2020年7月30日木曜日

Pandemic

 お変わりありませんか。パンデミックの脅威はなおこれからという勢いです。

 1918年に合衆国から始まったインフルエンザ(スペイン感冒)について歴史人口学の速水融さんの『日本を襲ったスペイン・インフルエンザ 人類とウイルスの第一次世界戦争』(藤原書店、2006)が有名です。去年3月にブダペシュトの博物館で印象的だったのは、第一次世界大戦とのかかわりで一室ぐるっと具体的にこの Spanish Flu の脅威が展示されていることでした。(ウィーンにおける)ヴェーバー、クリムト、シーレ、(パリの)アポリネールなど、‥‥そしてぼくの知らない多くの名が列挙されていて、そうだったんだ、と認識をあらたにしました。パンデミックへの先見の明というわけではなく、むしろ第一次大戦(the Great War)への問題意識の強さの証だったのでしょう。

 これらとは別に、今春になってから美術史的な観点で執筆された、この記事
https://news.artnet.com/art-world/spanish-flu-art-1836843
ムンク(罹患したときの自画像、ただし1944年まで生き延びた)、たった28歳で逝ってしまったシーレ、そして55歳にして基礎疾患の塊みたいなクリムトの、それぞれの自画像を大きくとりあげて、一見の価値があります。もしまだなら、どうぞ。
(c)artnet

 ぼくたちに近い知識人たちでいえば、辰野金吾が64歳で1919年3月の第二波で、マクス・ヴェーバーが56歳で1920年6月の第三波で急逝したという事実があり、厳粛な気持になります。それぞれ人生の盛りともいうべき時に、無念の死だったでしょう。
 とはいえ、こうした人たちと違ってずっと無名のまま生き死んだ何千万の犠牲者たち‥‥は、戦争でなくパンデミックで亡くなった「無名戦士」たちでした。現今の Covid-19 と違って、若年層も容赦なく重症化するのでした。

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