きのう(土)の『毎日新聞』書評欄には、加藤陽子さんの『歴史とは何か 新版』評が載っていました。いろいろなことの分かっている加藤さんですから、本の装丁から全体の構成について特徴を指摘しつつも、ナゾリでなく、具体的なイメージの湧く紹介をと心がけておられる。註についての言及に続いて、訳文における[笑]の挿入についても「余裕ある理性には、笑いがふさわしい」と言ってくださって、ホッとします[笑]。
→ https://mainichi.jp/articles/20220702/ddm/015/070/020000c
「「無人島に一冊だけ持って行くなら」という問い方がある。‥‥断言してしまおう。上半期ではこの新版がそれだと。ただ、原作と清水訳の新書も持っては行きたい。」
これは最高級のお誉めの言葉です。たしかに原文の英語はどうだったのか、それに清水幾太郎はどう訳していたのか、その違いと how を確かめたくなりますよね。
最後の締めの文は -「カーは常に新しい。」でした。
ウェブでは匿名のコメント評が多数あるようですが、ここでは署名ブログから:
→ http://www.kai-workshop.com/diary/diary.cgi?move=202206
筆者・難波和彦さんとは、まったく存じ上げない方ですが、「界工作舎」という建築設計社の代表のようです。文中に鈴木博之とか陣内秀信といった知らないではない方々の名前も出てくるので、どこかですれ違っていたのでしょうか。
東奔西走のお忙しい仕事の合間に、6月10日から21日までかけて1講づつ丁寧に読んでくださいました。最初の10日のコメントは、「‥‥同じタイトルの第1版の『歴史とは何か』(E.H.カー著 清水幾太郎訳 岩波新書)は古典的名著であり大学時代に読んだ。‥‥自叙伝、詳細な補註が加えられている。講義自体も新訳なので、NHKラジオでの話の仕方を念頭に置きながら読んでみよう。」と始まります。ラジオでのトークもなさる方なのか。
その最後の言葉(21日)は、「‥‥たまたま手にした本書からは、実に沢山のことを学び、さまざまなことを考えさせられた。久しぶりに充実した読書だった。」とのこと。 訳者冥利に尽きるものです。ありがとうございました。
ところで、建築士/建築家 architect とは近世・近代のイギリスで gentleman's profession であるということは20歳くらいまでのナイーヴなぼくは知識としても知らなかったのでした。心底そうだったのだと理解したのは、恥ずかしながら、1981年にロンドンの Sir John Soane 邸(Lincoln's Inn Fields)に訪れたときです。つまり33-4歳まで、ぼくは「何も知らなかった」!
『歴史とは何か 新版』の2箇所(pp.11, 276)で建築家(大工の棟梁)についての訳註をくりかえしていますが、そうした昔の自分を省みての慚愧の訳註です。
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