2015年9月4日金曜日

鶴島博和 『バイユーの綴織を読む』


待望の『バイユーの綴織を読む - 中世のイングランドと環海峡世界』(山川出版社)
を手にしました。
綴織(つづれおり)の写真はすべてカラーで、関係史料をていねいに訳出しつつ対照するという編集。
ぼくの『イギリス史10講』pp.35-40あたりで書いたことに比べれば、当然ながら、はるかに叙述の細部にも、研究史的にいろいろな配慮が行きとどいていて、すばらしい。モチーフは、ただ「ギヨーム公がハロルド簒奪王を追討することの正当性」だけでなく、むしろ「ハロルド王の悲劇」をうたいあげた物語なのかもしれない。鶴島さんは、ハロルドの死についても、制作過程についても、よくわかる説明を加えています。

詳細な索引もついて、332+ページで 4600円という信じられない定価! 山川出版社としても「売れる」という確信を得たわけですね。
著者が「出版企画をもちこんだのは、30年近く前のこと」という豪傑ぶりですが、「日本語で書こう」(p.331)と方向転換するまでが大変なんだな。ぼくも肩をたたかれたような気がします。

謝辞には「神経的多動性症候群」と書き付けておられますが、
こういった作品を産んだのなら、それも悪くはないじゃないですか! 
若手のうちでも、成川くん、内川くんが少しはお手伝いできたとしたら嬉しいかぎりです。

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