2010年5月18日火曜日

日時計



 どうしてイギリス人はこんなに日時計が好きなんだろう、と前々から不思議でした。
 Dry とは(関東地方の冬のような)乾燥でなく、「雨が降っていない状態」つまり曇りのことを言い、毎日毎日、天気予報は sunny spells with scattered showers と言ってれば当たる、という国です。オクスブリッジのすべての学寮に備わっている日時計は、なんの役にたつのでしょう。

 今日、わが Clare Hall の煉瓦の家と芝生とちょっとした木や花が連なる、こぢんまりしたgarden を散策して、こんな庭がわが集合住宅にもあると最高! と思った最後に、blackbird (日本語でクロウタドリって言うんですね!) に導かれて日時計に遭遇。
 写真のとおり5時前を指していますが、いまは夏時間なので、じつは6時前。めずらしく快晴の im wunderschoenen Monat Mai, 花ひらき鳥うたう中で、小さき日時計にはこういう碑が刻んでありました。S方角の ∴ から文章が始まります。時計の反対回りに読んでください。
   Let others tell of storms and showers ・
   I'll only count your sunny hours
 ふふふ。
 日時計の真実を淡々と語りつつ、昔あるパブで見つけた
'A friend in need is a bloody nuisance'
といった正直な人間心理も、上品に伝える。How witty!

 日時計って、時を伝えるためじゃなくて、一人歩くひと、語りあう二人に、真実=心理を突きつけて局面を展開させるための碑文として、設けられていたのか。【かつては必ずのようにラテン語、今ではたいてい英語です。こちらはラテン語リテラシの問題でしょうね。】 つまり一人か二人で歩くのが好きなイギリス人には、晴れでも曇りでも、日時計の碑文が memento として必要なのでした。

2010年5月17日月曜日

Ash cloud


 Features という(定常的)写真ページも設けましたので、よろしく。

 アイスランド噴煙については、ひところの ash plume という表現から、元の ash cloud に戻っているようです。cloud は日常語、plume は専門語ということでしょうか。
 6月下旬に一時帰国するつもりで予定を組んでいますが、まさか再び、噴煙に翻弄されるの?

2010年5月12日水曜日

Cameron, new PM

今日午後、ブラウンが宮殿に参上して辞表を提出。今夕、女王がキャメロンを宮殿に呼んで組閣を要請。
今晩中に連立内閣をつくる、という算段です。
1997年の総選挙ではエキサイトしましたが、今回はどうも‥‥。
保守党がいまや本質的に English party で、スコットランド・ウェールズでは全然議席をとれないことに変わりはないので、連合王国のこれからを考えると、保守・自民連立は、どうだろう、この国を分裂させる方向に向かうかもしれない。
労働党と自民党の連立の場合は(数の問題で)SNP, WNP も連立に加わることが明らかでしたから、昨夜から今日の昼過ぎまでは、かなりの期待感がたかまっていたのですが‥‥。
それから自民党が強く要求している比例代表制への動きが(レファレンダムしだいで)具体化すると、二大政党制の制度的前提が崩れることになるのではないか。
‥‥とかいった interesting な諸問題を考える暇もなく、今はエセクス大学のペーパーに集中です。

いろいろと待っていてくださる皆さま、済みません。

2010年5月10日月曜日

総選挙の結果


開票結果はこのとおり。James Raven (LD-オレンジ色) は次点で惜しくも敗戦。
これまでは保(blue)・労(red)の下でつねに3位だったのだから、LD(自由民主党)の勢いがこの保守の地盤にも押し寄せていることになります。

どの選挙区でも2万~3万くらいの得票で楽勝しています。
連合王国の人口(赤ん坊も含めて)6000万で庶民院議員は620余なのだから、議員一人あたりの人口は10万に満たない。日本よりはるかに「代表的」な議会。総選挙のたびに人口に比例するよう再調整しているので、選挙区による「一票の重さ/軽さ」の差が問題になることはありません。
18世紀には、議員一人あたりの人口は平均すると1万人前後でしたが、ご存じのとおり、選挙区(バラ)によって人口ばかりか有権者の資格も違ってバラバラでした。

それにしても、レイヴン候補の落選により、12日(水)のエセクス大学の催しは予定どおり開催。
ペーパーはまだ半分しかできていない‥‥。
先方では こんなポスター が掲示されているらしい。ぼくではなく EPT がメインなんだな‥‥。

<このブログにPDFは登載できないようです。せっかくの図柄なきまま文字情報だけで>
【→ 追伸:Features にようやく載せることができました。】

Professor Kazuhiko Kondo (University of Tokyo)
‘The moral economy of E. P. Thompson retried in digital archives’

Wednesday 12 May 4.30 pm Room 5N.7.23
ADMISSION FREE ALL WELCOME

2010年5月7日金曜日

CUL




 ぼくがこれまで利用した図書館のうち、一番合理的で気に入っているのが Cambridge University Library.
 特定の書物や手稿史料、学位論文については Bodleian や British Library、ときに Chetham や Manchester Central Library に行くしかないのですが、落ち着いて、自由な発想でしっかり研究しようというときには CUL ではないでしょうか。なにしろ開架で、貸し出しもするし、また写真のような slip を本に挟み込んで署名することによって、任意の机で「ここはわたしのコーナー、この本はいじるな」と宣言することができる。
 この朱色のスリップ(縦 17cm)は、じつに30年前から変わってない!(左下の [19] というのは無かったかな)
 ケインブリッジを出て今はロンドン大学教授である Julian が言っていました。史料調査はあらゆる文書館、図書館に出かけて遂行するとしても、本の執筆の最終段階、校正時には CUL がなければ仕事にならない、と。ときどき(少なくとも数年に一度は)この参考室(Reading Room)に帰ってきて、高い木造の天井と窓からみえる空を眺めつつ、自分の研究の意味を再考し、人生の priority を練り直すことをしないと、知的 integrity を保てない気がする‥‥。
 東大の総合図書館団地と似て、それを大規模にしたようなもので、外からみるとほとんど長方形の敷地に8層の建物がつらなります。正面の塔は日本の国会議事堂と似た設計。戦間期の建築思想のコスモポリタニズムに思いいたります。(それにしても東大の総合図書館が、じつは「図書館団地」の4分Ⅰさえも占めていないというのは恥ずかしい事実です。教育学部も * * 研もすべて追い出して、同じ敷地に地下10階、地上10階の全館図書館・文書館・研究センターを再建すべきです。)

 そうそう、出発が10日間狂ったので、いったん荷に入れたものを再度出して仕事したりしたものだから、必携のものをいくつか日本に置いてきてしまった。『民のモラル』もその一つ。なぜか『文明の表象 英国』や『江戸とロンドン』、Workhouse issue, Town & county directories... などは、持参しなくてもこのCULに所蔵しているのですが。『民のモラル』は無い‥‥
 どうするか。5月12日まで、もうあと1週間ないとなれば、頭の中にあるものを信じて議論する以外にありません。

2010年5月5日水曜日

Ash plume



「羽毛状の噴煙灰」とでもいうのでしょうか。
じつはまだまだ問題は続くということらしい。アイルランド・スコットランドで飛行禁止。
高度20,000フィート、とは 6,000mですから、成層圏より下の現象。
遠距離の飛行機が巡航するのは10,000m ± ですから、その状態になる前後、
離陸上昇中、着陸下降中に生じうる危険ですね。
これはもう日本では忘れられたニュースでしょうか?

総選挙直前



 6日(木)が投票日。写真のような支持看板を掲げる家もあったり、なかったり。
 Gordon Brown 政権にとっては、初めて受ける総選挙の洗礼によって転ぶことがわかってる、という辛い選挙。今朝の新聞ではGuardian, Independent ともに
「Tory を勝たせないために、接戦区では LibDem に投票しよう」
というキャンペーンを打ちだし、ブラウン首相の渾身の演説でも、トーリ(というのは正確には正しくない、本当は保守=統一党、Cameron 党首)攻撃に集中して、自由民主党(Clegg 党首)にたいしてネガティヴなことはほとんど言わない。つまり連立を意識しているわけです。
 日本語の響きはとても奇妙ですが、グラッドストン・ロイドジョージの流れをくむ「自由党」と、サッチャ時代に労働党を割って出た「社民党」が合併してできた Liberal Democrats が第3党でなく、第2党になる可能性が一時期語られていました。しかし、具体的に選挙区別に数え上げてゆくと、そういう劇的なことにはならないようです。むしろ三党すべてが過半数をとれない hung parliament の可能性は大いにあるので、そうした場合にどうなるか、どうするか、が目下の政治好きを夢中にさせているわけです。
 わが James はこれまで落選することが自明の選挙区で自由党候補として立っていましたが、今回は勝つ見込みがある‥‥どうする? え、5月12日の research seminar はどうなるんでしょう。

 そもそも、この寒い日々が続くと投票率にどう影響するか‥‥。予報のとおり夕刻から雨になると‥‥。(学寮内は暖房中。ちょっと甘く見て、セーターを持ってこなかったぼくは、外へ出ると、寒風に驚きます。)
 東京の Aさん、今月はイギリスに滞在していたかったでしょうね。

2010年5月2日日曜日

May Day in Cambridge



 VS901 の翼の先端からかすかに観察できるのは、微量ながら volcanic ash cloud の一部か?

 八重桜は University Library の脇道沿いで満開です。


ようやくケインブリッジはクレアホール学寮に到着しました。
英国時間で5月1日(土)午後。
悪戦苦闘のうえ、ようやくインターネット接続に成功。最初の書き込みです。

昨30日(金)は飛行機で12時間、ヒースロウ空港の入国審査ではあいかわらず小1時間かかり、ヒースロウから曇天で寒い郊外を眺めつつケインブリッジまでコーチ787で3時間(こちらは想定外に長かった)。夜9時にケインブリッジ市に着いて、2人ともへとへと。学寮内のApartment 19 に案内されて、ゆっくり荷を解くまでもなく、風呂に入ってバタンキューで寝ました。

今朝は6時に起床。きわめて簡単な朝食。学寮受付は Porter's lodge といいますが、そのおじさんに最低限の案内をしてもらいましたが、土曜なので IT officer はいない。
(しかも、わが pigeonhole には学寮長 President から夫婦あてに、21日7:15pm、新フェロー歓迎リセプションとその後のディナーの招待状が入っていた!! なんとも、週が開けてからご挨拶に参らねば。)

したがって、まずは市内に買い物に出て食糧やバス情報など仕入れることを優先。Market Hill, Marks & Spencer, Sainsbury と Tourist Information などで生活情報を。昼食は11時半に市内で。
ケインブリッジは基本的に変わらない印象だけれど、八重桜の並木が増えたとか、ど真ん中の Lion Yard に接続して大アーケード街が出現したとか、確実に変わっている側面もあります。
帰宅してお茶を飲んでから、一人で頼りないメモをもとに(IPアドレスから始まって何度もやりなおし、ほとんど絶望的になりながらも)LAN接続に奮闘したというわけです。

爽快なケインブリッジの5月。満開の花々と鳥のさえずりが気持いい。大移動はたいへんでしたが、今はもう元気です。皆さまもお元気で。

そうそう、Market Hill (すなわち市庁舎前) では総選挙に向けて UK Independent Party, Cambridge Socialists などが運動していました。

2010年4月30日金曜日

Be ambitious!

というのは、クラーク博士の故郷の方言では、せいぜい Fare you well!
すなわち「達者でな!」という程度の意味だったとか。
19世紀、まさしく Victorian America から来た William Smith Clark だからジェンダーについて鈍感だった、という大問題はありますね。したがってぼくは、ようやく今朝、
Girls and boys, be ambitious!
という言葉とともに、待ちかねた VS901 機に乗ります。

ぼく自身も ambitious にやってゆきますので、よろしく。

2010年4月25日日曜日

still stranded

 Kさんからは
「‥‥無事にイギリスに着かれたでしょうか。大変だったですね。」
というメールをいただきましたが、‥‥じつは、まだ日本にいます。:>_<;

 以下、BBCニュースを引用しつつ、客観情勢をご説明します。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/business/8641428.stm
UK airlines are seeking volunteers to give up seats so the thousands of people still stranded after the volcanic ash disruption can get home.

British Airways (BA) has asked customers who are booked on long-haul flights up to 2 May to make way for those who were stranded.
And Virgin Atlantic says many such volunteers have contacted the airline.
But many airlines' long-haul passengers still face weeks of delays, with re-booked returns stretching into May.
← 日本人の場合は、これに加えて「ゴールデンウィーク」繁忙期に入るので、大変。

British airspace reopened on Tuesday following almost a week of grounded flights. Although more planes than usual are flying, tens of thousands of Britons are still stuck overseas.
The company says those volunteers can then re-book on later flights at no extra cost, but the re-arranged flight has to be at least seven days after the original departure date.

STRANDED PASSENGERS
Egypt: 10,000
Florida: 9,000
India: 8,000
South Africa: 5,000
California: 4,000
Thailand: 2,500
Malaysia: 2,000
Other significant regions: Caribbean ; Dubai; Maldives
← どうしてこの一覧に Japan は無いの?
Source: Industry figures compiled by travel journalist Simon Calder

Some passengers have complained that BA appeared to be selling empty seats on earlier flights to new passengers.
BA said its computer system forced empty seats to be made available for sale, but the tickets had been significantly overpriced* so they would remain unsold and stranded customers were not being asked to pay anything extra when their flight was re-booked.
Virgin Atlantic is also taking up offers from volunteers who can fly home at a later date.
← * ANAもまたエコノミーで35日以上往復便で40万円ほどの値を付けています。
 いつの間にか(2009年秋でしょうか)、JALもBAも1日2便のシステムをやめていたんですね。成田=ヒースロウ間の定期直行便が4社合わせて1日6便だったのが4便になり、消化できる乗客容量が4/6になっていたところにこの事態で、対応力(耐性)が減っている。臨時便を運行する余力もないからこその、苦肉の対策と受けとめておきましょう。
 ぼくとしては、ケインブリッジにおける諸々はさておき、5月12日、エセクス大学でのセミナー報告が最初の喫緊の要事。その準備もできてないので、落ち着かないことこの上ありません。
 「在日」だからといって、いろんなこと申し付けないでね!

Virgin boss Sir Richard Branson said the blanket ban on flights had been an "overreaction", insisting that there had been "no danger at all" to flying.
He said that Virgin engineers had advised that there had been plenty of flight corridors which were "quite safe" and called for compensation for the air industry after the ban cost his airline £50m in six days.

On Thursday, Transport Secretary Lord Adonis told the BBC the flight ban had perhaps been "too cautious" but that regulators had needed time to test the impact of the ash on aircrafts.

2010年4月22日木曜日

Heathrow 再開


(C) BBC
ヒースロウが再開したからといって、すぐに飛び立てるわけではありません。
ぼくの飛行機に関連する情報は今晩のところ、下記のごとし。

22 April VS901 Dept LT 11:30 (Narita) Arrive LT15:45 (London Heathrow)

This flight has limited seats (308) and will be prioritised for the following passengers:-
Priority will be given as follows (in no particular order):-

●Passengers booked on the VS901 on the 22th April.
●Medical Emergencies
●Unaccompanied Minors
●Passengers with special needs indicated in their bookings

Please NOTE:
Once all the above passengers are checked in, we will accept Stand-By passengers who were previously booked on the VS901 on the 15th-17th April. ( We cannot guarantee that we will be able to carry any of these passengers today.)
If you wish to Stand-By, please come to Virgin Atlantic Check-in Counter at Narita.

PLEASE ALSO NOTE - All passengers form the other cancelled VS901 flights (18th-21th April) will not be accepted at Narita Airport at this time and should wait to be contacted by Virgin Atlantic via a customer service call/SMS or the Japanese Website (www.virginatlantic.co.jp - not the global site www.virgin-atlantic.com - information will be contained under the 'What's New' section).
Virgin Atlantic will endeavour to contact all passengers booked on it's daily flights in advance, as the scheduled services resumes. Virgin Atlantic will prioritise passengers booked on future VS901 services based upon their original flight date - starting with those delayed the longest, first.
Again, we strongly urge passengers not to travel to the airport over the next few days unless they have a confirmed booking on a flight, which is confirmed to operate, or have been invited to Stand-By.

英語表現については、いろいろと学べておもしろいのですが、
もはや若くないので、空港にて空席待ちスタンバイするなんて、とても。
∴まだ私メはいつ搭乗できるのか分からん、という状態です。

2010年4月20日火曜日

AJC委員会



18日にはAJC2009委員会として最後の会合をもちました。

朝治さんが急ぎ帰途につかれたのは、残念。
木畑さん、草光さんの功をたたえて慰労し、楽しく会食したあとに一斉写真を撮ったのですが、なんだか厳粛な雰囲気になってしまいました。

秋からは、もっと華やぐ、かな?

2010年4月17日土曜日

春浅し


 春の雪には驚きました。
 一夜明けてまだ新緑も頼りなげな本郷・大学病院前から見えるスカイツリーです。349メートルとか。

 自分のことはさておいて、アイスランドの火山の噴灰についても心配しています。
 ヒースロウ空港、等々の全面閉鎖、どうなるでしょう。世界史における噴火・降灰・降ガスのもつ意味については「17世紀の危機」論争以来、指摘されてきました。日本史では富士山の噴火が関東平野に及ぼした影響‥‥。
 短期的には(偏西風の効果で)その火山より東側に被害が及ぶのですが、成層圏に入ってしまうと、長期的には、被害はぐるっと地球をめぐって拡大し拡散するわけです。

2010年4月10日土曜日

花と散る



「年年歳歳花相似
 歳歳年年人不同
 ‥‥(この後を忘れちゃいけない)‥‥
 まさに憐れむべし半死の白頭翁」

また同時に想起するのは、
「願はくは花の下にて春死なん、その如月の望月のころ」

古典は、説明なしで、人の心を動かします。

わが叔父(父の弟)は、シベリア抑留のあと、帰国して
松山で彼を迎えた親類全員でとった記念写真があります(ぼくはまだ赤子でした)。
勤勉に働き、老いてもなお美しい妻と二人の子を残して、この6日に亡くなりました。
享年86歳。

2010年3月28日日曜日

アポロンさんに答えて、知の戦略

 アポロン(太陽神=美青年)さん、日曜のコメントありがとう。
 オンライン学術情報に限られることなく、知の戦略という問題だと考え、独立のスレッドとします。

 取り組み、支援‥‥について、それぞれの場でできることをするしかないと思います。とはいえ、ルートのないまま、個人で財務省や文科省や国家戦略担当相に意見書を送っても、また『朝日新聞』に投書してみても、ほとんど無駄でしょう。【万一にも担当課長や、政権ブレーンに知り合いがいたら、是非とも個人的信頼関係を築いて、実態を訴えてほしいですが。∴科学官さんは、重大なお仕事、頑張ってください!】
 ただちに考えられるのは、
1) その筋、すなわち学士院や学術会議、そして史学会や歴史学研究会などが、熟慮した決議と議論を根気よく提起すること。

2) そして、世論作りではないでしょうか。NIIも、政治家も、世論のバックなしには何もできません。

 1, 2 のうち、とくに 2 については若者・院生にもできることは一杯あると思います。
 1, 2 いずれについても「学問・人文科学・古典教育は、大切だ。尊重されたい‥‥」なんていう星菫派の論理ではなく、もっと今日の(非英語国)ドイツ連邦や大韓民国における具体例を挙げつつ、日本の知の戦略を積極的に議論する必要があるでしょう。だからといって、そのさいにぼくは単純な「グローバル主義」や「ハードアカデミズム」論は採りませんが。【星菫派とは加藤周一さんの語ですが、『文明の表象 英国』も見てください。】

 そう、簡単で効果的な方法が、もう一つありました。
3) 何より「世界一でなくちゃいけないの?」「無駄をなくそう」って議員は落選させることです。ケインズ経済学でも新古典派経済学でも、産業連関を考えない政権が続くなら、国は滅びます。

 じつはぼくの新年度、ケインブリッジでのテーマは、マンドヴィルの「私悪は公益」論の積極的な受けとめ and/or E・P・トムスンのモラル・エコノミ論の再審、おそらくは乗り越えです。18世紀前半のイギリスで、公共性と moral philosophy がめざましく展開したのは、ご存じのとおり。ハーバマスの市民的公共性は、まさしく私人が欲得づくで担ったものですし、ブルーアは『スキャンダルと公共圏』で、問題のありかをカラフルに描きました。

 今の日本国の第1の悲劇は、いかなる経済学的基盤も理解ももたぬ populist, amateur 政権が総選挙の結果として造られてしまったことでしょう。第2の悲劇は、学問の世界の基盤や水準もまた、怪しげになってきていることではないでしょうか。

 近刊の『イギリス史研究入門』も『イギリス史10講』も、広くアピールしたい著作です。

2010年3月26日金曜日

The Making of the Modern World

懸案の電子アーカイヴ
"The Making of the Modern World"
(元来は Goldsmith &Kress Libraries のディジタル版です)
この購入がようやく東大の図書行政商議会でも承認されました。

朗報です。
経理上の問題もクリアできて、良かった良かった。
グーテンベルク(Caxton)以降、1850年以前を研究している方々、みんなへの恩恵。
おおいに活用しましょう。

2010年3月7日日曜日

Carmen Blacker



 横山俊夫さんから伺うまで知りませんでした。昨年夏に亡くなったのですね。

 因縁は、すこし長くなりますが、1980-1年にニュージーランドの Duneden からケインブリッジのエルトン先生(Clare College)の所にサバティカルで来ていた Alistar Fox というトマス=モア学者がいて、7歳のお嬢さんが小学校でぼくの娘と同級という縁で、行き来が始まりました。澤田昭夫先生を当然のようにご存じでした。
 その Alistarに招待されて、Clare Hall のディナーに行き、そこでカルメンのように座の中心にいたのが、美しく赤いドレスを召した Carmen でした。福沢諭吉も、恐山の巫女も、南方熊楠も論じることのできる日本学者。

 それから23年もたって、オクスフォードは Somerville のランチに呼ばれていったとき、Colin Lucas 総長とともに、小柄なお婆ちゃんがいるな、と思ったら、なんとジョアナのお友だちでした、Carmen Blacker!

 この週はオクスフォードに滞在なさっていたのです。名のっていただかなかったら、あのカルメンとは分からなかった! 好々爺という語はあるが、「好々婆」という表現はあるのでしょうか。
 SCR で「あしたはサマヴィルのセミナーで話をする」とおっしゃるので、それではと妻も誘ってサマヴィルに行ったのですが、‥‥転倒して歩けなくなった、とのことでセミナーは cancelled.

 これが最後になりました。ときに想い出して、どうなさっているかと心配していましたが、2009年に亡くなって、秋にお別れの会をしたのでした。
 人生で、ときをへだてて、ただ2日 お話をしただけの方ですが‥‥ご冥福をお祈りします。
<写真は(c)南方熊楠顕彰館>

2010年3月6日土曜日

高橋 進 さん

 昨日の夕刊を読んでいなかったので(その暇さえなく)、今日になって知りました。亡くなるとは、驚き愕然とします。ぼくの1歳下。去年の 並木さん につづいて‥‥。
 法学部の政治史教授、東大の博物館長、COEリーダーといった重責もありましたが、個人的には1990年代から15年ほど 東京書籍の企画でずっとご一緒しましたので、そちらの場面のことを想い出します。

 近世ヨーロッパの「人口動態イモムシ」あるいは「人口稠密回廊」【『歴史と地理』no.554 (2002)】に関連して、もうずいぶん前ですが、全然別の現代政治学の観点から「マンチェスタ・ライン枢軸」(ライン・マンチェスタ枢軸)というコンセプトで議論なさっているのを知って、おぉ、と思ったものでした。
近世史の人口動態が、はたして20世紀の西欧型社会民主主義の場を説明しうるのかどうか、いまだ確信はありませんが、しかし、もっと調べるべき価値のある宿題をいただいたと考えています。

 2月の下旬、つまり先週でしたが、本郷の銀杏並木でお姿を見かけました。お疲れだな、と思って(こちらも元気がでないし)、声をかけそびれました。
 ‥‥ご冥福をお祈りします。

2010年2月14日日曜日

『イギリス史研究入門』(山川出版社)



 『イギリス史研究入門』の編集作業は、いまタケナワ。山川出版社、2010年5月刊です。外見は、先を越されてしまった『アメリカ史研究入門』に似ていますが。
 内容的には、第I部と第II部にわけて、第I部第1章が総説。以下は時代とテーマによって11の章にわけ、それぞれ専門家が執筆しています。11名の共著です。
 第II部は、文献・リソースを列挙し、参照すべき文献、そして鉱脈を探りあてるための手がかりを示します。
 内容には自信がありますが、技術的にはウェブサイトや digital archives をどう表記するか、など、煩雑でなく簡にして要をえた表現(スマートな本)をもとめて、もう初校というのに、まだ改良のための模索は続きます。
 乞うご期待。
 なお、従来から用いていた掲示板coocan
   → http://kondo.board.coocan.jp/
については、掲示板という性格を生かして『イギリス史研究入門』のための Q&A サイトとして再生利用しようと思います。どうぞ、よろしく!
【2月7日(日)にしたためたブログですが、14日に悪意のコメントがありました。いったん削除し対策をほどこしたうえ、あらためて登載します。】

2010年2月6日土曜日

『みすず』読書アンケート


 『みすず』1・2月合併号(no. 579)到来。待ってました! 恒例の前年の読書アンケート。 去年の2月(http://kondo.board.coocan.jp/)と同じことを書きますが‥‥

 書く側としては、師走の多事多端のときに、それなりに意味のあることを書き記すために、慌ただしいけれど、それなりの勢いのある文となる。
 読む側としては、とくに大学関係者だと2月は最高に忙しいが、しかし旧知あるいは未知の物書きがなにをどう書いてるのか、楽しみではある。一種、寒中見舞いを交わすようなところがあります。【ちょうど西川純子さんから『歴史学の醍醐味』(日本経済評論社)をいただいたので、今日、お礼状にこの『みすず』の記事を添えて送りました。】
 みすず書房に感謝。 各人が1年間に読んだ物についてしたためる(旧刊書もよし)、という編集方針は合理的です。
 夏の『週刊読書人』〈上半期の収穫〉とともに、ぼくの定点観測的な意味をもつ短評として、この年中行事を位置づけています。

 ちなみに、今回ぼくが取りあげたのは、
 1 勝田俊輔『真夜中の立法者 キャプテン・ロック』(山川出版社、2009)
 2 高橋慎一朗・千葉敏之編『中世の都市』(東京大学出版会、2009)
 3 西川正雄編『ドイツ史研究入門』(東京大学出版会、1984)
 4 Craig Horner, ed., The diary of Edmund Harrold, wigmaker of Manchester 1712-15(Ashgate, 2008)
 5 Charles Beddington, Canaletto in England (Yale U. P., 2006)

 『みすず』の今月号は → www.msz.co.jp/book/magazine/

 去年は、
 1. 金澤周作『チャリティとイギリス近代』
 2.『丸山真男書簡集』全5巻
 3. 加藤周一『日本文学史序説』上下
 4. 西川正雄『社会主義インターナショナルの群像 1914-1923』
 5. Douglas Farnie, The English cotton industry and the world market 1815-1896
 でした。