2020年8月28日金曜日

『歴史学研究』1000号


          http://rekiken.jp/journal/2020.html
創刊1933年の『歴史学研究』が、戦後歴史学の中核をになった期間をへて、今も生き延び、この9月号で1000号を迎えたということです。創刊1000号記念の特集は「進むデジタル化と問われる歴史学」。なんと近藤も寄稿しています!

正直、昨秋に編集部から依頼を受けたとき、一瞬は迷いました。歴史学研究会とは「因縁」というものがあって、それは何十年たったら解消する、といった簡単なものではありませんので。ところが2・3年前から「研究部長」さんが変わって、歴研内部の討論のトーンも変わったような気がします。「主権国家再考」の討議にも参加しました。はばかりながら学問的な再考・修正・革新には、学生時代から積極的にかかわってきたという自負はありますので、2019年には「主権なる概念の歴史性について」という大会コメントを『歴史学研究』989号に寄せました。【西川正雄さんがお元気なら、大いに喜んでくださったでしょう。彼との関係修復(2007年7月、於ソウル・駒場)はあまりにも遅かった!】

今回はそれより長く、1000号記念特集で、ディジタル化/これからの歴史学に関係するなら、いかようにも自由に、という特段の依頼だったので、それなら、自分のためにも人のためにも、整理して記録しておこうとその気になりました。現今のディジタル化とグローバル化について短期的な(他の人にも書ける)エッセイをしたためるのでなく、1980年前後から顕著になっていた世界的な知の転換と同期してきたITの展開という文脈、そのなかに90年代以降の(≒ Windows 95 以降の)ディジタル史料(リソース)、オンライン学問の発達・展開を位置づけて論述してみたいと思いました。ぼく自身も同時代人としてそのただなかで生きてきたのです。
OUP や Proquest や Gale-Cengage といった特定企業名も出てきますが、それぞれ競合しつつ、2000年(OED オンライン供用)~2004年(ODNB)あたりから学界も個々の研究者も気持・志向・文化が転換したような気がします。社会経済史学会では、大会でも部会でも、Query をどのように立てて検索し、結果をどう処理するか、といったことを熱心に議論していました。
ぼく自身も、2004年7月には「オクスフォードの新DNB」について『丸善Announcement』に書かせていただいたし、12月には(Keith Thomas の代わりに)Martin Dauntonを招待して、丸善 OAZO にて ODNBシンポジウムを開催していただきました。

しかし同時に、現ディジタル世界のありようはあまりにも問題が多く - 今日のアメリカ政治にも、日本社会にも如実に現れているとおり -、賢明で積極的な対応が不可欠です。好き嫌いや利便性よりも、反証可能性をおもてに出した、クリアでシンプルな文章とすべきだと考えました。
従来の歴史学からの連続性、民主的アクセスが保証された知の営為、といったことも隠れたモチーフです。また他方ではイングランド・アイルランド・スコットランドの間の「歴史問題」をおもてに出した連携のような関係が、日本・韓国・中国・台湾などの間でいつになったら構築されるのだろう、という憂慮もあります。
後半はいささか整理不足で、あれもこれもとなってしまいました。

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