2010年9月26日日曜日

先行研究は?

 どういった分野でも、本当に意味ある研究は「息が長い」というか、20年、30年のスパンでは簡単にひっくりかえらなかったりする。
 昨日 Wiley-Blackwell からの Online 登載通知で知ったのですが、最新のEconomic History Review Online に、例のブローデル & スプーナによる中世末から18世紀半ばまでの全ヨーロッパの穀物価格グラフ【初出は1967年。たとえば『岩波講座 世界歴史』16巻、pp.21-26】をめぐる議論と修正が、載りました。紙媒体の EconHR そのものは未だですが、これを定期購読している図書館からなら閲覧・ダウンロードできるはずです。


 (c) Economic History Society 2010
 『岩波講座 世界歴史』16巻を書くに先だって(1997~99年初ころでした)、二宮宏之さんに最近の研究について質問したのですが、ブローデルのような大きな議論はね ‥‥ と消極的な反応。それにしても1967年から30年経ってもそのまま放っとかれているのか、それとも日本の学界が鈍感なのか、と不思議な気持でした。
 今回の Victoria Bateman 論文によると、関連する個別研究がなかったわけではなさそう。
 そこで、わが懐かしの「馬の肩から鼻先までを横からみたグラフ」が、Bateman 女史によって前は14世紀、後は1782年まで引き延ばされ、また近世についても、こんなふうに変形されてゆきます。‥‥

 でも、落ち着いて読んでみると、これは本質的な修正なのか。ポーランドなどバルト沿岸を考慮にいれないで近世ヨーロッパ経済の収斂を語ってよいのでしょうか。これでは論点先取りで、バルトなしのヨーロッパは最初から統合的市場をもっていた、(馬の身体の上方のシルエットだけをみると、ほとんどアザラシかイルカのように見える)となる。
 卒読ですが、もしや、この論文にはかなり重大な視野の限定があって、これでは結局、研究をブローデル & スプーナ、ウォーラステインよりも前に引き戻す、ただの「業績」論文なのか(?) レフェリーは何のためにいるのでしょう。
 悪貨が良貨を駆逐する、というグレシャムの法則は学問の世界では流通してほしくない。

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