルスタンダード)を国際戦略的に推進する国と、Cool Japan! なんて一人で悦に入っているナイーヴな国と、今日の states-system のなかで対等にやっていけるかな? グロティウス先生、そして大沼先生から学ぶべきことは多い、とあらためて思い入ります。

2016年7月12日火曜日

立正大学のPR

 昨夕、山手線の電車に乗り込んで、自然とドアの上方に目がゆき、びっくり。わが目を疑いました。立正大学の広告があるではないですか!

これまで地下鉄でもJRでも、新聞でも、他大学の(かならずしもよいとは限らない)広告を見るたびに、なぜわが立正大学はこういったPRに消極的なのだろう、と不思議に思っていました。東急・池上線の電車には車内広告があるらしいですが、あまりにもローカル。ぼく自身はまだ見たことがありません。

立正大学は今から30年ほど(?)前に経営的な失敗に遭遇してからは、アツモノに懲りて、「石橋をたたいて渡らない」経営方針で来ました。今では毎年発表される私学の財政収支の番付で、ベストテンどころかベスト3くらいにいつも着けているほどの黒字なのに、それを有効に使わないでいたのです。「カネの使い方を知らないコガネ持ち」。1968年まで学長をつとめた石橋湛山(1884-1973)に顔向けできない大学経営陣でした。
なにしろ日本で一番古いかもしれない高等教育機関(日蓮宗・飯高檀林、1580年)で、しかも立地は抜群。JR「大崎」駅には、山手線だけでなく、湘南新宿ラインが走り、隣の「品川」乗り換えで、東海道新幹線および総武線快速、上野東京ラインにも便利、ということで、神奈川県、埼玉県、千葉県からのアクセスは抜群によいのです。静岡県、茨城県、群馬県から毎日通学している学生も少なくありません! 山手線沿線の私学というだけなら、いくつもありますが、立正ほどにアクセスのよい大学は他にあるでしょうか? これに都営浅草線の「五反田」、池上線の「大崎広小路」も加えてみると、徒歩数分の駅が3つあって、これは他もうらやむ「資源」です。
さらに去年から、付属中高の移転にともない、品川キャンパスが広く、きれいになりました。山手通りも歩道がたいへん広く歩きやすくなっています(自転車道が独立)。
これらが生かされることなく「知る人ぞ知る」で経過していたのです。

今年4月から新学長・齊藤昇さん(英米文学)に替わって、なにか変わるかな、と思っていたら、
1) だれもが知る看板教授をゲット:吉川洋さんを経済学部に、冨山太佳夫さんを文学部に迎えました。従来から心理学、社会学、有職故実で活躍なさっている方々は、いつもどおり、テレビ画面にご登場です。
2) 研究支援課を改組して「研究支援・地域連携課」とし、品川区とのコラボが増えました。ぼくの場合も、去年のある市民講座は条件が合わず辞退しましたが、今年秋のシェイクスピア公開講座には講師をつとめます。「<学者王ジェイムズ>と<インテリ王子ハムレット>」は10月12日(水)です。よろしく!
3) こうしたことの一環として、山手線の電車広告があったわけですね。内向きからの脱皮です。
とはいえ次の戦術がほしい! 中長期的には、なにより若手教員を大切に育てることかな。

ところで、立正大学と創価学会(創価大学)、そして立正佼成会とは、無関係です。非公式の交流さえないようです。ときに誤解もありますので、念のため。

2012年9月28日金曜日

『民のモラル』 並製版


〈歴史のフロンティア〉の初版は1993年11月でした。それからじつは2刷、3刷と 微細ながらも数々の訂正改良を重ねてきていますが、近年は版元品切れ。欲しい人は古書市場でどうぞ、という情況でした。

 しかし、今回立正大学で後期の教科書として指定するにあたり、せいぜい数部(10冊以内)しか間に合わないのでは授業にならないので、山川出版社と相談して、オンデマンドの「並製版」を作っていただきました。9月20日付。

初版第3刷と同じ形態・版面。ただしカバーに表示する定価について、消費税制の変遷にともない、内税でなく外税で
「本体2600円+税」
という表示に変わりました。

しっかりした厚紙の表紙から並製=ペーパーバックに変わったのですが、表紙の図柄(ホーガースの油絵と銅版画)は元のまま。内部も元のまま(ただし、ほんの少し色濃く=しっかり印字されている?)。 230-231ページ、ブリューゲルの版下のみ、ひそかに取り替えました。白黒でも見やすいようにという配慮です。本全体の厚みが減って、また表紙が bendable なので使いやすいという声も。

2012年3月17日土曜日

Brewer 再訪

今回はぼくは主催者でなく、ただの参加者ですが、次のような催しが続きます。

18日(日)午後2時~5時
  青山学院大学5号館517にてイギリス史研究会
  John Brewer の講演:Sex scandal & British politics

26日(月)~28日(水)には学習院大学で History of consumer culture のコンファレンス↓
  http://www-cc.gakushuin.ac.jp/~20070019/HCCwelcome.html
  こちらは Brewer, Offer, Styles, そして草光さん, etc. がペーパーを読みます。
  ぼくは司会だけ。

2010年10月28日木曜日

『イギリス史研究入門』 をめぐって



 新刊書について、さっそくご感想・ご意見などをいただいていますので、双方向でやりとりしやすい掲示板〈イギリス史研究 Q&A〉に抜粋登載しています(10月26日以降)。
こちらです → http://kondo.board.coocan.jp/

 個人的な要素はできるだけ省いて、共有される論点 or 普遍性のある問題を討論できればと思います。よろしく。

2010年7月4日日曜日

『人文学への接近法  西洋史を学ぶ』



こんな本を手にしました。すばらしい!
『人文学への接近法:西洋史を学ぶ』(京都大学学術出版会、2010)
基本的には大学1・2年生向けに、副次的には彼らを相手にしている大学教師向けに作られたのでしょうが、正攻法でしっかり学問の入口の案内をしたうえに、さらにコラムでは
「Q 西洋史学といっても、フランスやドイツの本場の研究者の真似なんでしょう?
A はい、真似です‥‥」
とか
「Q 大学院に進んで研究者を目指して、しかも何年も海外留学をして、それで、ちゃんと大学に就職できるのでしょうか」
とか
「Q 西洋史学の専門研究をして論文を書いても、読む人なんていないのではないですか」
といったフランクな対話の糸口も設けられていて(関西だからこそ?)、これはすごい。

服部・南川・小山・金澤といった京大西洋史の4先生の編集になる「熱意」あふれる、協力の産物。留学体験記や各方面に就職している京大出身者の声もあって、大学3・4年の、とりわけ大学院を志望する学生の must かもしれない。2000円なり。

後半に挙がっている「文献案内」は基本的に日本語の本に限られるが、しかし
「どの本も、各節の執筆者が膨大な読書経験の中から選りすぐった良書揃いで、ハズレは一冊もないと自負している」とのこと。 たしかにこれまでの類書とは「腰の入れかた」が違う本のような気がします。
‥‥というわけで、皆さん、まだなら是非。

2010年6月3日木曜日

MoMW (The Making of the Modern World)



 東大の図書館から ↓ のような朗報あり。
【小言コーベイみたいなことを言うと、定冠詞 the を2箇所に付けるのが正しい表記です】
 写真の copyright は Gale-Cengage.
------------------------------------------------------------
平成22年度大型コレクションとして選定された
「The Making of Modern World (MOMW) データベース」
(ゴールドスミス・クレス文庫所蔵社会科学系学術図書データベース)
について、正式サービスを開始しましたので、お知らせします。
学習・研究にご活用いただきますよう、よろしくお願いいたします。

◆The Making of Modern World (MOMW) とは
・15世紀半ばから1850年までの経済史・経営史・社会思想史を
 中心とする社会科学関係の書籍61,000点、および同年代に創刊された
 定期刊行物466点を収録し、フルテキスト検索が可能なデータベースです。
・収録資料はロンドン大学ゴールドスミス文庫(Goldsmiths' Library of  
 Economic Literature, University of London)とハーバード大学
 経営大学院クレス文庫(Kress Library of Business and Economics,
 Harvard Business School)の蔵書を原本としており、総ページ数は
 1200万ページにおよびます。

◆アクセスの手順
・http://infotrac.galegroup.com/itweb/unitokyo?db=MOME
 からアクセスしてください。
・学外利用のための「SSL-VPNサービス」については、
 動作確認中で、現在対応できていません。
・同時アクセス制限はありません。

◆お問い合せ先
 総合図書館資料契約係
 zasshi@lib.u-tokyo.ac.jp (@は半角に置き換えてください)
------------------------------------------------------------ (unquote)


 いささか遅まきですが、それにしても、とにかく all's well that ends well.

 MoMW は(最広義の古典経済学 & moral philosophy の成立にかかわる刊行物なら)英語文献に限らないので、キーワード検索するとラテン語はもちろん、フランス語、イタリア語、スペイン語、とヨーロッパ言語世界の同時代的交渉の証をみるようで、そうした点からもすばらしい電子アーカイヴだと思います。内田義彦さんがこれをみたら、感激して落涙したにちがいない。
 NII の共同購入コンソーシアムに東大も加わるという方式のようですが、(他大学からも参加しやすい)一番よい方法でしょう。この件につき、じつは5月に一時、ダメになった、というメールをもらって、驚いたりしました。

 前にも書きましたとおり、ケインブリッジの大学図書館(CUL)は普通は全開架で、また稀覯本・手稿も、電子アーカイヴも含めてすばらしい研究図書館ですが、なんと MoMW のみ持っていません! 社会経済文化史の若手 Craig が嘆いていました。
 EEBO と ECCO があれば足りる、ということではないんです。それぞれ時代の全刊行物の15%程度をカバーしているに過ぎないんですから。結局、「このコレクションを点検すればそれで十分」といったものはまだ存在しません。ケインブリッジ、オクスフォード、BL、マンチェスタと稀覯本を探して歩く旅は終わりません。

2010年3月26日金曜日

The Making of the Modern World

懸案の電子アーカイヴ
"The Making of the Modern World"
(元来は Goldsmith &Kress Libraries のディジタル版です)
この購入がようやく東大の図書行政商議会でも承認されました。

朗報です。
経理上の問題もクリアできて、良かった良かった。
グーテンベルク(Caxton)以降、1850年以前を研究している方々、みんなへの恩恵。
おおいに活用しましょう。

2010年1月5日火曜日

トライアル利用

 旧臘31日は、じつは夜まで大学に居て、未練がましくも、試用期間の終わるディジタル・アーカイヴを検索し続けていました。とくに The Making of the Modern World(ゴールドスミス=クレス文庫)および RHS Bibliography です。一つのかなりおもしろい(と信じる)着想=仮説のもとに、18世紀研究、E・P・トムスン批判(と再評価)を兼ねる分析がおこなえそうなのです。

(これは12月7日にも、もっと以前にも、書いた件です。大晦日=千秋楽じゃなく、もっと前にやるべき仕事じゃないか、と言われましょうが、じつは30日は * 先生のお見舞い、29日は『* 研究入門』の表記 & 用字用語の方針決定、28日は学内の校務、27日は親類関係のいろいろと『岩波 * 辞典』の項目問題、26日は『* 研究入門』のための交渉, etc. というわけで、ほとんど無限にさまざまの仕事が輻輳していたのです。正月は、もう3日から!)

 着想・アイデアについて、ここで具体的には言えませんが、それにしても MMW の場合、キーワード検索で、18世紀について英語・フランス語ばかりでなく、ドイツ語・スペイン語の出版がたいへん多くヒットし、これぞ啓蒙のコスモポリタン性の証、といった観があります。
 とにかく泣いても笑っても「紅白」だか「行く年来る年」だかとともに、アクセス権は消えてしまいました。

 さて、東大図書館は、新年に賢明な決定をするでしょうか? MMW は1000万円と1500万円の間。
 予算が限られていればこそ、cost/performance良き、賢明な選択をするべきです。
 刮目して朗報を待っています。

2009年12月23日水曜日

こんな本



 東大出版会のつけた副題は〈日本語のアカデミック・ライティング〉。
 『留学生と日本人学生のための レポート・論文表現ハンドブック』という主題では、ちょっと縁がないかな、と思いながら手にしました。まず目に飛びこんでくるのは、あらゆる漢字にふられた総ルビ。キー表現には英語が添えてあって、これと、ちょっと見にはミスマッチではないかと思われた。‥‥
 しかし、この200ページ余のハンドブックの半ばから後半には、驚きとサプライズが埋め込まれていて、ビックリ!(といった tautology はいけません)目が覚めました。

 では、と落ち着いて、留学生ならぬ、日本の高校を出て大学に入学したフツーの学生、そして彼らに毎週接しているフツーの教員たちは、この本をどう利用するだろうか、という観点で見なおしました。
 第Ⅰ部は、大学に入りたての1年生向けレポートの手法案内。
→ 知的な高校2年生の「主題学習」にも応用できるかもしれない。とはいえ、東大の3年生で、ここに記されている基本さえ分かっていない者もいるんです。

 第Ⅱ部は「レポート・論文の表現」というタイトルで、日本語教育の観点から、かなり具体的に示すテクニカルな文体指導。例文もたっぷり。
→ これって、しかし、大学の『紀要』の執筆要項としても有益です。つまり、大学の先生がたの日本語も、じつはこの水準で、問題なのかもしれない。FD のテキストにしては、いかが?

 第Ⅲ部「レポート・論文の接続表現」は、その効果の重要性ゆえに、第Ⅱ部から分離独立したかと思わせる。
 とくに、並列、選択、焦点化、累加、換言、例示、補足、反対陳述、対比、結果提示、帰結、解説、 etc. にわけて「語句や文の論理的な関係を明確に示す」ためのスタイルを、たくさんの実例とともにデモンストレーション。
→ 英語の Connective expressions, if appropriately used, ... という条件句が生きています。
 日本語でできた文章が複雑だったり、dull だったり、混濁しそうな場合は、英語でどう言うか、と再考すると、good idea が浮かぶこともある(ない場合は、‥‥諦めるかな)。
 自分の文体について、常にここまで意識して構築していたわけではないので、反省しきり。

 本体価格2,500円。

 結論。本書のタイトルは「留学生と日本人学生のための」という部分は不要で、単純に『レポート・論文表現ハンドブック』とするか、あるいは、いっそ『日本語アカデミック・ライティング』というのがいいかもしれない。
 学生も、教員も、とくにⅡ部、Ⅲ部を読んで、みずからの文章を自己点検しましょう。

 欧語文献の表示法、註の付けかた、についてもっと詳しければ、文句なしに西洋史の院生にも薦めます。しかし、学問分野によって文献の表示法、註の付けかたはさまざま多様なのだから、「分野の違いに関係なくそれぞれの目的に合わせて利用」することをうたっているこの本では、それは望蜀というものでしょう。
(歴史学でも、古代史と近代史、また英・独・仏・米で違うのはまだしも、Oxford 方式と Cambridge 方式でも異なるんだから、困ってしまう! 今やっている『イギリス史研究入門』でも、じつはこうしたことで難儀しています。)

2009年12月7日月曜日

18世紀データベース、いくつも

 いま、似たようなデータベースがトライアル利用中で、どれがどうだったか、錯乱しそうです。どれもそれぞれ有益。以下に整理してみましょう。

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1. ECCO I & II
 これは、ご存じ ECCO の元来(I)の15万点には落ちていた、遺漏分データ(II)を追補すべき5万点です。
合計してどれほどの包括性があるか、使い込んでみないとまだよく分かりません。全文検索データベース充実の長い道程の途上でしょう。

 Cengage Learning Japan/雄松堂あつかい
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2. The Making of the Modern World
 よく知られている Goldsmiths-Kress Library of Economic Literature 1450-1850
すなわち30年くらい前に(?)マイクロフィルム化されて、経済学部(経済学史)の強い拠点大学の多くにすでに入っている ロンドン大学・ハーヴァド大学(+α)の稀覯本コレクション。
 でも経済学史だけじゃありません。ぼくの 『民のモラル』pp.14-15 で、女房売りの文脈で用いた『女性‥‥にかんする法律書』という1777年刊の大冊子は、東大経済の Goldsmiths マイクロで読みました。法学、社会文化史、ジェンダー史のいずれにとっても、宝庫です。

 ところが、東大の図書商議会は、昨年度、このデータベースについて「マイクロがすでに入っているなら緊急性はないだろう」といった、賢明ならざる決定をしました。‥‥大いに問題あり。
一々の稀覯本を読むというより、なによりデータベースとして分析的に使うと、すごい威力! 使いでがあります。ぜひ院生を含む、学際的な利用者の多さを考慮にいれて、あらためて判断してくださいな。

* 17th and 18th Century Burney Collection Newspapers
* 19th Century British Library Newspapers
* The Making of the Modern World 
トライアルではこれらが一緒に利用できます。

Access URL: http://infotrac.galegroup.com/itweb/ken_demo
Password: 「パスワードは tiger になります。
有効期限は新たに12月31日までに設定させていただきました」とのことです。大いに使って、「すばらしいデータベースだ」という学内世論を高めましょう。

 Cengage Learning Japan/雄松堂あつかい

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3. Eighteenth Century Journals Portal

 こちらは Bodleian (Oxford), University of Texas (Austin), British Library & Cambridge UL が所蔵する18世紀の種々様々の定期刊行物データベースを合体したポータル。
取次店は丸善です。
www.18thcjournals.amdigital.co.uk
期間は1月末まで。
東大図書館のサイトにも公示。
http://www.lib.u-tokyo.ac.jp/

¶ さっそく試用、キーワード検索してみました。
 検索は自由自在だけれど、ダウンロードは許さないように設定されていますね。検索結果をテクストで一定範囲、コピー&ペイストすることは可能です。

2009年10月5日月曜日

Office 2007 ライセンス認証問題

Dynabook はすばらしいのですが、インストールしたマイクロソフトの Office 2007 ライセンス認証問題に悩まされていました。2008年にNECデスクトップと同時にきちんとアカデミックパックで購入して使っていた正規製品です。
 デスクトップと携行ノートと計2台は正規にインストールし利用できる、という理解ですが、今回のようにハードディスク問題で再インストールを繰りかえしちゃった場合については、ネットで検索してみても、面倒くさそうで、うーん、と先送りにしていました。
ところが、自分はワードもアウトルックも使わなくても、大学やダレソレが添付してくる文書はワードやエクセルばかり。そのたびにメッセージの「あと何回」が減って、ついに日曜にはあと1回!!

 その日曜の晩には、わがパソコンの師古谷先生との間で、以下のようなやりとり【抜粋】がありました。

2009/10/04 19:35 Kazuhiko KONDO :
  現在、Dynabook SS RX2 TJ** というので仕事しています。
  快適なマシーンです。
  唯一の問題は、MS Office 2007 の認証に問題ありとのメッセージ‥‥。
  不正使用してるわけでは全然なく、9月のNECデスクトップ機器の不具合で、
  なんども再インストールを繰りかえしてしまったから、こちらのノートパソコンは
  想定許容回数を越えているということらしいが。

----------------------------------------
2009/10/04 22:43 daisuke.furuya :
この問題につき、すでにご覧になっているかもしれませんが、MSのホームページで情報を見出しました。

http://support.microsoft.com/kb/919895/ja
いろいろな問題が想定されるようですね。もしライセンス認証だけの問題でしたら、
LAN環境ではなく、直接電話をかけて入力する方法もあります。電話は機械対応です。

それにしましても、Dynabook SS RX2 は外見はスリムながら実にゴージャスな仕様で
すね。僕は今は完全にMacに移行してしまいましたが、IBM謹製 ThinkPadなき後、
キーボード重視派にはこれしかないかも知れません。

〈to be continued〉

2009年10月2日金曜日

ぼくの美人秘書



 9月に PC関連ではいいニュースはなかったのですが、22日にもしたためたように、
壊れたPC=NECのかわりに注文し、納品されても、AJCの終わるまでは開箱さえできなかった最新鋭の Dynabook SS RX2 という美しい逸物。ようやく20日に箱を開け、インストールし、ただちに大学および自宅で使い始めました。
 これはどうも大学生協の限定販売らしく、CPU は 1.4GHz、メモリ3GB、記憶装置はハードディスクでなく SSD で128GBです。967グラム。 薄くて美しい! 速い! 静かで熱くならない。
 Dynabook とぼくは相性がよく、じつは何を隠そう、家族のものを含めるとこれで4台目です。一番最初、2002年に三菱財団の助成をいただいたときに買った物が良かったから、その後もノートパソコンといえば第一候補は常に ダイアナならぬ Dyna でした。上の写真の右側がその最初の Dynabook SS5 です。XP で安定していたこと、Pen III 800MHz ですが、当時のノートPCとしては十分な能力。デスクトップにソニーの LX55G という、これは 1.7GHzの逸物を 同じ2002年に買ったばかりでしたから、2つのコンビで快適なPC生活が始まったわけです(とにかく ME、そして Gateway の悪夢の後でしたから、なおさら快適でした)。
 これはよく使い込みましたので、スペースキーは黒く照り輝き、A、O、N、M などは爪が当たって文字の角が剥げかかっています。5年間のうちには、ヒースロウ空港で荷の上からコンクリート床に落下させたり(一晩看病して息を吹きかえしてもらいました)、ときにはぶん殴ったり、夜間にさわれないほど熱くなったり、酷使によく耐えました。ついに昇天しましたが、感謝の意を込めて、いまでも保管しています。

 Dyna SS の利点を考えると、2つありました。
1) なにより keyboard が広く、構造が堅牢で、薄く美しい。というのでどこに出かけるにも一緒。モバイルパソコンは、小さいことではなく、薄くて軽いことこそが重要だと信じます。どうせ鞄の中ではA4の書類にはさまれて移動するのです。パナソニックの Lets Note に触れるたびに、よくまぁ世間の人々はこんなに狭いキーボードで文章入力ができるな、と感心します。
 ところがしばらく前、IBM の ThinkPad が市場から消えたころから Vaio や Lets Note の攻勢で、またごく最近は廉価でおもちゃみたいなシロモノの流行で、正統派のキーボード重視の商品が青息吐息でした。大学生協の店頭で見るかぎり、東芝という会社も Dynabook というブランドも積極性を失ったかと心配になることもありました。それが今年から再び盛り返しつつあるかに見えます。

 新鋭機は上の写真の左側です。15センチの定規を置きましたが、Z の左端から B の右端までちょうど95mmです。すなわち一つのキー当たり19mmという原則が厳守されて、しかも Lets Note のような縦方向の圧縮(纏足みたい!)もなく、文字入力する使い手のことを考えた構造です。上端に一部の見えるデスクトップのキーボードと比べて、各キーの大きさは変わりません。
 to be continued.