2016年3月28日月曜日

大学の先生

 老いたる母の質問によれば、「大学の授業も入試も終わって、春休みなら十分に時間があるじゃろうに」。いえ、じつは大学の先生は今ごろ一番忙しくしているのです。
 年度末の会議や決算や送別会は当然としても、じつは大学の中だけで仕事しているわけではないので、学外の仕事にかかわる会議や決算や催しもあります。さらに何ヶ月も前から他大学の先生方との研究会や(海外から招いた)特別な研究者を囲むセミナーが設定されていて、しかもその間を縫って、期限オーバーの原稿を執筆したり、校正刷りを真っ赤にしたり、ひとの原稿を読んで意見を言ったりします。直近の仕事ばかりでなく中長期の計画や着想を練るといったことに頭脳が向かっていると、‥‥お墓参りも親孝行も滞りがちです。
 済みません、母上!

 かく言うぼくたちも、学生のころ、自分の先生が(授業以外の場面で)どんな毎日・毎週を営んでいたのか、さっぱり知らなかった。別世界でした。
 もしや今日の議員たち、役人たちにとっても、大学の先生の知的生活は、未知との遭遇なのかな。 議員も役人も、大卒とはいえ、在学中はせいぜいゼミやコンパで先生と言葉を交わしただけだったりして。
 大学の先生って、高校の先生より休みが多くて、わがまま;要するに贅沢な怠け者;だから Faculty Development などで絞りあげる必要がある、とでも議員も役人も思いこんでいるんでしょうか。絞れば、たしかに、優秀な先生方はすみやかに授業も論文も報告書もこなしますが、しかし長期的には疲弊して、役人(あるいは独立行政法人)むけの報告書しか書けなくなりますよ。「すみやかに報告する」だけでなく、「調べて、考えて、書く」ことこそ学問の大前提です。
 日本の学問を枯渇させるには、大学の先生を忙しくさせる(考える時間を無くさせる)のが一番! 文系も理系もおなじです。

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